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絶対に理解しておきたいネイルサービスの知識

やくさひろです。
NPAA衛生管理責任者向け衛生知識習得講習で使用していたテキストをnoteで全公開いたします。
やくさひろ手のお手入れ認定インストラクターの方々や、やくさひろネイルスクールに入学された方、またネイルに興味を持たれている方など幅広く一つの読み物としてお時間ある際に目を通していただければと思います。

はじめに

ネイルへ施術する本来の目的は、「健康な爪の育成をサポートする」ことです。健康な爪にすること、更にその健康な爪にアートを施し「楽しみながら健康な爪を保護していく」こと、それを専門的に出来るのが「マニキュアリスト」の役割であると考えています。

◎健康な爪を育成するサポートに必要なスキルはどのようなものでしょうか?
◎健康な爪を保護するために必要なスキルはどのようなものでしょうか?
◎マニキュアリストとネイルサロンのそれぞれの役割はどのようなものでしょうか?

NPAAではこれらのことを習得して初めて「お客様に対して施術が出来る」知識を有していると考えています。
ネイルのプロであるマニキュアリストとしてお客様に施術を行なうという意義をご理解いただければと思います。

当社におけるネイル検定事業の総称部門を「NPAA」と略して表記いたします。ネイルサロンにおける衛生管理に関する指針は「指針」と略して表記いたします。

1.ネイルサービス業

(1)ネイルサービス業とは何か

平成25年10月改訂、平成26年4月1日施行の日本標準産業分類(総務省)に「ネイルサービス業」が新設されました。ではネイルサービス業の具体的な内容は何でしょうか。

「ネイル化粧品を用いてネイルケア、ネイルアートなどを手および足の爪に施すことによって、清潔で健康な爪を維持し美化するためのサービスを提供する事業所をいう。」(出典:平成25 年7月5日経済産業省大臣官房調査統計グループ統計企画室「細分類 ネイルサービス業」の新設について(案))

つまり、ネイルサービス業とは「清潔で健康な爪を維持し美化するためのサービスを提供する」ということです。これは一番大枠の定義であるといえます。もう少し細かく見ていきましょう。

清潔で健康な爪を維持し美化するためのサービスを提供するためには、どうすることが必要なのでしょうか。NPAAでは、

① お客様の身体の一部を施術することを認識し、ネイルに関する知識(施術の可否等)、技術 (ケア、アート含め)を提供すること(技術的サービス)② お客様の御希望、御要望を引き出す力(カウンセリング)、施術の間お客様に安らぎや安心感等を与える接客を行なうこと(人的サービス)③ お客様の安全に配慮した知識、技術、空間の提供、コンプライアンスを重視したサービスの提供(サービスの安全性)

とネイルサービス業の内容を定義しています。NPAAではこの内容をネイルサービス業の内容をより具体的に示したものと考えています。

(2)ネイルサービスと責任

ネイルサービス業は「健康な爪を維持し美化するためのサービス」であり、更に技術的サービス・人的サービス・サービスの安全性の3つのサービスに分かれます。ネイルサービス業はこの3つのサービスをお客様に提供する(責任を果たす)ことですが、それでは、お客様に「提供した」(責任を果たした)といえるためには、どうすることが必要でしょうか。ここでは、サービスを行なう上でのネイルサロンの「責任」にスポットを当てます。

※裁判例

美容室における美容契約の内容「本件美容契約の性質については当事者間に争いがあるが,本件美容契約上の被告の債務として,原告の求めたデザイン,カラーに基づき,カットし,カラーリングすること,その過程で,デザインに見合ったカット手法を採用すること,デザイン,カラー等に疑義が生じれば原告に確認することであることがあることについては,実質上当事者に争いがない。また,加えて,刃物や染髪料等を用いる美容契約の性質上,併せて,原告の生命,身体を害しない安全配慮義務があると解される。しかし,ここで,デザインについての原告の求めはある程度抽象的であること,頭髪の状態,性質には個人差があり,また同一個人であっても年齢や頭髪のコンディションによっても変化するため,同じカットを施しても,結果が同じとなるとは限らないことを勘案すると,その抽象的に求められたデザインの髪型とするために合理的なカット手法を採用すれば,被告において,本件美容契約上の義務違反や違法行為は問題とならないと解すべきである。」            (東京地裁平成17年11月16日判決)

ネイルサービスの責任を裁判所が判断した例はありませんので、美容室の美容契約の内容を裁判所が判断した事例を紹介しました。

美容院における美容サービス、ネイルサロンにおけるネイルサービスには以下の共通点があります。

①デザインについての原告の求めはある程度抽象的であること
②頭髪と同様、爪の状態、性質には個人差があり、年齢、コンディションによっても変化するため、同じ施術を施しても同じになるとは限らない。
③施術において、有機溶剤、ニッパー、プッシャー等お客様の生命、身体を害する恐れのある用品を利用する

