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#屋久島の鳥たち 2月

「寒波の後には・・・」
 十年に一度といわれる寒波が、1月下旬に日本全土に押し寄せました。屋久島でも久しぶりに積雪が見られた集落もあったようです。

寒波が押し寄せ、前岳にも雪が積もった朝。手前の電線にはヒレンジャクが並んでいる
2018.1.27宮之浦

 寒波が来るとその北風に吹かれてなのか、寒さを逃れるように普段見られない鳥がやって来ることがあります。
 その一つがカモメの仲間です。
 中でもウミネコがよく見られます。特徴は白い体に灰色の翼、黄色い長いくちばしの先端に黒と赤の差し色が入っていることです。そして、尾羽に黒い帯が入っているのも特徴で、英名ではBlack-tailed Gull(黒い尻尾のカモメ)と呼ばれます。
 鳴き声がニャーニャーと聞こえるそうで、その名前が付いたのかもしれません。

安房港を羽ばたく1羽のウミネコ。昨年のクリスマス寒波で渡って来たのかな? 2022.12.31安房
堤防で羽を休めるウミネコ。左側は今年生まれの若鳥。2023.1.25永田

 全国的には年中見られる鳥のようですが、屋久島では急激に冷え込んだ後に出会える稀な冬鳥です。
 また、本土では冬鳥のユリカモメも屋久島では寒波の後にたまに来ることがあるぐらいです。
 船が停泊した港にフワフワと舞う白い鳥の姿は、港のイメージそのものという感じがします。

河口の岩の上で休む2羽の鳥。手前がユリカモメ。奥はササゴイで屋久島では留鳥となっているが、冬に見かけることが多い。「冷えますね」と会話していそう。2021.1.12

 カモメの仲間以外に、寒波後に出会ったことがあるのがヒレンジャクです。
 本州中部以南に見られる少ない冬鳥で、移動する時は大群でするそうです。年によって渡来数が変化するので、全国的に見てもほとんど見られない年もあるようです。
 ヒレンジャクの特徴は太く吊り上がった黒いアイラインのいかつい顔とフサフサのモヒカン頭です。ヒレンジャクの「ヒ」は緋色のことで、尾羽に赤い帯が入っています。

年に一度会えるか会えないか、ヒレンジャク。2021.1.24宮之浦

 先日の寒波の時も来るのではないかと期待して、以前出会えた宮之浦に行き、クロガネモチの街路樹のある通りを見てみたのですが、残念ながら出会えませんでした。
 何年か前の寒波の時には、ヒヨドリに追われながらもせっせとクロガネモチの実を食べていました。その姿を見ると、頑張れ!と応援したくなります。

クロガネモチの木に集まったヒレンジャク。さあ、何羽いるでしょう?2018.1.31宮之浦
人相悪く見えるけど、よく見るとかわいい。2021.1.24宮之浦

 これらの鳥たちは寒さを逃れてたどり着く屋久島で、しばし休んで英気を養ってまた北へ帰って行くのでしょう。
 2月は1年の中でも一番寒い月です。まだ寒波が押し寄せることもあるかもしれません。
 でも、ウグイスのさえずりが聞こえ始めるのもこの頃です。寒い寒いと思っていても、季節は春へと近づいているようです。
 年に一度会えるか会えないかの鳥たちの出会いにもまだ望みを持ちつつ、   たくさんの鳥たちのさえずりが聞こえる春を楽しみに待ちたいものです。
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福留 千穂/ふくどめ ちほ
 鹿児島生まれの鹿児島育ち。県内の小中学校で養護教諭として勤めていましたが、ガイドを志し2014年に屋久島へ。屋久島の自然を案内する中で、野鳥の存在は避けては通れず、野鳥を覚えるために意識して見るようになったところ、野鳥のかわいさ、美しさ、たくましさに触れ、すっかり虜(とりこ)になってしまいました。
 現在はカメラを片手に、野鳥の姿や鳴き声を探して歩く「とりさんぽ」が生活の一部になっています。
 耳を澄ますと、いろんなところから鳥の声がする。
 よく見ると、いろんな鳥が近くにいる。
 そのことに気付いてもらえ、野鳥の生活に気持ちを寄せてもらえると嬉しいなと思い、屋久島で見られる野鳥の様子をお伝えしていきたいと思います。