千葉ロッテマリーンズ ドラフト指名を振り返る ①指名選手編
どうも、やまけんです。
去る10月26日、プロ野球ドラフト会議が行われました。千葉ロッテマリーンズは支配下5選手、育成5選手の計10選手を指名し、来季からチームに加わることになります。
自分のnoteでも何本かに分けてドラフトの展望をアップしていましたが、実際の指名はどうだったのか?をじっくりと振り返りたいと思います。第1弾として、今回はマリーンズが指名した選手を紹介したいと思います。
※今回、指名選手のプロフィールやスカウトコメントなどは球団公式HPより引用します。
1位 上田希由翔(内野手・明治大)
基本情報
選手としての特徴
大学通算打率.312、BB/K=0.95を記録したコンタクト能力と選球眼が持ち味の好打者タイプです。下級生時代から4番を任されリーグ戦では通算10本塁打を放っていますが、打球に角度のある「アーチスト系」のタイプではなく、ライナーで広角に打ち分けるようなイメージに近い選手です。リーグ戦通算74打点は歴代4位の記録です。
こうした記録を打ち立てた下地として、大学4年間を通して大きな故障がなく身体が丈夫な点も魅力的です。
プロの世界で毎年タイトル争いに絡むような凄みのある打者ではないかもしれませんが、打線の中で確実に仕事ができる、マリーンズで例えると左右こそ違うものの中村奨吾選手のような打者というとイメージしやすいのではないかと思います。
守備では下級生時には一塁/外野を任され、3年時から本格的に三塁を守るようになりました。また、大学の1学年先輩である村松開人選手(中日)が故障で離脱していた際には二塁を守っていた時期もあります。
一塁に関しては問題なし、外野に関しても両翼であれば任せられるレベルかと思います。三塁守備では送球が不安定な側面がありますが、絶望的に下手というレベルではありません。
二塁は現状レギュラーとして期待はできませんが、ひとつのオプションとして用意できると起用法にも幅が生まれるため、個人的には切り捨てないでほしいと思います。
4年時には主将としてチームを牽引し、大学野球引退に際して書いたブログには、監督やコーチ、家族、更に学生コーチやマネージャーも含む同級生から下級生までの全部員一人ひとりにメッセージを送るなど人間性の面でも優れており、将来的には球団の枠に収まらず、球界のリーダーになれる素養も持ち合わせた選手ではないかと期待しています。
期待する役割・将来像
大卒ルーキーということもあり二軍でみっちり鍛えるというタイプではなく、来年から一軍を主戦場として一線級の投手のボールを経験し、まずはNPBの水準に適応するきっかけを掴んでもらいたいです。その上で、世代が近くポジションの被る安田、山口、藤原選手らに刺激を与える活躍をしてくれれば1年目の理想と考えます。
上にも書きましたが、将来的には中村選手のような「出塁もクラッチもできる万能型打者」として打線の欠かせないピースとしての活躍に期待したい選手です。
2位 大谷輝龍(右投手・富山GRNサンダーバーズ)
基本情報
選手としての特徴
小松大谷高校卒業後、JFE東日本、伏木海陸運送と社会人野球チームを渡り歩き、今季加入した独立・富山で潜在能力が一気に爆発した投手。そのため年齢的には現在大卒1年目、マリーンズでは藤原選手や昨年ドラフト1位の菊地投手らと同じ世代にあたります。
一番の武器はストレート。最速は159キロ、常時150キロ台中盤を計測し、そこに140キロ台のフォークを交えて奪三振を量産します。社会人時代に苦しんだ制球難もシーズン通算BB/9=1.35と大きく改善させました。
ターム1からターム3までの3ターム制で運営されている日本海リーグ(NLB)において、ターム1では登板が無かったもののターム2でデビュー。そこから驚異的な成長速度で台頭し、最終のターム3では5試合に登板し被安打2、奪三振9、四球1、自責点0と圧倒的な成績を残しました。
登板数と投球回数からわかるように、タイプとしてはリリーフタイプの投手です。投げているボールからすれば1年目から一軍のセットアッパー、クローザーを任されてもおかしくありません。一方でこの1年間での成長曲線を鑑みると、まだまだポテンシャルの底を見せておらず、成長していくのではないか?という期待もあります。
期待する役割・将来像
上述のように高スペックながらまだ伸びしろを残しており、1年目はチームに、そしてNPBの環境に適応し、一軍のリリーフとして30試合程度登板できれば御の字と考えます。自分の現在のスペックで何が一軍レベルで通用し、どの点が課題なのかを把握し、2年目以降に繋げられる形が理想的です。
最終的には、自慢の速球を活かしながら、変化球の精度などを磨いたうえで、4~5年後にはセットアッパーやクローザーの座に就いてほしい投手です。
3位 木村優人(右投手・霞ヶ浦高)
基本情報
選手としての特徴
185cmの長身からバランスの良いフォームで投げ込み、現時点で最速150キロを計測する本格派右腕です。カットボールやスプリットなどの変化球の精度も高く、コントロールも安定しています。