 このような共通点より、美容室における美容契約の内容は、ネイルサロンにおけるネイルサービスの内容と合致するとNPAAは考えておりますので、その考えに沿って進めていきます。

 ポイント

ネイルサロンがネイルサービスにおいてお客様に対して負う責任の内容は

1)お客様の求めに応じた施術をし、デザインに見合った手法を採用すること(抽象的に求められたデザインとするために合理的な施術手法を採用)2)お客様の生命、身体を害しない安全配慮義務があること
3)疑義(内容が曖昧な点)が生じればお客様に確認をすること

 という3つです。これらの責任を全て果たした時に始めて「お客様に対してネイルサービス上の責任を果たした」ということになります。

 (3)施術契約の種類

◎ネイルサロンにおける施術契約は、裁判所の判断から「準委任契約」(民法656条)の一種と解釈され得ると言われています。つまり、「仕事の完成を目的」(請負契約 民法632条)とするのではなく「仕事の実施を目的」とする契約となります。その理由として

 ①施術における完成形は、お客様のイメージの中にありますが、ネイルはそのイメージを施術者の技術と感性(センス)で施術するため、その完成形を特定することが難しい。
②爪の状態は個人差があり、年齢、コンディション等で施術が変化することがあり、お客様とイメージと施術が一致することが難しい 
ということが挙げられます。

◎準委任契約においては、「善良な管理者の注意」をもって契約内容の実行を行なうことが求められています。「善良な管理者の注意」とは職業上一般的に要求される注意、つまりネイルのプロとして一般的に要求される注意を払うことが必要だということです。

NPAAではこの善良な管理者の注意の具体的な内容が

1)お客様の求めに応じた施術をし、デザインに見合った手法を採用すること(抽象的に求められたデザインとするために合理的な施術手法を採用)2)お客様の生命、身体を害しない安全配慮義務があること
3)疑義(内容が曖昧な点)が生じればお客様に確認をすること
であると考えています。

2.ネイルサービス業における責任の具体例

技術的サービス

技術的サービスの内容
お客様の身体の一部を施術することを認識し、ネイルに関する知識(施術の可否等)、技術 (ケア、アート含め)を提供すること

◎デザインに見合った手法を採用すること(合理的な施術手法)
合理的な施術方法とはネイル業界においては、「使用する用品」によって施術方法が異なる場合が多く見受けられます。統一した施術方法がない以上、もっとも合理的な施術方法といえるのは「ネイル用品のメーカーが打ち出した施術方法」であると思われます。各メーカーは、自社のネイル用品の性質を考慮した使用方法を提唱しています。使用を考えるネイル用品のメーカーが打ち出した施術方法を確実に習得することが重要であると考えています。

その意味でも施術方法の確立されていないいわゆる「ノーブランド用品」の使用には十分注意が必要と言えます。単価が安いからという理由で安易に「使用方法が確立されていない」ネイル用品を使用することは、合理的な施術方法であったか、お客様の安全に配慮する義務を果たしたかという点において考慮されうることだと思われます。

商材の知識を持とう

ネイルの商材を「知る」ということは、正しい施術、お客様への幅広い提案につながります。また、お客様の安全に配慮するためには、お客様の地爪に直接塗布する用品(ジェル等)に関しての知識は持っておくべきです。

商材の知識を持っておくと◎正しい施術が可能となります。⇒合理的な施術へとつながります。◎お客様の不安を取り除くことが出来ます。直接地爪に塗布する用品は特に知識として知ることが大事です。(例 :用品・製品の特長、成分、薬事法等)◎商材の知識を深く持つことで、施術の幅が増え、お客様への提案のバリエーションも広がります。◎ネイルスクール等ネイル教育機関において正しい用品の知識を教えることが出来ます。

ネイルサービス業にプロとして携わるマニキュアリストは、使用する用品類の知識も習得しておくことを推奨致します。

サービスの安全性

サービスの安全性の内容
お客様の安全に配慮した知識、技術、空間の提供、コンプライアンスを重視したサービスの提供

◎お客様の生命、身体を害しない安全配慮義務  
ネイルサロンにおける安全配慮義務 衛生管理の重要性

ネイルサービスにおいてお客様の安全配慮を行なう際、もっとも重要であるのが「衛生管理」です。2010年9月に公表された厚生労働省「ネイルサロンにおける衛生管理に関する指針」(以下「指針」という)は、ネイルサロンに何らかの問題が発生した場合、保健所等が指導にあたる際の基準となるべき内容が記載されています。逆にこの内容を把握し、実践することで、問題を回避することが出来るということになります。ここでは、お客様の生命、身体を害しないために必要な指針の内容を習得します。

