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医療機器の承継について

 医薬品医療機器等法の「承継」とは承認取得者の地位を承継することであり、「製造販売承認」及び「製造販売認証」は「承継」制度により他者が引き継ぐことができます。
 ただし、一般医療機器の「医療機器製造販売届書」には、法律で定められた「承継」制度はありません。
 また、医療機器製造販売業許可や医療機器製造業登録には承認や認証とは異なり、「承継」制度はありません。

 被承継者(渡す側)と承継者(もらう側)の関係は、契約を結んだ他社の場合(契約による譲渡)や、被承継者が「合併」のために廃止会社となる場合に、「合併」の存続会社へ承認を承継する場合などがあります。
 例えば「合併」「分割」の場合であって医療機器事業部の人員としては変更がない場合も、従来とは別法人の経営となる場合には承継が必要となります(この場合は製造販売業許可、製造業登録にも注意)。

注意
 法23条の2の5 第2項(承認を与えない事由)第1号により、製造販売業許可を受けていない場合は承認を受けることはできない(承認取得者になれない)とされています。

 製造販売承認を取得している製造販売業者から他の製造販売業者への承継、外国製造医療機器等特例承認取得者から外国製造医療機器等特例承認取得者への承継は制度が定められていますが、(国内)製造販売業者から外国製造医療機器等特例承認取得者への承継(又はその逆)は制度がありません。
 その場合や「承継」制度が使えない場合には、「〇の中にT(まるティと発音)」という方法により、製品を引き継ぐ企業が(ある程度簡便に)承認を取り直す取り扱いが通知されています。

「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医薬品医療機器等法)及び、主な厚生労働省通知は次のWEBページで閲覧できます。
[厚生労働省法令等データベースサービス]
[(pmda)各種関連通知]

1 製造販売承認(大臣承認)

【法律】
(医療機器及び体外診断用医薬品の製造販売の承認)
第二十三条の二の五 医療機器(一般医療機器並びに第二十三条の二の二十三第一項の規定により指定する高度管理医療機器及び管理医療機器を除く。)又は体外診断用医薬品(厚生労働大臣が基準を定めて指定する体外診断用医薬品及び同項の規定により指定する体外診断用医薬品を除く。)の製造販売をしようとする者は、品目ごとにその製造販売についての厚生労働大臣の承認を受けなければならない。
2 ~17 略
(承継)
第二十三条の二の十一 第二十三条の二の五の承認を受けた者(以下この条において「医療機器等承認取得者」という。)について相続、合併又は分割(当該品目に係る厚生労働省令で定める資料及び情報(以下この条において「当該品目に係る資料等」という。)を承継させるものに限る。)があつたときは、相続人(相続人が二人以上ある場合において、その全員の同意により当該医療機器等承認取得者の地位を承継すべき相続人を選定したときは、その者)、合併後存続する法人若しくは合併により設立した法人又は分割により当該品目に係る資料等を承継した法人は、当該医療機器等承認取得者の地位を承継する。→相続・合併・分割
2 医療機器等承認取得者がその地位を承継させる目的で当該品目に係る資料等の譲渡しをしたときは、譲受人は、当該医療機器等承認取得者の地位を承継する。→契約による譲渡
3 前二項の規定により医療機器等承認取得者の地位を承継した者は、相続の場合にあつては相続後遅滞なく、相続以外の場合にあつては承継前に、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣にその旨を届け出なければならない。
(平二五法八四・追加)

【施行規則】
(承継の届出)
第百十四条の四十六 法第二十三条の二の十一第一項の厚生労働省令で定める資料及び情報は、次のとおりとする。
一 法第二十三条の二の三第一項又は法第二十三条の二の四第一項の登録の申請に際して提出した資料 →(製造業の登録)(医療機器等外国製造業者の登録)
二 法第二十三条の二の五第一項の承認の申請及び同条第十五項の当該承認事項の一部変更の承認の申請に際して提出した資料及びその根拠となつた資料 →(製造販売の承認)
三 法第二十三条の二の五第十二項に規定する使用の成績に関する資料その他の資料 →(条件付き早期承認制度)
四 法第二十三条の二の九第一項の使用成績に関する評価の申請に際して提出した資料及びその根拠となつた資料 →(使用成績評価の申請)
五 法第二十三条の二の九第六項の規定による報告に際して提出した資料及びその根拠となつた資料 →(使用成績評価の定期報告)
六 法第二十三条の二の十の二第一項及び第三項の確認の申請に際して提出した資料及びその根拠となつた資料並びに同条第六項の届出に際して提出した資料及びその根拠となつた資料 →(承認された事項に係る変更計画の確認)
七 法第六十八条の五第一項の規定による特定医療機器に関する記録及び当該記録に関連する資料 →(特定医療機器に関する記録及び保存)
八 法第六十八条の二十二第一項の規定による生物由来製品に関する記録及び当該記録に関連する資料 →(生物由来製品に関する記録及び保存)
九 製造管理又は品質管理の業務に関する資料及び情報 →(QMS)
十 製造販売後安全管理の業務に関する資料及び情報 →(GVP)
十一 その他品質、有効性及び安全性に関する資料及び情報 →(その他一切の資料)
2 法第二十三条の二の十一第三項の規定による届出は、様式第六十三の二十による届書(正副二通)を厚生労働大臣に提出することによつて行うものとする。
3 前項の届書には、医療機器等承認取得者の地位を承継する者であることを証する書類を添えなければならない。 →(厚生労働省通知にて示されている)
(平26厚労令87・追加、令2厚労令155・一部改正)

