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ホームランラグーンと「Marines 2.0」

どうも、やまけん(Twitter: @yam_ak_en)です。もう旬ではないかもしれませんが日本シリーズはパ・リーグ2位から勝ち上がったソフトバンクが優勝しましたね。おめでとうございます。
今年の日本シリーズは(興味はもちろんありましたが忙しくて)しっかりと見ることはできませんでしたが、両軍ともにホームランでの得点が多かったように感じます。

野球においてホームランという打撃結果は最も魅力的です。単純にカッコイイ、観ていて盛り上がるというのはもちろんですがそれだけで最低1点以上は苦せずして(スタンドに入れるのが苦ではありますが)得ることができるので、野球というスポーツが「相手より1点でも多く取った方が勝ち」というルールである以上その価値は必然的に高くなるはずです。
ソフトバンクは今季、チーム本塁打数12球団トップの202本、また広島もセ・リーグで2位のチーム本塁打175本を放っております(1位はDeNAの181本)。またクライマックスシリーズで惜しくもソフトバンクに敗れたものの、今季パ・リーグでシーズン優勝した西武もチームで196本のホームラン(リーグ2位)を放ちました。破壊力抜群で一度目が覚めたら止まらずに平気で大量の得点を稼ぐ打線は「山賊打線」と呼ばれ、マリーンズファンである私としては同じリーグで対戦するのが恐怖でした。「今日も酒居打たれそうだな〜」なんて思っていると、かなりの確率で打たれていたような気がします。

そんなマリーンズはというと、両リーグ最少の78本塁打。プロ5年目、29歳の井上晴哉がチーム本塁打の1/3弱を占める24本塁打を放ちましたが、もし彼の成長がなければ…と思うと、ゾッとします。
マリーンズのチーム本塁打の少なさの理由のひとつに、本拠地特性があげられると思います。ご存知の方も多いと思いますが、千葉・幕張の海沿いに建てられた本拠地「ZOZOマリンスタジアム」は両翼99.5メートル・センター122メートルと広大である上に、海からの強風が吹くことで度々ホームラン性の打球が外野フライに変わったりします。他にも左中間・右中間が膨らんでおりフェンスも高いなど、「日本一ホームランの出にくい野球場」と言っても過言ではないと思います。
ご存知の方も多いかと思いますが、そんなZOZOマリンスタジアムに来季大きな変化があります。外野のウォーニングゾーンに「ホームランラグーン」なるものが新設されることになりました。従来のフェンスから数メートルせり出す、言ってしまえばヤフオク!ドームの「ホームランテラス」に近いものですね。

(画像はいずれも球団ホームページより)
3枚目の画像を見る限り本塁から両翼・センターまでの距離は変わらなさそうですが右中間・左中間はかなり前に来そうな感じですね。

ちなみに、こちらのサイトで現在のヤフオクドームと2014年以前(HRテラス導入前)のヤフオクドームの比較をしてみたところ、やはりこちらも両翼とセンターの距離は変わっていなかったものの左右中間は5.9メートルも前にせり出したようです。画像の水色線が旧ヤフオクドームのサイズです。

こちらは、旧ヤフオクドームとZOZOマリンを比較してみた画像です。ちなみにこちらのサイトでZOZOマリンの左右中間の距離を確認してみたところ、この旧ヤフオクドームより0.5m長い116.3mとのことでした。この広さに加えて時には風速10mを超える強風ではスタンドインさせようという気すら失せてしまいそうです。

「キューバの至宝」ですら大台に乗せられなかった魔境・マリン

2014年シーズン途中に加入し、2016年までマリーンズに在籍していたアルフレド・デスパイネ。キューバ代表の常連であり、来日当初は「あの『キューバの至宝』が日本球界へ!」と騒がれました。
デスパイネは来日してからの2年半で主に4番打者として、確かに貢献してくれました。今でもマリーンズファンとして感謝しています。しかしながら、在籍した3シーズンで一度も30本塁打を越えなかったことには多かれ少なかれ驚きとショックを感じたファンも多いのではないでしょうか?少なくとも私はその1人です。
マリーンズとの契約が切れた2016年オフ、デスパイネは新たにソフトバンクと契約を結びました。ソフトバンクでは初年度(昨年)から35本塁打を放ち本塁打王を獲得、今季も大台一歩手前の29本塁打で、故障による離脱がなければ30本塁打にはほぼ確実に到達していたことでしょう。

デスパイネが本塁打数を伸ばした理由は数多く挙げられると思います。例えばマリーンズ時代と違い前後に柳田・内川・松田ら強打者が控えており、マリーンズ時代ほどマークが徹底できなかったとか、ホークスの球界トップクラスの投手陣を相手にせず、データや特徴を知っているマリーンズの投手陣との対戦が新たに増えたからであるとか、ほかにも挙げられると思います。しかしながら、最も大きいのはやはり「本拠地が変わったから」ではないでしょうか?私はそう思います。
2018年現在、NPBでは各チームシーズン143試合が組まれています。ご存知の通り、そのうちの半分(71試合ないし72試合)は自球団の主催試合となり、(球団によっては地方開催等もあるものの)本拠地・ホーム球場での試合となります。簡単に言えば、シーズンの半分は本拠地球場での試合となるわけです。一方でビジター球場を使用する回数はというと、同一リーグ内では各球団12,3試合、交流戦ではたったの3試合です(隔年でホームとビジターを入れ替えるため、その年ビジター球場で試合をしない相手が3チームあります)。デスパイネからすると、シーズン中ヤフオクドームで試合をする回数が10試合程度だったのが60試合近く増え、反対にマリンで試合をする回数が60試合近く減ったわけです。当然、それだけ「魔境」マリンで試合をする回数が減ってテラスのあるヤフオクドームでの試合が増えればホームランも必然的に増えますよね。