衛生管理習得の目的

お客様、従業員の爪の健康・体の健康を守る知識の習得
⇒ 皮膚、爪の構造、感染症等爪の病気に関する知識、作業場の環境

皮膚、爪の構造は、「健康な爪」を知る第一歩です。爪とは何か、ネイルをすることによってどこがどのようにダメージを受けるのか、そのダメージはどのように回復するのか等、「爪」のプロとしての知識が必要です。またネイルサービスを行なうことができない爪の状態とはどのようなものなのか、病気を診断することは出来ませんが、爪の病気等を未然に防ぐ知識が必要となります。

お客様、従業員の爪の健康・体の健康を守る手段の実践
⇒ 使用する道具類の消毒

ネイルサービスに使用する道具類は、お客様に共通に使用するものも多く、いわば感染症の媒介になり得るものです。そのため、正しい使用方法と消毒を行ない、感染等を防ぐことが必要です。道具によって異なる「消毒の正しい手段」を習得し実践することが必要となります。

お客様、従業員の爪の健康・体の健康を守る体制の構築

⇒カルテの作成、説明義務等、従業員管理等
ネイルサービスはマニキュアリストだけで行なうものではなく、お客様にも知っていただく知識や情報があります。またお客様の情報等を把握することで、感染症や健康を害する要因を未然に防ぐことが出来ることもあります。どのようにしてお客様へお知らせするのか、どのようにしてお客様の情報を得るのか、お客様に直接触れる従業員の管理(体調管理等)をどのようにするのか、その体制を構築することが必要となります。

衛生管理責任者とは

指針に記載されている衛生管理責任者の役割は以下の通りです。
〇施術が衛生的に行われるように、常に従業者の衛生教育に努めること。
〇衛生に関する知識を有し、ネイルサロンにおける十分な経験を有することが望ましい。
〇常に従業者の健康管理に注意し、感染性の皮膚疾患にかかったときは、当該従業者を作業に従事させてはならない。
〇従業者が感染症にかかっていないかどうか等、健康状態を毎日確認すること。
〇ネイルサロン、設備、器具等の衛生全般について、毎日点検管理すること。
〇ネイルサロン及び取扱い等に係る具体的な衛生管理要領を作成し、従業者に周知徹底すること。
〇開設者の指示に従い責任をもって衛生管理に努めること。

ネイルサロンにおける衛生管理に関する指針 全文

第1 目的この指針は、ネイルサロンにおける設備、器具等の衛生的管理及び消毒並びに従業者の健康管理等の措置により、ネイルサロンに関する衛生の確保及び向上を図ることを目的とする。

 第2 定義この指針において、「ネイルサロン」とは、爪の手入れ、爪の造形、爪の修理、補強、爪の装飾など爪に係る施術を行う施設をいう。

 第3 施設及び設備1 施設は、隔壁等により外部と完全に区分されていること。ただし、隔壁等により区分することのできない施設の場合は、仕切り(カーテン含)等により区分すること。2 施設が設置されている建物は、ねずみ及び昆虫の侵入を防止できる構造であること。3 施設には、施術を行う作業場を設けること。4 客の待合所を設けることが望ましいこと。設けることができない場合には、待合所に替わる場所を設けるなど、施術中の客と施術前後の客が混在しないようにすること。5 従業者の数に応じた適当な広さの更衣等を行う休憩室を設けることが望ましいこと。6 作業場は、待合所、居住室、休憩室等作業に直接関係ない場所から区分されていること。隔壁等により、完全に区分されていることが望ましいが、仕切り等により明確に区分されていること。7 作業場は、作業及び衛生保持に支障を来さない程度の十分な広さを有すること。8 作業場に適当な広さの器具等を消毒する場所を設けること。ただし、作業場内に設置できない場合には、共用設備を用いるなど利用しやすい場所を決めておくこと。9 作業場の床及び腰張りは、清掃が容易に行える構造であること。10 作業場内に従業者用の手洗い設備を設けること。ただし、作業場内に設置できない場合には、共用設備を用いるなど利用しやすい場所を決めておくこと。11 便所は、隔壁によって作業場と区分され、専用の手洗設備を有すること。12 作業場内の採光、照明、換気が十分行える構造設備であること。

(1) 換気には、機械的換気設備を設けることが望ましいが、自然換気の場合は、換気に有効な開口部を他の排気の影響を受けない位置に設置すること。(2) 換気設備等については、労働安全衛生法の規定も確認すること。(3) 石油、ガスを使用した燃焼による暖房器具又は給湯設備は、密閉型又は半密閉型のものであることが望ましいこと。