【通知】
〇S60/06/29薬発658「薬事法施行規則の一部を改正する省令の施行等について」←承継

2 外国製造医療機器特例承認の場合

 上記の法第23条の2の5と異なり、承認取得者は外国法人であり、国内の製造販売業者ではないことに注意が必要です。

【法律】
(外国製造医療機器等の製造販売の承認) )
第二十三条の二の十七 厚生労働大臣は、第二十三条の二の五第一項に規定する医療機器又は体外診断用医薬品であつて本邦に輸出されるものにつき、外国においてその製造等をする者から申請があつたときは、品目ごとに、その者が第三項の規定により選任した医療機器又は体外診断用医薬品の製造販売業者に製造販売をさせることについての承認を与えることができる。
2 ~6 略
(準用)
第二十三条の二の十九 外国製造医療機器等特例承認取得者については、第二十三条の二の九から第二十三条の二の十一まで及び第二十三条の二の十五第二項の規定を準用する
(平二五法八四・追加)

【施行規則】
(準用)
第百十四条の八十一   法第二十三条の二の十七第一項又は同条第五項において準用する法第二十三条の二の五第十五項の承認については、第百十四条の十八、第百十四条の二十から第百十四条の二十六まで、第百十四条の二十八及び第百十四条の三十二から第百十四条の四十六までの規定を準用する。この場合において、第百十四の二十二の四第一項中「様式第二十二の二」とあるのは「様式第五十四の四」と、第百十四条の二十四第一項中「様式第六十三の九」とあるのは「様式第六十三の二十三」と、第百十四条の二十六第一項中「様式第六十三の十」とあるのは「様式第六十三の二十四」と、第百十四条の二十八第一項中「様式第六十三の十一」とあるのは「様式第六十三の二十五」と、第百十四条の三十三第二項中「様式第六十三の十三」とあるのは「様式第六十三の二十六」と、第百十四条の三十四第一項中「様式第六十三の十四」とあるのは「様式第六十三の二十七」と、第百十四条の三十七第三項中「様式第六十三の十五」とあるのは「様式第六十三の二十八」と、同条第六項中「様式第二十七の二」とあるのは「様式第五十八の二」と、第百十四条の三十八第二項中「様式第六十三の十二」とあるのは「様式第六十三の二十九」と、第百十四条の三十九中「様式第六十三の十七」とあるのは「様式第六十三の三十」と、第百十四条の四十四第二項中「様式第六十三の十八」とあるのは「様式第六十三の三十一」と、第百十四条の四十五の二第一項中「様式第六十三の十九の二」とあるのは「様式第六十三の三十一の二」と、同条第二項中「様式第六十三の十九の三」とあるのは「様式第六十三の三十一の三」と、第百十四条の四十五の七中「様式第六十三の十九の四」とあるのは「様式第六十三の三十一の四」と、第百十四条の四十五の九第一項中「様式第六十三の十九の五」とあるのは「様式第六十三の三十一の五」と、同条第三項中「様式第六十三の十九の六」とあるのは「様式第六十三の三十一の六」と、第百十四条の四十五の十中「様式第六十三の十九の七」とあるのは「様式第六十三の三十一の七」と、第百十四条の四十五の十四第一項中「様式第六十三の十九の八」とあるのは「様式第六十三の三十一の八」と、第百十四条の四十五の十五第二項中「様式第六十三の十九の九」とあるのは「様式第六十三の三十一の九」と、第百十四条の四十五の十六第一項中「様式第六十三の十九の十」とあるのは「様式第六十三の三十一の十」と、同条第二項中「様式第六十三の十九の十一」とあるのは「様式第六十三の三十一の十一」と、第百十四条の四十六第二項中「様式第六十三の二十」とあるのは「様式第六十三の三十二」と読み替えるものとする