投手育成に定評のある霞ヶ浦高校で1年時からメンバー入りし、その素質の高さは同校の高橋祐二監督も「今まで見た投手の中で一番」と絶賛するほど。ドラフト前には1位指名もあるのではないか?と見るスカウトもいましたが、それだけ素質の高い投手をこの順位で指名できたことは非常に大きかったです。
今春の茨城県大会で一気に頭角を現し、夏の大会では決勝で土浦日大に敗れたものの、その後行われたU-18ワールドカップの日本代表にも選出されました。ワールドカップでは自慢のカットボールを武器に3試合6イニングで11奪三振を奪うなど、少ない登板機会ながらも存在感を存分に発揮しました。
投球を見ると高校生離れした完成度の高さを感じる一方で、体格的にはまだまだ細身で、未完成な状態です。裏を返せばこの点は伸びしろでもあり、順調に身体作りが進んでいけば今以上に凄みのあるボールを投げるようになるかもしれません。今年は多くの大学生投手が1位、2位で指名されましたが、木村投手を順調に育成することができれば、数年後に彼らと同等かそれ以上のリターンを得られる投手になっていてもおかしくありません。
期待する役割・将来像
上にも書いた通り、まずは身体作りから入っていくと思います。1年目はイースタンリーグの後半戦頃から実戦登板できればよいと思いますが、無理して焦らせる必要はありません。逆に、計画より順調に成長しているのであれば早期の二軍戦デビューもあり得るでしょう。
球団側も先発タイプの投手として指名しているはずなので、3年目頃までに一軍デビューを果たし、4~5年目には一軍の先発ローテーションとして投げることができれば理想と考えます。
4位 早坂響(右投手・幕張総合高)
基本情報
選手としての特徴
昨年の秋まで捕手を務めており、投手の枚数が少ないチーム事情と、捕手で見せていた強肩を買われて投手に転向したという異色の存在。プロの選手の指導も行うDIMENSIONING・北川雄介トレーナーに師事し、現在では最速151キロを計測するまでに成長を遂げました。
最速151キロ、常時140キロ台中盤を計測する出力の高さや、130キロを超える切れ味鋭いスライダーなど現時点でもハイスペックな投手ですが、何より投手歴1年未満でここまで大きな成長を遂げた「伸びしろの大きさ」が魅力です。
夏の時点ではストレートと変化の違う複数のスライダーが主な持ち球でしたが、引退後に新たにカーブやフォークを習得するなど、向上心とセンスの両面で期待の持てる選手です。
実際に、春から夏、夏(引退後)から秋(ドラフト前)と順調に成長を遂げている点を高く評価されていたスカウトの方も多く、これが支配下の4位指名という評価に繋がったとも見て取れます。
入団後すぐは無理をさせず身体作りから入ると思いますが、夏の千葉県大会では4試合34回を1人で投げ切るなど体力的にもかなりタフな選手。投手歴が浅いため、フィールディングやクイック・牽制なども基礎から鍛える必要があるかもしれませんが、この部分で大きな問題を見せなければ同期入団の木村投手より実戦(二軍戦)デビューは早くなるかもしれません。
期待する役割・将来像
木村投手同様、1年目は無理をせず基礎体力の向上から取組み、イースタンリーグ後半戦頃から実戦登板できればよいと考えます。一方で、この1年間凄まじい成長速度でステップアップしてきたため、状況次第では早期実戦投入や最終盤での一軍デビューという可能性もあるかしれません。
夏の県大会の成績を見ると与四球率が高く、どちらかと言うと短いイニングをパワーピッチで封じるリリーフとしての適性が高いように感じますが、この点にも改善傾向が見えてくれば先発投手として活躍するビジョンも容易に想像できます。このあたりの適性も最初から決めつけず、実戦で投げさせながら判断していくべきではないかと思います。
5位 寺地隆成(捕手・明徳義塾高)
基本情報
選手としての特徴
高校日本代表にも選出された左打ちの打撃型捕手。下級生時代はサードを守り、昨秋の新チーム始動時にキャッチャーに転向、そして日本大法ではファーストを務めるなど高校では主に3つのポジションを経験したマルチプレイヤーです。
一番の魅力は打撃力の高さで、高校日本代表として臨んだ大学日本代表との壮行試合では1打席目から下村海翔投手(青山学院大、阪神1位)の151キロ直球を叩いてヒットを放ちました。U-18ワールドカップ本大会でも1番ファーストとしてチームを牽引し、20打席以上立った日本代表選手の中で2番目に高いOPS.805を記録するなど、木製バットへの対応力という点でも期待が持てる選手です。
本人が「アベレージヒッタータイプ」と言うようにホームランを量産するタイプの選手ではありませんが、タイプとしては1位の上田選手同様にコンタクトの上手い中距離ヒッターという感じに近いです。