13 洗場は、流水装置とすること。なお、給湯設備を設けることが望ましい。ただし、作業場内に設置できない場合には、共用設備を用いるなど利用しやすい場所を決めておくこと。14 作業に伴って出る汚物、廃棄物を入れるふた付きの汚物箱等を備えること。15 消毒済みの皮膚に接する器具類を保管するための収納ケース等を備えること。16 器具類、布片類及びタオル等を消毒する設備又は器材を備えることが望ましい。17 器具類及び布片類は、十分な量を備えること。

 第4 管理1 施設、設備及び器具の管理(1) 施設は、必要に応じ補修を行い、1日1回以上清掃し、衛生上支障のないようにすること。(2) 排水溝は、廃棄物の流入を防いで排水がよく行われるようにし、必要により補修を行い、1日1回以上清掃を行うこと。(3) 作業場内には、不必要な物品等を置かないこと。(4) 作業場内の壁、天井、床は、常に清潔に保つこと。(5) 施設内には、みだりに犬(身体障害者補助犬を除く。)、猫等の動物を入れないこと。(6) 作業場内をねずみ及び昆虫が生息しない状態に保つこと。(7) 器具類、布片類、その他の用具類の保管場所は、定期的に清掃を行い、常に清潔に保つこと。(8) 照明器具、換気装置は、定期的に点検・清掃を行うこと。(9) 手洗い設備には、手洗いに必要な石けん、消毒液等を備え、清潔に保持し、常に使用できる状態にしておくこと。(10) 器具等の洗場は、常に清潔に保持し、汚物が蓄積し、又は、悪臭等により客に不快感を与えることのないようにすること。(11) 器材・器具類は、常に点検し、故障、破損等がある場合は、速やかに補修し、常に適正に使用できるように整備しておくこと。(12) 紫外線消毒器は適宜紫外線灯の清掃及び交換を行い、常に 85μW/cm2以上の紫外線照射が得られるように管理すること。(13) 洗浄及び消毒済みの器具類は、使用済みのものと区別して、収納ケース等に保管すること。(14) 清掃用具は、専用の場所に保管すること。(15) 便所は、常に清潔に保持し、定期的に殺虫及び消毒すること。(16) 使用する薬品類は、所定の場所に保管し、その取扱いに十分注意すること。※薬品類の保管については、消防法の規定も確認すること。

2 従業者の管理(1) 開設者はネイルサロンごとに衛生管理責任者を定め、施術が衛生的に行われるように、常に従業者の衛生教育に努めること。なお、衛生管理責任者は、衛生に関する知識を有し、ネイルサロンにおける十分な経験を有することが望ましい。(2) 開設者及び衛生管理責任者は、常に従業者の健康管理に注意し、感染性の皮膚疾患にかかったときは、当該従業者を作業に従事させてはならない。(3) 開設者は、従業者又はその同居者が結核等呼吸器疾患その他感染症の患者又はその疑いのある場合は、従業者当人が感染していないことが判明するまでは、作業に従事させてはならない。

 第5 衛生的取扱い等1 衛生管理責任者は、従業者が感染症にかかっていないかどうか等、健康状態を毎日確認すること。2 衛生管理責任者は、ネイルサロン、設備、器具等の衛生全般について、毎日点検管理すること。3 作業場には、作業中の客以外の者をみだりに出入りさせないこと。4 作業場内の採光、照明及び換気を十分にすること。開放型の燃焼器具を使用する場合は、十分な換気量を確保するとともに、正常な燃焼を妨げないように留意すること。5 作業中の作業場内は、適温、適湿に保持すること。6 作業中、従業者は、清潔な外衣(汚れが目立ちやすいもの)を着用すること。7 従業者は、客 1 人ごとの作業前及び作業後には手指の洗浄を行い、必要に応じて消毒を行うこと。8 従業者は、常に身体を清潔に保ち、客に不潔感、不快感を与えることのないようにすること。9 従業者は、作業場においては所定の場所以外で着替え、喫煙及び食事をしないこと。10 皮膚に接する器具類は、客 1 人ごとに消毒した清潔なものを使用すること。11 皮膚に接する器具類は、使用後に洗浄し、消毒すること。12 皮膚に接する布片類は、清潔なものを使用し、客 1 人ごとに取り替えること。13 使用後の布片類は、血液が付着しているときには、次亜塩素酸ナトリウム溶液で消毒すること。その他は、洗剤等を使用して温湯で洗浄することが望ましいこと。14 蒸しタオルは、消毒済みのものを使用すること。15 客用の被布は、使用目的に応じて区別し、清潔なものを使用すること。16 従業者専用の手洗い設備には、消毒液を常備し、清潔に保つこと。17 器具類を消毒する消毒液は、適正な濃度のものを調製し、清潔に保ち、適切に管理すること。18 調製した消毒薬は、消毒しやすい適正な場所に置くこと。19 外傷に対する救急処置に必要な医薬品、医薬部外品及び衛生材料を常備し、用いる時には、適正に使用すること。20 便所の手洗い設備は、流水式とし、適当な手洗い用石けんを備えること。21 作業に伴って生ずる廃棄物は、客 1 人ごとに処理すること。22 作業に伴って生ずる廃棄物は、ふた付きの専用容器に入れ、適正に処理すること。23 皮膚に接しない器具であっても客 1 人ごとに汚染するものは、客 1 人ごとに取り替え又は洗浄し、常に清潔にすること。24 感染症もしくはその疑いのある者又は皮膚疾患のある者を扱ったときは、施術終了後、従業者の手指や使用した器具等の消毒を厳重に行うこと。25 施術に電気器具を使用するときは、使用前に十分にその安全性について点検し、使用中も注意を怠らないこと。26 施術に使用する薬剤等については、その成分等内容を十分に把握し、適正に使用すること。なお、爪化粧品類(ネイルエナメル、除光液等)、化粧水、クリーム、乳液、ハンドクリーム、化粧用油、石けん、ハンドソープ等の使用に当たっては、医薬部外品、化粧品として、薬事法による承認、届出をされたものを使用すること。

