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失敗の振り返り 〜働き方改革推進記録 vol.9〜

 こんにちは、株式会社シグナイト COO 兼 Tオケ自称マネージャーの山田です。私自身は2001年創業時から約20年間、ずっとシグナイトという会社を切り盛りしていて、良い面、悪い面含めてさまざまな経験をさせていただきました。良い面と悪い面双方兼ね備えた事例としては、2014年から取り組んだ働き方改革があります。今回はこの場をお借りして、どのように働き方改革を進めてきたかを何回かに分けてご紹介したいと思います。

 終盤を迎える今回は、失敗の振り返りを行いたいと思います。過去8回の記事で働き方改革にまつわるデジタルツールの導入について触れてきましたが、生産性の向上や業務効率改善、DXに欠かせないITツール、デジタルツールの失敗例をご紹介したいと思います。失敗事例の紹介に伴い、具体的なツール名も挙がってきますが、決してツール自体が悪いということではありませんので誤解なきようお願いします。多くのツールが私自身あまり目的を明確化しきれておらず、社内全体に使い方や運用ノウハウを十分に浸透させることができずに失敗を引き起こしてきました。

ツールを導入しただけで売上が上がると信じ込んでいた愚かな失敗例

 マーケティングツールとして、最初に導入したのが Salesforce でした。当時営業を率いていた私は、なんとか商談の流れをシステム化して円滑に受注まで漕ぎ着けたいと必死でした。Salesforce は商談の流れをステータスごとに登録できるセールスプロセスを主軸にしたツールで、セールスプロセスのイロハのイの字すら知らずに直感と熱意だけで受注に漕ぎ着けていた当時の私にとって、Salesforce は導入しただけで売上を達成してくれる夢のようなツールだと信じ込んでいました。結果、当然のごとく売上は立つはずもなく失敗に終わりました。Salesforce などのSFA(Sales Force Assistant = 営業管理システム)を導入する前に、きちんとセールスプロセスの意味を理解し、実践し、確実に成果が出ることを実証してから、それらを「より的確に生産性高く行うために Salesforce が必要だよね」という議論をしていたら、この失敗は無かったでしょう。

明確な運用方法を打ち出せず、中途半端な定着にしか至らなかった失敗例

 Google Apps(現 Google Workspace)に出会うまでは、Dropbox というクラウドストレージと Evernote という共有できるドキュメントを使っていました。現在は Dropbox が Google Drive、Evernote が Googleドキュメントに変わったのですが、それまではルールが定まっておらず各々がバラバラの使い方をしていたため、使う人と使わない人が明確に分かれていました。社内ではクラウドに懐疑的な見方をする人も居ましたし、コストもかけられないため一部の珍しい物好きのメンバーだけで利用していたイメージがあります。まずは全社に導入するための調査と位置づけて、運用ルールを決めていくための試験的な導入と銘打っていればもう少しスムーズにクラウドツールの導入ができたのではないかと思います。

ツールの運用ができず、ほぼ何もせずに終わった勿体ない失敗例

 自社のプロダクトを人間の手を介さずに AI の力で自動的に見込み客のホームページから問い合わせしてくれる GeAIne というサービスを知り、導入をしました。当時、ちょうどインサイドセールスについて効率的な方法を模索していた最中でしたので、ほぼほぼ二つ返事で導入を決断したのも同然でした。このサービスは、見込み客リストから自動的にホームページにたどり着き、お問合せフォームから問い合わせをかけてくれるという AI + RPA(ロボットによる自動化)です。これだけを見ると直ぐにでも商談が得られそうな錯覚に陥りますが、大事なのは問い合わせフォームに入力する文章です。こればっかりは AI が作ってくれるわけではなく、自分たちで試行錯誤しながらマーケティングを進めていかねばなりません。担当者が忙しくなって試行錯誤ができなくなった瞬間にこのツールは運用できなくなりました。

成果が得られず諦めてしまった失敗例

 テレビCMでもおなじみの名刺管理ツール Sansan。業界をリードする会社がこぞって導入していると知った私はセミナーを受けて、ある機能に着目しました。それは貯まった名刺をカテゴリごとに分け、定期的に営業メールを配信できる機能です。以前もより安価なツールで同じ機能のものを使ったことがあるのですが、着信拒否の相手に送らないように神経を尖らせたり、メールサーバの負荷がかからないよう複数回に分けて送信したりと精神的にも肉体的にも重労働でした。Sansan はそういったことを気にせずメールを送信できるので、まずはメールマガジンとしてユーザーに役立つ情報とともに配信を始めました。ご経験のある方もいらっしゃると思いますが、後々振り返ってみると意外と良い活動をしていたなーと感じる瞬間ってありますよね。恐らくこの活動も時間をかけて試行錯誤を繰り返すことで成果に結びついたと思うのですが、私が営業の担当を外れたのを堺に続かなくなってしまいました。

中途半端に目指したスマートオフィス化の失敗例

 シグナイトの本社は府中市という新宿から京王線で20分ほどの郊外にあるため、クライアントに来てもらうにはそれなりの理由が必要になります。そこで考えたのがスマートオフィス化です。最先端の設備が備わっていて自動的に来客を認識したり、必要なときにライトが点灯したり、IoTを駆使して「機会があったら訪問してみたい」と誰もが思ってくれるオフィスにしたいと考えていました。そうすることで、クライアントとのコミュニケーションが円滑に進み、案件化しやすくなるのではないかと考えたからです。当初は Pepper などのロボットを受付に置くなどのアイデアもありましたが、多くの会社が同様のことをやっていたため、まずはスマートライトの hue と Google Home(現 Google Nest)を使って音声でライトのON/OFF、BGMの再生などを行い、Amazon Echo Spot というディスプレイ付きのスマートスピーカーを受付に置いて来客時の応対を行おうと計画しました。しかし、この計画も hue は高額なため敷地の半分程度しか導入できず、Amazon Echo Spot も1台の試験導入に終わりました。主な原因は導入する理由をメリットとともに明確にして周知徹底しなかったことです。

まとめ

 数々の失敗を通じて、総じて言えることは大半がツールの導入を主軸に進めてきた結果ということです。目的や確実に成果につながるワークフローを生み出した後に、どこの部分が課題となり、どういう解決方法を取り入れたら生産性の向上や業務改善につながるのか、そこを主軸にすべきだったのです。さらには、その主軸を社内の関係者全員がきちんと理解をすることも大切な要素でした。主軸を見失い、ツールの導入から目的や成果を検討してきた手法こそが失敗の大きな要因だったと言えるでしょう。

Photo by
Brett Jordan on Unsplash

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