打撃に比べると、捕手としての守備面は発展途上という印象です。昨年の秋に捕手にコンバートされるまで捕手の経験がほとんどなかったということから、キャッチング、スローイング、ブロッキングの基礎から学ぶことになるかと思います。将来的には経験のある一塁や三塁、また足も遅くないため外野などの選択肢もあるかと思いますが、「打撃型捕手」はマリーンズのみならず球界全体を見渡しても希少性の高い選手なので、まずは捕手としてのスキル向上に努めていただきたいです。
期待する役割・将来像
1年目は体力強化、捕手としての守備力向上を念頭に置きながら、他ポジションやDHでの出場も含めて二軍戦で250打席~300打席ほど経験できれば理想と考えます(参考:2023年金田優太254打席、勝又琉偉365打席)。
捕手として覚えることは多いかもしれませんが、打撃が魅力の選手なので、早いうちにプロの投手のボールをできるだけ多く見てほしいと思います。
2歳上に松川選手がいるため競争が激しくなるかもしれませんが、将来像としてはやはり「打撃型捕手」としてプラスを生める形が理想と考えます。その上で松川選手の出場時に他のポジションで出場したり、逆に捕手として出場し松川選手に休養を与えるなど、かつてのマリーンズで例えるなら「里崎・橋本体制」のような2人捕手制を敷けるとチームとして強くなっていくのではないかと期待が膨らみます。
育成1位 武内涼太(右投手・星稜高)
基本情報
選手としての特徴
学時代から素質の高さが評判で、星稜高入学時には「入学時の完成度は奥川恭伸(ヤクルト)より上」と言われたほど。ストレートの最速は149キロを計測しますが、3年夏には不調により制球を大きく乱し、不完全燃焼で終えました。
とはいえ、元々のポテンシャルを考えれば育成まで残る高校生投手ではありません。本来のボールを取り戻し、そこから成長することができれば同期入団となる木村投手、早坂投手らを上回る可能性だって十分に秘めています。最初は身体作りがメインになるかと思いますが、実戦登板を重ねる中で、不調で乱していた制球を改善していけるかどうかが鍵になりそうです。
育成2位 松石信八(内野手・藤蔭高)
基本情報
選手としての特徴
175cm75kgと体格的には小柄なものの、高校1年夏に146キロ、同年秋には152キロを計測し、甲子園未経験ながら「世代最速投手」として注目を集めた右腕。その一方で高校では多くの故障に泣かされ、最後の夏も左脇腹を痛めた影響で球数わずか9球、2回途中降板と、武内投手同様不完全燃焼で終えました。
チームで主軸を任されるなど打力も高く、また50m5.9秒、遠投115mと身体能力にも優れており、プロ入り後は投手ではなく内野手として勝負するとのこと。まずは故障に強い身体作りと本格的な守備力の強化(連係プレーなども含め)に時間を割くと見られますが、野手としての本格的な経験が浅い分、規格外の成長を見せてくれる可能性もあり楽しみな存在です。
育成3位 髙野光海(外野手・富山GRNサンダーバーズ)
基本情報
選手としての特徴
徳島・池田高を卒業して1年の選手で、マリーンズでは昨年のドラフト3位・田中投手や5位・金田選手らと同世代にあたります。編成的に考えると、昨年のドラフトで指名できなかった高校生スラッガー候補を1年越しに獲得したというイメージです。富山では下位打線でDHとしての出場が多く、打率は決して高くはないものの年間で5本塁打を放ち、リーグ最多本塁打に輝きました。
確実性と守備力という点で課題は残ると思いますが、来季が高卒2年目の選手と考えれば素材として魅力は十分です。長打力という武器をアピールし、同じ右の長距離砲候補で世代の近い山本大斗選手らに刺激を与える存在として期待したいです。
育成4位 藤田和樹(外野手・延岡学園高)
基本情報
選手としての特徴
185cm82kgと大型の選手で、高校では最速148キロを記録する投手としても注目をされていた選手です。打撃センスが高く、高校通算30本塁打。スカウトからは、リストの柔らかさを高く評価されています。
チームとして長距離砲と呼べる日本人左打者が不在で、特に外野は藤原選手や和田選手、怪我からの復活を目指す髙部選手など俊足巧打タイプの選手が集中しているため、この点において藤田選手が強みを発揮できれば他の選手との差別化もしやすく、起用に幅が広がります。肉体強化に取り組んでいけば長打力ももっと開花していきそうで、非常に楽しみな素材です。
育成5位 富山紘之進(捕手・会津北嶺高)
基本情報
選手としての特徴
181cm70kgと体格的には「普通の高校生」といった印象ですが、二塁送球で平均1.9秒台を計測できる肩の強さが目に留まり指名を受けた選手。夏の大会では5試合で許盗塁1つと強肩で抜群の盗塁抑止力を見せました。
ドラフト前に届いた調査書は1球団のみで、担当の松田スカウトも他の試合の選手の視察に訪れた夏の大会で偶然目に留まったという隠し玉的な選手。同じ高校生捕手で5位指名の寺地選手と比較すると、富山選手の方が守備型タイプの捕手だと思うので、松田スカウトに評価された守備でどこまで存在感を発揮していけるかが鍵を握る選手ではないでしょうか。
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