第6 消毒1 使用後の器具類は、血液の付着しているもの(その疑いのあるものを含む)と付着している疑いのないものに区別し、消毒すること。2 廃棄する器具類で、血液の付着しているものは、消毒してから、廃棄すること。3 再利用する器具類の消毒の手順(1) 消毒する前に家庭用洗剤をつけたスポンジ等を用いて、器具の表面をこすり、十分な流水(10 秒間以上、1 リットル以上)で洗浄する。(注)1 器具は、使用直後に流水で洗浄することが望ましい。この際流水が飛散しないように注意することが必要である。

2 消毒液に浸す前に水気を取ること。(2) 消毒は次のア~クのいずれかの方法により行う。ただし、血液の付着している器具類は、ア 煮沸消毒器による消毒、イのうち、消毒用エタノール中に 10 分間以上浸す方法、又は、ウのうち、0.1%次亜塩素酸ナトリウム液(有効塩素濃度 1000ppm)中に 10 分間以上浸す方法のいずれかによること。
ア 煮沸消毒器による消毒沸騰してから2分間以上煮沸すること。(注)1 陶磁器、金属及び繊維製の器具の消毒に適するが、合成樹脂製のものの一部には加熱により変形するものがある。
2 水量を適量に維持する必要がある。イ エタノールによる消毒消毒用エタノール(76.9v/v%~81.4v/v%エタノール液)中に 10 分間以上浸す、若しくは、消毒用エタノールを含ませた綿若しくはガーゼで器具表面をふくこと。(注) 消毒液は、蒸発、汚れの程度等により、7 日以内に取り替えること。
ウ 次亜塩素酸ナトリウムによる消毒0.01%~0.1%次亜塩素酸ナトリウム液(有効塩素濃度 100~1000ppm)中に10 分間以上浸すこと。(注)1 金属器具及び動物性繊維製品は、腐食するので使用する場合は、必要以上に長時間浸さないなど取扱いに注意すること。2 消毒液は使用するたびに取り替えること。3 消毒液を取り扱う際にはゴム手袋を着用する等、直接皮膚に触れないようにすること。
エ 紫外線照射による消毒紫外線消毒器内の紫外線灯で、85μW/cm2以上の紫外線を連続して 20 分間以上照射すること。(注)1 器具の汚れ具合、収納状況等により効果が期待できないことがあるため、器具の汚れを十分に除去した後、直接紫外線が照射されるような状態に収納した後、照射する。2 構造が複雑で、直接紫外線の照射を受けにくい形状の器具類の消毒には適さない。3 定期的に紫外線灯及び反射板を清掃することが必要である。4 2000~3000 時間の照射で出力が低下するので、紫外線灯の取替えが必要である。
オ 蒸し器等による蒸気消毒器内が80℃を超えてから10分間以上湿熱に触れさせること(温度計により器内の最上部の温度を確認すること。)。(注)1 ガラス、陶磁器、金属及び繊維製の器具等の消毒に適するが、合成樹脂製のものの一部には加熱により変形するものがある。2 タオル等布片類を器内に積み重ねて消毒する場合、最上部のタオル等が湿熱に充分触れないことがある。3 器内底の水量を適量に維持する必要がある。
カ 逆性石ケン液による消毒0.1%~0.2%逆性石ケン(塩化ベンザルコニウム又は塩化ベンゼトニウム)中に 10 分間以上浸すこと。(注)1 石ケン、洗剤を用いて洗浄したものを消毒するときは、十分水洗いしてから使用すること。2 消毒液は、毎日取り替えること。
キ グルコン酸クロルヘキシジンによる消毒0.05%グルコン酸クロルヘキシジン液中に 10 分間以上浸すこと。(注) 消毒液は毎日取り替えること。
ク 両性界面活性剤による消毒0.1%~0.2%両性界面活性剤液(塩化アルキルポリアミノエチルグリシン又は塩化アルキルジアミノエチルグリシン)中に 10 分間以上浸すこと。(注) 消毒液は毎日取り替えること。(3) 消毒後流水で洗浄し、よく拭く。洗浄に使用したスポンジ等は使用後、流水で十分洗浄し、汚れのひどい場合は、エタノール又は次亜塩素酸ナトリウムで消毒すること。
4 消毒に必要なその他の器材ア 液量計 100mL 用及び 1000mL 用イ 消毒容器 消毒用バット(ふた付きのものが望ましい。)、洗面器、その他消毒に必要な容器
5 タオル、布片類の消毒(1) 加熱による場合は、使用したタオル及び布片類を洗剤で洗浄した後、蒸し器等の蒸気消毒器に入れ、器内が 80℃以上を超えてから 10 分間以上保持させること。この場合、器内の最上部のタオル等の中心温度が 80℃を超えていないことがあるので、蒸気が均等に浸透するように十分注意すること。(2) 消毒液による場合は、使用したタオル、布片類を次亜塩素酸ナトリウム液に浸し、消毒すること。消毒終了後は、洗濯し、必要に応じて乾燥して保管するか又は蒸し器に入れること。