長打力不足以前の「ホームラン意識」の欠如

さて、ここまでデスパイネを例にあげてZOZOマリンスタジアムが魔境であると書いてきましたが、果たしてマリーンズのチーム本塁打数が少ないのは広いマリンでスタンドインできるパワー・長打力が不足しているからという理由だけでしょうか?

私はそうではないと思います。
最終的には長打力不足で片付けられてしまうかもしれませんが、それよりも「ホームラン意識」の欠如が問題ではないか?と考えます。

広くて強風の吹くマリンでスタンドインするには他の比較的狭い球場や風の影響を受けないドーム球場でのそれと違いそれ相応のパワー・スイングが必要になってきます。しかしながら、
思い切り振ってもスタンドインする確率が低く凡退する確率だけが高くなるのであれば、単打でも塁に出たほうがいいと考える選手が多いはずです。この考え方そのものを否定するつもりはありませんが、今のZOZOマリンを本拠地にして戦っていると「ホームランを打つことを放棄する」選手が出てくるのではないか?というより、もう既にそのような選手がチームにいるのではないか?と考えてしまうのです。

スカウティングも同様で、「長距離砲を獲ってもどうせマリンでシーズン30発は打てないだろう」と、ハナから長打力というポテンシャルを持った選手の獲得を諦めているのでは?と、これまでのドラフトや補強の動きを見て感じる場面がありました。

清宮幸太郎・安田尚憲の1位指名

そうした球団の方針にハッキリとした変化が見られたのが昨年のドラフトです。昨年のドラフトは高校通算111本塁打怪物・清宮幸太郎(早稲田実業)を筆頭に、清宮と並べられて騒がれることの多かった西の怪物・安田尚憲(履正社)、甲子園で1大会最多記録を更新する6本塁打を放った中村奨成(広陵)、九州ナンバーワンスラッガー・村上宗隆(九州学院)など空前の高校生スラッガー豊作年でした。
そんな中で井口監督が就任したマリーンズは1位で清宮を指名、7球団競合の末当たりくじを引くことはできませんでしたが外れ1位で安田を指名しました。3球団競合となりましたが山室社長が当たりくじを引き、交渉権獲得に成功しました。
これまでも野手の1位指名はありましたが、中村奨吾(14年)や平沢大河(15年)など、いわゆる「三拍子タイプ」に当てはまる選手でした(当然彼らにもスラッガー要素はありましたが)。安田や清宮のようなれっきとしたスラッガータイプで1位指名となると、誰まで遡るのだろう‥?といった感じです。彼らを指名した時、私は「あぁ、マリーンズも長距離砲の獲得を諦めていなかったんだな」とようやく思うことができました。
そして今年のドラフトでも藤原恭大・山口航輝というスラッガー候補2名を指名。藤原は将来的には脚という武器もあるため将来的には上位打線を任されるかもしれませんが大阪桐蔭とU-18日本代表で4番を任されていましたし、山口は2年次からチームの4番を務めていた右の大砲候補です。ラグーンが設置されることを見越してなのでしょうか?スカウティングにも徐々に方針転換が見えつつあります。

意識改革で生まれ変わる「Marines 2.0」への期待

それでもラグーンが設置されてすぐに本塁打が劇的に増えるという効果は、個人的にはそこまで期待していません。それよりも私が期待したいのは、ラグーン設置による「意識改革」です。
従来のマリンで「これではホームランは打てない…」とホームランを諦めていた打者が、「これなら俺でもホームランをある程度打てるかもしれない」という意識に変わり、練習内容や試合でのアプローチを変えるのでは?そして、その意識が選手全員に浸透し、適応したときにラグーン設置の効果が現れるのではないか?と考えております。ホームランを打つことに関して他球団に遅れをとっているマリーンズですが、是非来季からのラグーン導入を機に他球団に追いつき、そして追い越せる打撃陣になっていただきたいです。

マリーンズファンでここまで読んでくださっている皆さん
短期的に見たら本塁打数より被本塁打数の方が増えそうに感じているのは私も同じです。新たなことに取り組む、新たなことを取り入れる際には不安はつきものです。ですが、ここはスカウティングの方針転換と選手個々人の意識改革に期待し、長い目で見守ってみませんか?私は今後生まれ変わるであろう新生マリーンズ、「Marines 2.0」に期待してみたいと思います。

ラグーンの影響を受けるのは打者だけでなく投手もなので、投手の視点から見たnote記事も後日書いてみようと思います。

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