【通知】
(平26厚労令87・追加、令2厚労令155・一部改正)
〇H10/03/30医薬発318「薬事法施行規則の一部を改正する省令の施行等について」 ←承継・外国(法改正により、外国特例承認⇔外国特例承認の承継ができるようになった。)

3 製造販売認証の場合

【法律】
(指定高度管理医療機器等の製造販売の認証)
第二十三条の二の二十三 厚生労働大臣が基準を定めて指定する高度管理医療機器、管理医療機器又は体外診断用医薬品(以下「指定高度管理医療機器等」という。)の製造販売をしようとする者又は外国において本邦に輸出される指定高度管理医療機器等の製造等をする者(以下「外国指定高度管理医療機器製造等事業者」という。)であつて第二十三条の三第一項の規定により選任した製造販売業者に指定高度管理医療機器等の製造販売をさせようとするものは、厚生労働省令で定めるところにより、品目ごとにその製造販売についての厚生労働大臣の登録を受けた者(以下「登録認証機関」という。)の認証を受けなければならない。
2 ~8 略
(承継)
第二十三条の三の二 第二十三条の二の二十三の認証(以下「基準適合性認証」という。)を受けた者(以下この条において「医療機器等認証取得者」という。)について相続、合併又は分割(当該品目に係る厚生労働省令で定める資料及び情報(以下この条において「当該品目に係る資料等」という。)を承継させるものに限る。)があつたときは、相続人(相続人が二人以上ある場合において、その全員の同意により当該医療機器等認証取得者の地位を承継すべき相続人を選定したときは、その者)、合併後存続する法人若しくは合併により設立した法人又は分割により当該品目に係る資料等を承継した法人は、当該医療機器等認証取得者の地位を承継する。 →相続・合併・分割
2 医療機器等認証取得者がその地位を承継させる目的で当該品目に係る資料等の譲渡しをしたときは、譲受人は、当該医療機器等認証取得者の地位を承継する。 →契約による譲渡
3 前二項の規定により医療機器等認証取得者の地位を承継した者は、相続の場合にあつては相続後遅滞なく、相続以外の場合にあつては承継前に、厚生労働省令で定めるところにより、登録認証機関にその旨を届け出なければならない。
(平二五法八四・追加、平二八法一〇八・一部改正)

【施行規則】
(承継の届出)
第百十八条の二 法第二十三条の三の二第一項の厚生労働省令で定める資料及び情報は、次のとおりとする。
一 法第二十三条の二の三第一項又は法第二十三条の二の四第一項の登録の申請に際して提出した資料 →(製造業の登録)(医療機器等外国製造業者の登録)
二 基準適合性認証の申請に際して提出した資料及びその根拠となつた資料
三 法第六十八条の二十二第一項の規定による生物由来製品に関する記録及び当該記録に関連する資料 →(生物由来製品に関する記録及び保存)
四 製造管理又は品質管理の業務に関する資料及び情報 →(QMS)
五 製造販売後安全管理の業務に関する資料及び情報 →(GVP)
六 その他品質、有効性及び安全性に関する資料及び情報 →(一切の資料)
2 法第二十三条の三の二第三項の規定による届出は、様式第六十八の五による届書(正副二通)を登録認証機関に提出することによつて行うものとする。
3 前項の届書には、医療機器等認証取得者の地位を承継する者であることを証する書類を添えなければならない。
(平二六厚労令八七・追加、平二九厚労令二・一部改正)

【通知】
〇H26/09/25薬食機参発0925_1「医療機器及び体外診断用医薬品に係る認証の承継手続について」 ←承継・認証(平成17年から26年までは認証に承継制度はなかった。)

4 製造販売届書(一般医療機器)の場合

 一般医療機器の「医療機器製造販売届書」には、法律で定められた「承継」制度はありません。その製品の製造販売を引き継ぐ医療機器製造販売業者が新たに「医療機器製造販売届書」を提出する必要があります。

5 承継制度が利用できない場合の製造販売承認の引継ぎ

 製造販売承認を引き継ぐ会社が、下記通知により改めて承認申請を行うことにより運用されています。
承継制度と同様に一切の資料の引継ぎと、新規承認を受けた際には、従来の承認を整理することが必要です。

【通知】
S62/09/21薬発821「医薬品等の製造承認、輸入承認及び外国製造承認の取扱いについて」 〇T
S61/03/12薬発238「医薬品等の製造(輸入)承認の取扱いについて」 〇T

6 製造販売承認申請中、一部変更承認申請中の場合

 承認されていないので承継制度の対象ではありません。
 申請中の承認申請書については別法人への引継ぎが認められる場合もありますので、事前に承認権者(厚生労働省)に個別に確認が必要です。

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