 6 手指の消毒

(1) 客1人ごとに施術を行う前に手指の消毒を行うこと。消毒方法は次の方法によること。
ア 血液、体液等に触れ、目に見える汚れがある場合、あるいは、速乾性擦式消毒薬が使用できない場合は、流水と石けんを用いて少なくとも手指を 15秒間洗浄すること。
イ 上記以外の場合は、速乾性擦式消毒薬を乾燥するまで擦り込んで消毒すること。
(2) 施術を行う前に、客の手指の消毒を行うこと。消毒方法は、施術者の手指の消毒と同様に行うこと。

7 その他の消毒
(1) 間接的に皮膚に接する器具類についても、その材質に応じ、前記に掲げた消毒方法のいずれかの方法により消毒すること。
(2) ネイルサロン、汚物入れ等の設備については、適宜、消毒することが望ましいこと。

第7 自主的管理体制

1 開設者又は衛生管理責任者は、ネイルサロン及び取扱い等に係る具体的な衛生管理要領を作成し、従業者に周知徹底すること。
2 衛生管理責任者は、開設者の指示に従い責任をもって衛生管理に努めること。
3 従業者は施術を行うに当たり、事前に感染症及び皮膚疾患等の治療中か、アレルギー体質か、薬を服用しているか、敏感肌であるか、その他施術を受ける障害のないことを、客に確認すること。なお、確認は、問診票等を用いて確実に行うこと。
4 従業者は、施術後のケアについて十分な説明をすること。
5 従業者は、施術に伴う健康被害発生のリスク等について、施術前に客に十分な説明を行うこと。説明、承諾は書面で行うことが望ましい。

厚生労働省ネイルサロンサービスに関する指針から引用


人的サービス

 人的サービスの内容

お客様の御希望、御要望を引き出す力(カウンセリング)、施術の間お客様に安らぎや安心感等を与える接客を行なうこと

 ◎疑義(内容が曖昧な点)が生じればお客様に確認すること

 ネイルサービスにおける疑義

ネイルは、お客様の抽象的なご要望を形にするサービスです。特にお客様からは口頭で要望を聞きますので、マニキュアリストはお客様の話しやすい対応、環境を作り出すことが大切です。ネイルサービスの目的はマニキュアリストがお客様に対して納得いく施術を行なうことではなく、お客様に納得していただける施術を行なうことです。疑義が生じるのはある程度仕方がありません。しかし、お客様との関係を円滑にしてお客様の抱く疑義をお客様の望むように解決することが重要なのです。

 お客様の疑義に対応するには

ネイルはマニキュアリストとお客様とがコミュニケーションをとりながら進めていく必要があります。
コミュニケーションとは「二人以上の人間同士が、意思や感情、情報などを相手に正しく伝え、相手から誤りなく受取り、共有すること」をいいます。この共有するプロセスがコミュニケーションです。
これは、お客様とのコミュニケーションだけではなく、ネイルサロンにおけるマニキュアリスト同士のコミュニケーションも必要となります。
また、お客様と一対一で施術を行なうマニキュアリストとしては、接遇、ホスピタリティが必要となります。NPAAではネイルサービスは、ネイルの施術を行なうことに加え、お客様に対する接遇、ホスピタリティもサービスの内容となると考えています。

