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薬学部個人ノート「医薬品開発学」

 今回は、「医薬品開発学」の、私個人のノートを一気に載せます(医薬品開発学の全てを網羅しているわけではありません)。ポイントが分かりにくい科目なので、出来るだけ焦点を絞ってサクサク読めるよう工夫しました。
 特に工夫したのは、素人の私でも理解できる表現と説明です。なんとなく分かる、ではなく、「確実に分かるし覚えやすい」を心がけました。
 どなたかの参考になればとても嬉しいです(途中から有料になります)。

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医薬品開発学
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目次

<1>概要

<2>新薬開発

<3>治験

<4>薬価

<5>薬事関係法規

<6>ジェネリック医薬品

<7>新しい創薬

<8>医療倫理

<9>製造と承認審査

<10>品質管理・保障

<11> 医療機器

<12>創薬の歴史

<13>薬害

<14>特例承認

<1>概要

1)医薬品の定義:日本薬局方に収められている物。疾病の診断・治療・予防を目的とされる。
医薬品の3要素:有効性・安全性・品質

)医薬品の特性
・生命に直結している事(有効性・安全性)
・公共性がある事(公共制度・公定価格)
・高品質である事(品質基準)
・使用において緊急性を求められる事(緊急時の安定供給)

3)新薬開発のステップ
1 研究開発:<基礎試験(非臨床試験)動態・薬理・毒性・製剤化>➡臨床試験(治験)
2 許認可:<製造・輸入・承認申請・審査>➡承認・薬価収載
3 市販後:市販後調査➡再審査・承認

*新薬開発にかかる費用:300~500億円、期間9~17年
成功率:3万分の1
全産業の中で、医薬品研究開発費が一番高い(1位)


4)売上上位100位以内に入る医薬品数の、国籍別順位
*バイオ医薬品:日本は2品目で5位(1アメリカ 2スイス 3デンマーク 4ドイツ) 
*化学合成医薬品:日本は7品目で2位(1アメリカ 3イギリス)    (全医薬品におけるバイオ医薬品比率は上昇しており、現在約53%)

5)日本製の名薬
セファメジン(感染症薬)・リュープリン(前立腺がん)・メバロチン(高脂血症)・ハルナール(排尿障害)・プログラフ(免疫抑制剤)・クラビット(感染症)・アリセプト(抗痴呆薬)・アクトス(糖尿病薬)       

6)世界売上100位内の日本製の薬
3位オプジーボ 27位トリーメク 31位ジレニア 58位アクテムラ59位テビケイ 87位クレストール 90位リュープリン 91位ラツーダ

7)研究開発型企業2種
1 モジュラー型(組み合わせ):代表例はコンピューター・自動車企業。

2 インテグラ型(すり合わせ):代表例は製薬企業。
特徴➀成功率の著しい低さ。新薬の成功率は0.003%
➁開発期間の長さと費用の多さ(9~17年で300~500億円)   
③成功率の低さの理由は、1つパーツが新しくなると0から設計やり直しになるから

8)日本の医薬品産業の特性
1 医薬品は、輸入額のほうが多い(輸出額が低く、輸入額が高い)                 2021年度の「輸入額―輸出額」は約3億3千万円。

2 医療技術は、導出のほうが多い(技術の導出が多く、導入が低い)                  2018年度の「導出―導入」は約2千7百万円。

9)公的医療保険3種類
*被用者保険:健康保険(組合の無い企業従業員)・組合健康保険(組合のある企業従業員)・船員保険・日雇健康保険・共済組合(公務員・教員)・自衛官診療証

*地域保健:国民健康保険(個人事業や無職者)・国民健康保険組合(同地区同種の業務者)

*後期高齢者医療制度:75歳以上から。市町村が運営。


10)医療費の負担額内訳
療養の費用の負担内訳:公的医療保険7割、自己負担額3割
療養とは、診察・薬剤・治療材料・処置・手術・入院・療養の全てを指す。

11)医薬分業率
基本的に上昇してきたが、鈍化し、21年度減少に転じた(2019年76%、21年度は75%)

