見出し画像

グルーヴは見慣れた風景にとけていく

序談

いよいよ本日4月26日(金)から、Hisada Yuyaさんの個展が開催されました。Hisadaさんの描く抽象的な流体イメージが示してくれるのは、音楽に包まれる空気感であったり、GOOD VIBESなムードであったりします。ゆるやかで穏やかで、それでいてストレートなまでのポジティブさを感じながら、僕の目には暮らしの中にとけていくグルーヴが描かれているように見えます。

そんなHisadaさんのグルーヴを楽しむ今回の展示会では作品と併せて、コザのビール醸造所 FILL BREWINGとコラボレーションしたクラフトビールもご用意しております。さらに、会期2日目にあたる4/28(日)にはHisadaさんのご家族ご親族 a.k.a 久田家のみなさまによるホームパーティー(フリーフード)も開催予定です。

会期と同じ名を冠したクラフトビール、久田家謹製のメキシカンタコスやパン、準廃墟に流れる音の波、そしてそれらを版面に落とし込んだかのような作品たち。全方位的に福々したグルーヴが満ちる四日間、楽しみで仕方ありません。

僕としても賑わいに華を添えるつもりで、この投稿の最後に「レター・フロム・場末」として一片の詩をこしらえました。と言っても、例によって華々しさのない文体ですが、「ご来墟お待ちしてます」の言葉の代わりとさせてください。

会期中は全日程、僕はもちろんHisadaさんも在墟していますので、お気軽にどなた様も遊びにいらしてくださいませ。

ぴーしょー!

本題/レター・フロム・場末

グルーヴは見慣れた風景にとけていく
(for Hisada Yuya / 個展『グルーヴィン・ハイ』)

日々は続く
ループするビートみたいに
ほぼ正確な繰り返しがもたらすものは
退屈さだけじゃないような気もする
そんな予感を言葉に託して
前にも同じような詩を書いた

周回軌道は
長いこと正しい座標を結んでいるらしい
朝が来て、夜が来て、平日を抜け週末を巡り
また、朝が来て、夜が来て、月曜に至る
堂々巡りの馴染みある風景よ
そっちのほうこそ飽きたりはしないのか
諦念めいた問いかけの傍で
昨日の蕾が微かに解けている
気がつくのは大概がいつも
見過ごした後のこと
じわりじわりと果たされた移ろいを
追憶の中で振り返る

日々は続く
ループするビートみたいに
緻密な計算処理のような絶対的な予定に
裏打ちされていると思い込んでいたのだが
ほんの極々僅かに帯びたノイズのような
些細な差異が退屈さの処処に潜んでいた

見知ったはずの景色はどれも変化の只中にある
満たされていたものが、やがて失せていく
渇ききっていたものが、ふと潤いを帯びる
繰り返していたのは、変化そのものであり
見慣れていたのは、真新しさそのものであった
ぼんやりとした予感だけが
僕より遥かに先に辿り着いていたのだ
論理や言葉が整うのを待つことなく
心地よさを担保してくれていた

日々は続く
ループするビートみたいに
抗うように保たれながら
それでいて、微かに差異を含みつつ
円環の軌跡はミクロに揺らいでいる
その揺らぎにかられて、そそのかされて

変わり映えが無く思える日々に
ついつい喜びのヒントを求めている
終わりない日常に宿るグルーヴがある
あるものは新たに始まり
またあるものは再起を図る
それぞれの都合でエントリーする
僕は僕で朽ちかけたままの建築と
未だ熟さぬ身の上を重ねながら
限られたループに望みを託す
起点と終点の継ぎ目が心地よくとけていく
グルーヴは見慣れた風景にとけていく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?