疑義が生じる要因とその解消

疑義が生じる主な要因は以下の通りです。

①お客様のご要望を聞き、それを形にしていくカウンセリング不足
②施術の進行に従い、お客様に都度確認をしていなかった。
③接客においてお客様に満足感を与えられなかった。
④ネイルサロン内でのマニキュアリスト同士の引継ぎ等に不備があった。

さて、これらの要因を少しでも解消するためにはどのようなことが必要でしょうか。

(1)カウンセリングにおいて

コミュニケーション技法を用います。

傾聴
傾聴とは「耳を傾けてきく」つまり意識して耳を傾けることです。その根本は「他者を理解しようとすること」です。また、相手から答えを引き出すための問いかけや、選択肢を示すといったことも広い意味で「傾聴」になります。傾聴をすることは以下のメリットがあります。

①お客様の考えや気持ち、意図を理解し、推測することができる。
②お客様に集中してじっくりと話を聴く姿勢を示すことで、お客様を大事に思っていることを示すことができる。
③お客様との関係を安定させることができる。

 傾聴を行なうには、以下のことが重要となります。
①お客様の御要望を全面的に受け入れるところからスタートすること
⇒否定的な言葉は、お客様が要望を言うことをためらいます。
②笑顔を浮かべた穏やかな表情を行なうこと
⇒お客様はリラックスして話をすることが出来ます。

うなずき・あいづちと繰り返し
お客様とのコミュニケーションはマニキュアリストの反応でその進み具合は変わります。いくら傾聴を行なっても何も反応をしないと話にくくなります。話に対する反応の基本的なものにうなずき、あいづちと繰り返しがあります。

 うなずき・あいづちの重要性
①真剣に聴いているということを態度で示すことができる。
②お客様が、マニキュアリストの反応をみて、話をつかんでいるのかどうか確認することができ、話を修正することができる。
③お客様の安心感を得ることができる。

 単に「うんうん」と同じようなあいづちばかりを繰り返すと逆効果になりかねませんので、確認の意味でお客様のご要望の要点を短くはっきりと繰り返すことでさらに効果的です。

 確認と質問
マニキュアリストは、自分がお客様の御要望を正確に理解しているかどうか確認することが大事です。

たとえば「それは ~ ということですね」という具合です。ここでは自分の価値観で確認するのではなく、お客様の御要望を受容的に(全面的に受け入れて)きいた結果を確認することが重要です。

 また、マニキュアリストがお客様のご要望を理解できていないと判断した場合は、お客様に質問を行ないます。施術中にお客様に進行具合によってお客様のご要望どおりに進んでいるか確認をする際にも使用します。

情報を多く入手したい時(全然理解できていないと感じた場合)

開いた質問 「はい」「いいえ」では答えられない質問

情報や事実(お客様のご要望)を確認したい場合や施術中にお客様に確認を求める場合

閉じた質問 「はい」「いいえ」で答えられる質問

 情報共有

同じネイルサロンで働くマニキュアリストは全員「チームの一員」です。全員お客様によりよいネイルサービスを提供することを目的として集まっています。このチームにおいて情報を共有することでお客様の疑義が避けられる場合があります。

 一例

☆お客様の施術内容等の情報を共有する
カルテ等でお客様の施術内容等を共有することはネイルサロンの基本と言えます。お客様に何度も同じ質問をするより、お客様の情報をカルテに記載し、お客様の情報を把握して接客する方がお客様にとっても、ネイルサロン側にとっても有効です。また、後日何らかの不具合で来店された際、カルテで施術確認をすることができ、誰が、どのように施術を行ったかを把握することができます。そこでお客様の疑義への対応が可能となります。

接遇
お客様との信頼関係を構築し、お客様がご要望を発言しやすい環境を作ること

接遇とは
お客様への応対と接待を接遇といいます。単なる応対だけでなく、環境を整え、礼儀正しい態度でお客様と接し、お客様の目的が果たせるように心配りし、相互の心が開かれるような状況を作ることです。

 接遇に当たる際には

①自然な明るい表情を心掛ける
②誠心誠意の応対
③お客様の身になって接し、細やかな心配り、やわらかく穏やかな応対
④丁寧にテキパキとした行動
⑤正確に応対
⑥公平さを心掛ける

 会話(言葉の使い方)

