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暮らしの薬学【入浴剤】~④入浴の効果について

冬至には、ゆず湯に入ると風邪をひかないと言う習わしがありますよね。ゆずは生のままお風呂に浮かべますが、果皮に含まれるクエン酸やビタミンCによる美肌効果もあると考えられています。これも入浴剤の一つですね。

美肌効果

入浴による3つの効果


入浴剤の成分でいろいろな効果がもたらされる(参照:③入浴剤の選び方と使い方)ことがよくわかりましたね。そもそも、お風呂に入る、あたたかいお湯に浸かることにより体にどんな作用があるのでしょうか。入浴の3つの効果について説明します。

1つ目は、体が温まる作用(温熱作用)があります。温かいお湯そのものが血管を広げて血行を良くし、その上、新陳代謝も活発にして老廃物や疲労物質の排出を促します。
お湯の温度には好みがありますが、一般的にぬるめのお湯(38〜40℃)は副交感神経が働いて気分をリラックスさせる作用があり、熱めのお湯(42℃)は交感神経が働いて気分をスッキリさせ、活動的にする作用があります。

2つ目は、お風呂に入ることによって水の圧力(水圧作用)を受けることです。水の中で胸部に水の圧力を受けると、肺の横隔膜を押し上げ、肺の容量が小さくなることで空気の量が減っていきます。その減った空気を補うために呼吸の数が増えて、心肺機能が高まります。お風呂に入ったら、ふ~っと深呼吸したくなりますよね。

3つ目は、浮力作用で体が軽くなることです。水の中では浮力が働いて、体重は空気中に比べて約9分の1程度まで軽くなります。座っていても立っていても筋肉や関節に体重がかかっていますが、水中ではその負担が軽くなるため、筋肉疲労などが軽減され、気分もリラックスします。ですから運動して汗をかいた後のお風呂って気持ちいいですよね。
しかし、運動直後は、動かした筋肉に血液が集中し、疲労物質を早く排出するように働いているので、すぐに入浴してしまうと、身体全体に血液が分散してしまって疲労回復が遅れると考えられています。運動後は、30分程度休んでから38℃くらいのぬるめのお風呂に入るといいと言われています。

Q.一番風呂はお年寄りによくないというのは本当ですか?

さら湯(淡水)浴は高齢者にはよくないと言い伝われていますね。さら湯、つまり沸かしたての一番湯は、水質の成分(硬水成分→カルシウム、マグネシウム)が熱の伝わりを高め、浸透圧の関係でうるおい成分が肌から取り去りやすくなり保水機能が低い高齢者や肌が弱い人、乾燥肌の人は肌のかさつきが強くなります。また、一番風呂がピリピリ感じるのは水道水に含まれる塩素が皮膚を刺激するためです。このピリピリ感は血圧上昇を招く場合もあり、そのように言われていたのでしょう。一番風呂に入った人の皮膚にこれらの成分が付着しますが、それ以降に入った人は、その成分が少なくなって、お湯がまろやかになり刺激が少なく感じます。一番風呂にみられるこのような状況を改善するために、塩素除去の製品があります。または、入浴剤を使用するのもおすすめです。

もっと勉強したい人に ~ 参考リンク・参考図書


入浴剤のおすすめはどれ?入浴剤の種類と特長について(アース製薬)

<参考図書>
入浴の事典
お風呂の達人  ―バスクリン社員が教える究極の入浴術―

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<この記事を書いた人・監修>
藤田知子
京都薬科⼤学卒業後、メーカー勤務を経て、ドラッグストアでOTC医薬品販売から処⽅箋調剤など薬剤師業務 に従事。“薬剤師は町の科学者”をテーマに薬系新聞に寄稿、「ドラッグストアQ&A」(薬事⽇報社)を編集。