抗生物質の乱用について

以前から抗生物質の使用法については記事にしていますが、これについて、ひとつひとつ説明していこうと思います。

1 最後まで飲みきる

抗生物質というのは、細菌を殺すものです。ですが、一回薬を飲んだからと言って、菌がすぐに死滅するわけではありません。

菌も増殖しますから、増殖を抑えつつ、殺すということを薬で行うことが、抗生物質による治療です。

ですが、薬の量が少なかったり、途中でやめたりするとどうなるでしょうか?

充分な殺傷効果が出ないだけではなく、菌に「薬の情報」を与えるだけで終わってしまいます。
菌も生き物ですから、敵の情報を得たらそれに対抗する手段を取ってきます。それが「耐性菌」と呼ばれるもので、薬に対抗するように自身(細胞)を進化されます。
ですから、中途半端に服用すると、間接的に菌を強くしてしまうのです!


抗生物質の効果を判断するにはだいたい3-4日の服用が必要ですから、その日数はしっかり服用してくださいね!


2:あげたりもらったりしない

抗生物質のチョイスには、「抗菌スペクトラム」という基準があります。これは、「その感染症の原因菌が何か」をある程度特定し、それにピンポイントに効く抗生物質を選ぶということです。
あなたがもらったその抗生物質が、誰かに効くとは限らないし、全く効果がないかもしれないのです。

全く効果がないのに服用すると。。

1、で書いたように、菌を強くするだけになってしまいますし、あなたが持つ常在菌(病気の元ではない菌) まで殺してしまうかもしれません。

、、と、ここまでは優等生薬剤師の言うこと。


さて、本当に「抗菌スペクトラム」に照らし合わせて選んでいるのでしょうか?

街の内科で、いつも同じ抗生物質をもらったり
だれかの処方内容と自分のが全く同じだったりすると
「同じ症状だからあいつの薬もらおう」となっても仕方ないと思いますねー


それだけ、抗生物質は「機械的に」選ばれています。
街の内科の先生が「抗菌スペクトラム」なんて考慮していないことは明白です。

じゃあやっぱり人のもらおう!そう思ったあなたは、ちょっとストップ!


前述したように、その人に処方された抗生物質は、その人に必要な日数処方されています。
だから、その人がちゃんと飲まなければいけないし、同じ症状でも、原因菌が違うことは大いにあります。


いつもの抗生物質が効かない時には特に!
ですからやっぱり、人の抗生物質をもらったり、人にあげたりしてはいけないのです。


3: むやみに処方を希望しない

「抗生物質ください!」
そのようにお願いする患者さんを時々見かけます。

それってどうしてか?っていうと、、多分その人は、辛い症状が抗生物質で楽になった経験があるからなんです。

それはすごくよくわかる!
でもね、それとこれとは違うのですよー
というのは、「その時はその抗生物質がヒットした」のです。
タイミングや量や期間が。

今の症状が、今のその症状の原因が、その時と同じとは限らないのです!

もっと言えば、、
その症状を緩和するには「抗生物質が必要ない」のかもしれない。


日本において「診断する」権限を持っているのは医師のみです。薬剤師もダメね。ましてや素人のあなたが診断をしてはならないし、出来ないはずなんです。

そして最後に1番大事なこれね!


3風邪、インフルエンザに抗生物質は効きません

これはどういうことかというと、、

抗生物質=菌に対するもの。

インフルエンザは「インフルエンザウィルス」によるもの。

風邪は「風邪症候群」と言って、これもやはりウィルスによるものだからです。

ウィルスには抗生物質は効きません。


じゃあなぜ、抗生物質が風邪に処方されるのか?実はその抗生物質、「二次感染」に処方されているのです。。


風邪でいうと、ウィルスによって、熱が出たり咳が出たりします。

それをこじらせると、、
「上気道炎」になったり
「気管支炎」になったりします。


この「上気道炎」「気管支炎」が、菌の仕業。ここに抗生物質を使っているのです。だから抗生物質が処方されるのです。はい、これが「保険上」抗生物質が使用される理由です。


カルテに「上気道炎」「気管支炎」と書かなければ、抗生物質は処方出来ません。ですから、あなたの求めに応じて抗生物質を処方する医師は、ひょっとしたら「そうではないのに」「必要ないのに」抗生物質を処方しているのかも。


私が今日の読売新聞を見て驚いたのは、これはある特定の医師にとっては驚異になり得るからです。

特定の医師とは
「風邪ぽいんです」と訴えて医師にかかったあなたに聴診器も当てず、喉の赤みも見ずにあっさり抗生物質を処方する医師。

そこにメスを入れるべきだ!と政府が判断したからなのです。これは大きな大きな改変になるでしょう。

と同時に、私たち患者の側も自らの健康を守るために、適切に薬を使うことが必要になってきたということです。

「言われたから飲む」
「医師は絶対」

そういう社会が変わっていきます。

これからです!本当のことを伝える薬剤師として、これからも精進してゆきますね!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?