聞き手(お客様)がわかりやすい話し方を心掛けることが大事です。お客様にご理解いただけるように分かりやすく伝えるようにしましょう。

お客様へ話しをする際には

①聞き手(お客様)の立場にたって話しかたを考える
②なるべく分かりやすい言葉を選択(専門用語等は避ける)
③相手が話しを聞く状況になってから話始める
④適切な言葉遣い
⑤語尾をきちんと話す(語尾を伸ばしたり、上げたりしない)
⑥話すスピード、声のトーン、表情に注意

 ホスピタリティ

お客様一人一人の立場に立って気配りや配慮をし、心からのおもてなしをすることをホスピタリティといいます。このような深い心地よさは、信頼感や安心感につながります。


☆長い施術時間にお客様がお疲れの様子ならば、休憩をとったり、声がけしたり気配りをする。
☆これまでの施術内容(カルテを確認)、好み等を予め調査し、普段使用しないネイルパーツ等を準備しておく
☆ゆっくりと雑誌を見ながら施術を受けるお客様には、あまり話しかけず、雑誌等を準備しておく。

 ネイルサービスの相手はお客様です。
マニキュアリストの自己満足ではなく、お客様にいかに喜んでいただくかということを考えなければなりません。
そこには施術だけではなく接遇、ホスピタリティ等総合的なサービスが必要となります。お客様と信頼関係を保つサービスを提供し、お客様のご要望に少しでも近づけるよう「お客様が話しやすい環境」を作っていきましょう。

(参考)
ネイルサロンと衛生管理(指針発表の経緯)
衛生管理指針公表の経緯

厚生労働省はネイルサロンに向けて「衛生管理指針」を発表しました。これは、国民生活センターからの「つけ爪に関する被害」の報告、国会議員による国会での発言により、厚生労働省が作成を始めたものです。

平成20年10月16日  国民生活センターの「つけ爪による危害」報告平成22年2月2日    第1回生活衛生関係営業等衛生問題検討会(3回開催)平成22年6月25日   行政手続法に基づくパブリックコメント             平成22年9月15日   「ネイルサロンにおける衛生管理に関する指針について」を公表

 衛生管理指針の位置づけ

衛生管理指針は厚生労働省健康局長から、各都道府県知事、政令市市長、特別区区長宛、つまり、保健所を設置できる自治体の長に通知されています。また、当指針は、地方自治法第245条の4第1項に規定する技術的助言にあたります。この「技術的」とは主観的判断や意思を伴わないという意味です。
ネイルサロンで健康被害が発生し、保健所等に相談が寄せられた場合は、この指針及び地域の実情に応じて指導又は助言が行われることになります。
また、生活衛生関係営業等衛生問題検討会の資料として公表されている中に、「ガイドラインの位置付け」があります。それによると

① ネイルサロンの衛生管理を行う上で目安となるものを厚生労働省において示したもの
② ネイルサロン経営者が、衛生管理を自主的に行っていただくことを想定

とされています。

最後に

ネイルサービス業に従事する者は、ネイルサービスの本質を理解することが重要です。本書はネイルサービスの性質、ネイルサービスおける施術者側の責任、その責任を果たすにはという観点から作成いたしましした。ネイルサービスの全てを網羅している訳ではありません。
ネイルサービスはお客様からお金を頂戴し、ネイルの施術を行ないます。そこには施術を行なう責任の範囲が必ず存在します。
最低限責任を全うするためには、内容をご理解いただくことが大切であると考えています。

ネイルサービス業はこれから益々発展していくことと思いますが、ネイルサービス業に携わる一人一人がプロとしての自覚と更なるスキルアップを目指し精進していくことが、よい方向での発展につながっていくことと思います。

1.ネイルサービス業 の章については、佐藤健宗法律事務所(の佐藤健宗弁護士に監修いただきました。

参考(引用)文献
コミュニケーション検定初級公式ガイドブック&問題集 ㈱サーティファイ
美容師のための接客・接遇マナー ㈱ウイネット

どうでしょうか?
読んでいくうちに頭が痛くなる、一体何からどうすれば?という方もおられることでしょう。わたしも最初は同じでした。具体的に何から着手すればいいのだろうか?と。
いきなり最初から全てを網羅し完璧にサービス提供する必要はないと思います。自身のサロンでできることから少しづつ実践していくことが大切だと考えます。
初心に立ち返り、本当の意味でのネイルサービスとは?こういったディスカッションをサロン内に行ってみることをおすすめします。
多角的な視点から、そのサロンのやるべきことが発見できることもあるからです。

日本中に、世界中に笑顔溢れるコミュニティをもっともっと増やしていきましょう!


やくさひろです。 記事が広くシェアされ、手のお手入れを通して誰かの幸せに繋がることを願っています。 いただいたご支援は活動費として使用させていただきます♡