12)全医薬品に対するジェネリック医薬品の割合(国別
2017年度 日本66%・アメリカ92%・ドイツ87%・イギリス78%・フランス70%

13)日本におけるジェネリックの目標値と推移。
2017年度:目標値70%以上。実際の数値も70%。
2020年度までに:目標値80%以上。実際の数値は2021年度で79%とほぼ達成。

14)医薬品生産金額の推移
令和元年 
生産額:9兆5千万円。医療用医薬品の割合は9割(一般医薬品1割)    
令和2年
生産額:9兆3千万円。医療品医薬品の割合は同じく9割。

15)医療費
令和3年 44兆円

<2>新薬開発

・新薬開発の流れ:
基礎調査→非臨床試験→臨床試験(治験)→承認申請→承認→市販後調査→再審査→承認

1)非臨床試験
・非臨床試験で行う事:
毒性検査・製剤化研究・安定性・薬効薬理・薬物動態
(全てGLP適用)

◇毒性検査
一般毒性
特殊毒性:生殖発生試験(出生後の母胎への影響も含む)
遺伝毒性(変異原性試験)
がん原性試験(服用が半年以上orがん原性懸念ありのもの)
依存性試験
生殖発生試験:毒性因子への感受性は、曝露を受ける時期に左右される。時期①妊娠前~妊娠初期 ②胎児の器官形成期 ③周産期~授乳期

・遺伝毒性試験(変異原性試験):代表的なもの3つ
1)細菌を用いる復帰突然変異試験:in vitro試験
2)小核試験(染色体異常):in vivo試験
3)トランスジェニックマウス変異原性試験:両方。
*in vitroとは、生体外で行われる実験。
In vivoとは、生体内で行われる実験。

・がん原性試験:
全ての薬にやるわけではない。服用が長期にわたる薬(半年以上)か、がん原性が懸念される薬にのみ、行う。試験薬を、長期間、哺乳動物に投与してがん原性の有無を調べる。


◇製剤化研究(CMC試験)
・CMC:化学・製造・品質管理のこと
・用語整理:
医薬品→承認を受ける「製剤そのもの」のこと
原薬→医薬品の中の「有効成分」部分
原体→医薬品から原薬(有効成分)を抜いた残り部分のこと

・原薬の規格試験項目:薬局方の一般試験法に準拠
性状・確認・純度・定量・物理化学生物学的性状・粒度分布・結晶多彩・光学活性・水分・微生物限度・無菌・エンドトキシン


◇安定性試験
・一般・冷蔵・冷凍ごとに、それぞれ温度と相対湿度が設定され、それが3種類ある。

長期安定性試験:一般25(30)±2℃ 60(65)±5% 冷蔵5±3℃ 湿度設定なし冷凍―20±5℃ 湿度設定なし

加速試験:一般40±2℃ 75±5% 冷蔵25±2℃ 60(65)±5% 冷凍なし

苛酷試験:光曝露・凍結融解・加速試験+10℃高くなる試験など


◇臨床研究2つ
・非臨床試験の後、行われる試験は、以前は「臨床試験(治験)」のみだったが、新しく「特定臨床研究」が出来た。
・「臨床研究(治験)」は、GCPに基づき、新薬の承認申請を目的としたもの。「特定臨床研究」は、GCPに基づかず、新薬承認申請を目的ともしない。


◇特定臨床研究
・「製薬企業から資金提供を受けた臨床研究」か、「未承認・適応外の医薬品の臨床研究」かの、どちらかである。(両方の条件を満たしている必要はない。片方だけでもよい)
・「臨床研究法」に基づき実施。
・「実施計画」を作成して厚生労働省に提出し、「認定臨床研究委員会」の審査を受ける。
・研究の信頼性を確保する為、「利益相反」の開示がある。

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