好き

友人の恋バナを聞きながら、ふと私に答えられることはあるのだろうか、と疑問に思った。ちょっと聞いて〜と言って友人がしだしたその話は本当にただ聞いているだけでいいのか。何か気の利く言葉の一つや二つを絞り出そうとしても何も出てこなかった。

私より二歳下の友人は今気になる人がいると言う。仲を深めるために一緒に遊びに行きたいらしい。分かる。そこまでは分かる。私も仲良くなりたいなと思う人はいるし、どうやったらより親しくなれるだろうかと模索するが、コミュニケーション能力が著しく低いため結局うまくいかないことが多い。私の友人も本人曰く口下手なようで、その気になる人とはうまく会話ができないらしい。だからといってのんびりもしていられない、友人の気になる人は今年高校を卒業してしまうらしいのだ。そこで友人は告白してみようと思っていると言う。分からない。途端に分からない。なぜ、お付き合いと言う関係にしたいのかが分からない。何故だ。

私も高校時代には周りから「好きな人はいるの？」と半ば強制的に好きな人を作らされていた。私は親切だとか尊敬する人や個人的に容姿の美しいと思う異性の名前を挙げてはみたが、それは好きには変わりなくてもが周りの求める好きとはどうやら違う様だった。私はお付き合いという関係、恋人同士となって、友人たちから距離を取る様になる人たちを見て悲しく思っていた。どうして皆そうなりたがるのか。私は女と男ではなくて、女の子だった時の、もしかしたらその前の子供だった時のあの恋愛などとは無縁に過ごせていた時期を今も尚、求めているのかも知れない。私は好きの感情がわからない以前に、分かろうとも知ろうともしていないんじゃないかと思った。

結局、そうなんだ〜とか、頑張れだとかを繰り返しているうちに友人は話し足りたようで、私のことを聞き上手と持ち上げたりと満足そうにしていた。私がもしあなたの言う好きの気持ちが分からないなんて言ったら、どんな顔をするのだろうか。