暮らしの薬学【医療機器・医療ガーゼ/医療脱脂綿編】~①医療ガーゼ/医療脱脂綿も医療機器?
~身近なガーゼ・脱脂綿~
ミズホ「子供たちが赤ちゃんの時、おむつを交換時には「おしりふき」、食事の時は「お口ふき取りティッシュ」、目やにとか気になったら「清浄綿」といろいろ、ウエットな紙を使ってたけど、その液がなんなのか知らずに使ってたなぁ」
薬剤師ナナコ「 “暮らしの薬学~医療機器①絆創膏”でも紹介したように、見た目は機器?って感じがしない“脱脂綿”と“ガーゼ”も医療機器の分類になりますよ。身近に使っている“おしりふき”とか“清浄綿”などいろいろあるので調べてみましょう」
一般医療機器としての衛生材料について
医療機器の定義など、以前【医療機器①絆創膏編】~①絆創膏も医療機器?で説明しました。絆創膏には、治療や予防に使用することを目的として承認を受けた製品が“医療機器”、そして治療や予防を目的としたものではない、つまり皮膚を摩擦から守る働きをする“雑貨品(衛生医療雑貨とも呼ばれる)”がありましたね。
救急絆創膏のように、機器のイメージにはほど遠いのに“一般医療機器”とされている衛生材料が他にもあります。ここでは、医療脱脂綿と医療ガーゼについて説明します。
医療脱脂綿の定義は、「綿花を脱脂・漂白して成形したもの」で、医薬品を塗布、患者の体表から 少量の体液を吸収など、医療目的に使用されます。医療ガーゼの定義は、「綿またはその同属植物の種子の毛より得た純綿糸を平織した原布を脱脂し、漂白したもの」で、その用途は「外科切開口、皮膚創傷の出血の抑制、液の吸収、擦過傷、乾燥または汚染からの器官の保護」です。
脱脂綿もガーゼももともとは医薬品の扱いでしたが、第14改正日本薬局方第2追補によって日本薬局方から削除され、平成17年4月1日からは一般医療機器に区分変更されました(現在は「医療用品(4)整形用品」と表示)。医療ガーゼは、綿糸を平織りにした布で、その形状によりタイプⅠ〜タイプⅣの4種類に分類されます。標準幅及び標準重量が以下の表のように規格が定められています。
そして、滅菌して1枚1枚個包装にされている「滅菌」と表示されているガーゼには、上記の綿糸を平織りにした医療ガーゼと“医療用不織布”の2タイプがあります。
さらに、医療脱脂綿をポリエチレンネットシートで挟んで整形したパットがあります。傷につきにくく、肌に優しい衛生材料で“綿状創傷被覆・保護材”と称され、これも医療機器です。これらの医療機器は皮膚創傷の保護、出血抑制など、傷口に直接使用するので清潔でなければならず、洗濯したとしても、再使用はできません。
Q. マスクやガーゼの「不織布」ってなんですか?
不織布は、文字通り「織らない布」で、原料となる繊維を織ったり編んだりすることなく化学的、物理的手法を用い繊維同士を結合あるいは交絡させてシート状にしたものです。この布は、目が細かいため、綿糸と比較してウイルスを通しにくいと言われ、コロナ渦では「不織布マスク」が推奨されました。医療ガーゼには、綿糸で作られたもの、不織布で作られたものがありますが、これらを見分けるには、パッケージに「一般医療機器 医療ガーゼ タイプⅢ」と書かれていると綿糸で「一般医療機器 医療用不織布」と書かれていると不織布タイプとなります。ガーゼには“プライ”という表示をみますが、これは、12プライなら12層になるように折り合わせているという意味で、広げて使用することもできます。
もっと勉強したい人に ~ 参考リンク
●やさしい医薬品医療機器等法―医薬品・体外診断用医薬品・再生医療等製品―(じほう)
https://www.jiho.co.jp/Portals/0/ec/product/ebooks/book/47004/47004.pdf
●滅菌ガーゼの種類や使い方、選び方などを解説します(一般家庭向け)(株式会社名優)
●医療ガーゼの定義(一般社団法人 日本衛生材料工業連合会)
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<この記事を書いた人・監修>
藤田知子
京都薬科⼤学卒業後、メーカー勤務を経て、ドラッグストアでOTC医薬品販売から処⽅箋調剤など薬剤師業務 に従事。“薬剤師は町の科学者”をテーマに薬系新聞に寄稿、「ドラッグストアQ&A」(薬事⽇報社)を編集。