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民間医療保険って役に立つ?~薬局とお金の話⑦

日本では民間の医療保険に入っている方が非常に多いです。入院や通院をサポートしてくれるもの・休業補償のついているもの・女性疾病や先進医療など特約がついているもの…さまざまや医療保険があります。

しかし医療保険の特徴よりも、まずは医療保険と生命保険の違いについて知った上で公的医療保険でカバーできる部分を理解してから、医療保険の選び方を薬剤師でありファイナンシャルプランナーのgorisanが説明したいと思います。


<医療保険と生命保険の違い>

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入院や手術など治療費の補償をしてくれる医療保険に対し、死亡や障害などを生命の補償してくれるのが生命保険です。本来、別々の保険ですが日本の医療保険の多くは生命保険と医療保険が組み合わせられたセット商品が多いです。

確かにセットになっていれば、ひとつの保険で治療費の補償と生命の補償ができますが、一時的に必要となる治療費と残された家族のために必要となるお金では、保険に入る意味が大きく異なります。

医療保険が必要となるのは、入院や手術などで突然お金が必要となるリスクに備えたい場合です。しかしこれは、公的医療保険でかなりの部分をカバーすることができます。詳しくは後述しています。

生命保険が必要となるのは、自分が死亡もしくは障害により生活が困難になったときに、残された家族にお金を遺したい場合です。こちらも、遺族年金や障害者手当などの公的制度である程度はカバーできます。


<公的医療保険でカバーできる部分>

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日本では公的医療保険を活用すれば、医療費の7割以上は国が負担してくれるので実際に支払う医療費は3割以下です。高齢者になれば1~2割になりますし、公費を利用すれば全額国が負担してくれるケースもあります。

そのため民間医療保険は、高額の治療費が発生する入院や手術に対して入院・手術への補償がメインとなっていますが、通院の薬物治療はほとんどが対象外となっていることが多いです。

もし医療保険に入らないとすれば、しっかりと病気の予防や薬物治療をして病状を悪化させないことがなにより重要です。しかしそれでも、突然の事故や病気のリスクはもちろんあります。

その場合には高額療養費制度を活用すれば治療費は月額10万円を超えることはほとんどありません。ただし、収入が高ければ高いほど負担額は増えるので、高収入の方ほど民間の医療保険に加入する意味はあるのかもしれません。

入院中の収入減少についても傷病手当金を申請すれば、過去12ヶ月の平均給与の2/3相当の額を最大1年6ヶ月のあいだ受け取ることができるので、完全に無収入となる訳ではありません。


<医療保険の選び方>

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では民間の医療保険に入る必要は全くないのか?と言われれば、そうではなく一部メリットはあると思います。それは、公的医療保険でカバーできない先進医療などの部分です。

先進医療など保険適用外の治療(レーシックやインプラント、一部の抗がん剤など)が必要となった場合に医療保険でカバーできると非常に助かりますので、入院や手術の補償を最低限に抑えて先進医療特約をつけておくとよいかもしれません。

そして医療保険は生命保険とセットになっていない単独型で、掛け捨てタイプの保険料が安いものを勧めます。もし、生命保険も必要である場合は、100%積立型の投資商品を選びましょう。

株式投資などと比べると利率は低いですが生命保険は死亡保障のついている積立貯金のようなものです。減税制度もあるので、老後保障のための個人年金やidecoと組み合わせて死亡のリスクや老後に備えるために活用してください。

また医療保険や生命保険の保険料は、保険料の総額を現在から平均寿命までの期間で割ったものなので、支払総額は何歳からでも基本的に変わらず、年齢が高いほど保険料は高くなります。

逆に前期高齢者や後期高齢者になると、公的医療保険の自己負担額は1~2割になるので、民間の医療保険に入るメリットはかなり低いと言えるでしょう。自分の年齢に応じて加入するかどうかを検討することを勧めます。


<この記事を書いた人>
gorisan
地方の小規模チェーン調剤薬局の薬剤師。薬剤師歴12年。3児の父。認定実務実習指導薬剤師。FP技能士3級。