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今、大学生だったら、絶対「クソが」と言っていたであろう、恩師と呼ぶ気にならないセンセイたち トップ5  (2)

4 オクノ

私の学科の先生たちは、東大と京大出が、半々。みな男。一番若手の先生ひとりが、阪大。

学科の中には、阪大出の先生を、そのことと、若くて一番格下ということで、バカにする雰囲気もあった。

若さ、でならいいが、大学の格付けでというのはいただけない。その時はさほどでもなかったが、今の私は、そういうのは、虫酸が走る。

京大出身の一番年上の先生は、関西弁のねっとりした喋り方をする人で、きついことをよく言うが、関西の言葉に中和されて、聞きやすかった。怒られたり、眉をつりあげたくなるような、問題発言めいたことも、私も他の学生も、寛容に楽しんでいた。

でも、一つだけ、眉をひそめたままにしておこうと決めた思い出がある。

先生の一番上の娘さんが、大学受験をする時期になった。私たちは2年生だった。必修のクラスで、その年の2年生全員を前にして、先生は、「キミら、けっこう頭よかったんやな。」と笑った。

先生の娘さんは、結局、私たちの大学の医学部にすすむことになる。

その時の先生は、娘の進学先を決めるのに、大学のランクづけというものを初めて、丹念に見ることがあったのだそうだ。先生の頃には、偏差値などというものは、概念はもちろん存在するが、学校教育に役立てようという考えは、まだまかり通ってなかった。

なにより、先生自身は京大卒。大学のランクなんか、気にしてなかったろうし、しても東大、一橋、くらいだったろうし。

偏差値を見て、私たちの在籍する学部や学科の位置づけも知った。それが、キミら発言になった。「キミら、こんな大学に来るくらいやから、そんな頭いいとは思うてなかったわ。よかったんやな。」

私は、時々、今の自分の持っている、語彙なり、知識なり、理解なり、発話のスキルなりを持って、人生やりなおせたら、と思うことがある。

この先生の発言は、今の自分だったら、訴えたり糾弾まではしないが、本人に対し、絶対黙っていない。

私はこの先生が嫌いではない。それに、大学の良し悪しとかは、色々なことの差別発言同様、大半の人が、内輪やうっかりで、していると思う。

ただ、実際にその当事者を前にして、冗談でも、たとえ言われた方が笑っても、してはいけないことだと思う。

それに、教員と学生は、上下関係がはっきりある。たとえ学生が笑っていたとしても、下の立場にいるものは、笑ってすませるしか、できることはないではないか。

大学の教員、世の中スベりすぎ。世間知らずはある程度しかたがないのだろう。でも、頭がよければ、何してもいい、というユルさが、私が大学のセンセイで、いちばんがっかりすることだ。


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