見出し画像

心不全による体液貯留と治療薬①


昔、心不全患者に対して利尿薬を使いましょうっていうのが結構腑に落ちなかったんですが、その理由とか確認してみるとなるほどなあって思いました。

今回は、心不全による体液貯留の機序について話していきます。

心不全でなぜ体液貯留が起こるのか?


心不全患者の両側下腿浮腫は結構メジャーですね。
両側の下腿で浮腫があった時には、確定診断とは言わないものの(感度0.5 特異度0.78)、心不全の原因を一番よく考えると思います。


そもそも、心不全になると心臓のポンプ機能が弱くなるので、血液循環が滞りますよね。
それで心臓がもっと血液送り出さないとって代償的に頑張るからその分体液貯留も起こるのかな?と一瞬思うんですが、、
よくよく考えてみると、元々ポンプ機能弱くて少なかったのに対して頑張って血液を送り出して普通の量になるから、あれ?循環血液量としては多くならなくね?って思ったんですよね。

ただ、実際は体液量全体としては増えてるんです。
心不全患者でむくんでる人はその分体重もちゃんと増加してるんですね。


ここにはちゃんと理由があって、
ヒトの心臓と血管に加えて、腎臓も関与しているんです。


まず、循環血液量の低下によって腎血流量自体も減っていくため、腎臓からの水分の排泄量自体減ってしまいます。
inの低下と共にoutも減ってしまいますね。

それと同時に、腎血流量の低下によってRAAS系(レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系)が賦活化されます。
糸球体の横にある傍糸球体細胞からはレニンが分泌されており、腎血流量の低下によって傍糸球体細胞からのレニン分泌が増加することによってRAAS系が亢進します。
分泌亢進したアンジオテンシンⅡによって、輸出細動脈を収縮させた糸球体濾過量の増加(こちらは血液量減少に寄与)と血管収縮作用による血圧上昇が起こります。
また、同じく分泌亢進したアルドステロンはNaとH2Oの再吸収の促進により体液量の増加に寄与することとなります。

これらの腎機能の影響による体液量の増加と血圧上昇によって、血管→間質への体液貯留が起こるようになります。

このようにして、

心臓ポンプ機能低下→腎血流量の低下とRAAS系の賦活化           

       ⬇︎ ⬇︎ ⬇︎          

       体液貯留


となります。


心臓の機能低下だけでなく、腎臓もがっつり関与してるんですね。


こういった体液貯留(+血圧上昇)によって心臓にかかる前後負荷が大きくなり、更に心臓が働かざるを得ない状況を作り出して悪循環となっていくのが心不全(慢性心不全)です。
これが進んでいくと、ある時心臓のポンプ機能のキャパが限界を超えて機能停止(急性心不全)へと発展していくリスクがあるので、日頃から負荷をかけないように利尿薬で体液貯留を改善していきましょうという治療方針になるんですね。


心不全による体液貯留の機序と利尿薬の重要性がわかったところで、次回は実際の利尿薬による治療法について話したいと思います。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?