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物悲しい、小さい子供のための作品(4) ディズニー映画 「バンビ」

これは、平成前半に、若くなくして親になった私の、子育て中の思い出です。


バンビ

「ダンボ」と同様、ディズニー初期作品の名作「バンビ」も、私はじっくり通して見たのは、子どもができてからです。

私が知らなかっただけなのでしょうが、バンビには親がいたことは驚きでした。母親がバンビが幼い頃に死ぬということも。母鹿は、人間に撃ち殺されました。

人間に追われて逃げるバンビ一家とほかの鹿たち。おかあさんが、人身御供のように、注意を集めようと飛び出し、撃たれて死にます。わかって、したんです、その雌鹿は。そうすることで、自分の子が撃たれる可能性が減る。他の鹿、というより、バンビを救おうとしたのだと思います。

雌鹿が撃たれるシーンは、「ダンボ」の鞭打ちの場面が、影と効果音だけで表されていたように、ダーンという鉄砲の音だけで、表現されていました。見ているうちの子どもには、最初は伝わりませんでした。

2、3回目かに見た時に、上の子は、お母さんが死んだことに気づき、涙していました。人間が撃ったんだよ、人間はひどい、という会話を少しした覚えがあります。

ダンボと通じるのは、母親不在。成長する時、母は、いたら足枷になるのでしょう。いないほうが、成長が促される。

じゃまなんだ。母は。

でも、母が悪とは描かれていない。逆に、母は、子どもキャラが、母というだけで愛し、慕い、そのために自分を高めようとする動機づけ。気高いと言えば気高い。また、いないのだから、当然母は何にもしていないのに、子どもが立派になる。それは、今にして思うと、便利と言えば便利。

母の不在を嘆くかわりに、両作品の子どもキャラはどちらも、人の尊敬や注目を集めるような成長をとげます。勇気があり、人気のある、みんなのリーダー的な存在になります。責任感も持ち、自信もあり、それでいておごらない。明るい。人に好かれる。母がいなかったからこそ育った自立心。ヤケにもならず。曲がった道にもいかず。

うーん。

今回の切ない気持ちは、キャラクターどうこうというより、作品の中の、そういう考えに。親になって日は浅いけど、年齢は結構いっている私は、その考えに、複雑な気持ちになりました。

虎の親は、子供を谷底に落とす、というのは有名です。むかし見たアニメ作品の始まりが、いつもその言葉と崖に立つ虎のシーンでした。バンビの父も、そういう親です。母をなくしたたばかりの、子どものバンビに、厳しい、生きるための掟かなんかの話をしたあと、バンビを放って、どこかに行ってしまう。

この、ふた親の組み合わせ。一匹は、身を捧げてこどもを守る。自分は死んでしまう。もう一匹は、物理的に近くにいられ、スキンシップもできるのに、わざとそれをしない。あえて保護せず、子供と距離をおき、生きることの厳しさを、教えようとする。

なんなん、この親ら?で、なんなん、この製作者の意図は?メッセージは?信条は?心根は?

そのあいだじゃ、いけませんか。子どものためだけど、犠牲にならない。毎日の色々なことに、ちょっかい出したり、かばってやったり、してやったり。私が、この森に住んでいる鹿かなんかの動物だったら、(そうでなくても)、そんな 私の子どもは、きっと、大物には育たないのでしょう。

そして、そんなに注意深く見てなくても気がつくことは、バンビもダンボも、雄なんです。ディズニー映画は、男女別の役割を、あまりにもマンガ的に、単純に、純粋に、うちだし続けたことで、のちに大きな批判を浴びました。男は男らしく。女の子はお姫様らしく、と。バンビもダンボも、その一端だったんですね。

その頃は、ナルトもワンピースも知りませんでしたが、英雄譚の共通点くらいは思い当たりました。たいていの英雄ものは、主人公は男。そして母はいない。みなしご。親とのつながりは、気持ちや思い出の中だけ。または、まったくない。たしかに、親や、強いつながりなんかあったら、好き放題の人生は歩めませんもんね。自分の成功も、100%自分の手柄にならない。

息子には、親、特に母不要論。その方が、男らしく育つから。はいはい。

まあ、ディズニー映画で主役を張るような生き物(人間を含む)は、悲劇と隣合わせで、ドラマに満ちた人生を送っているし、私、正直、ディズニー映画にそれほど入れ込んではいないし。(のちの作品にも、私は一言もふたこともあります。あの、アニメ版「ムーラン」や、目を奪われるくらい面白いと思った「ファンタジア」でさえ。)

バンビとダンボ。それらを選んで、子どもと一緒に見たのは、ディズニーだからでなく、有名な子どものための作品だったからです。見てよかったと思ったし、楽しみました。でも、この2つと「ファンタジア」で、ディズニー作品鑑賞歴は、私には十分でした。今でも、それで十分です。ありがたいことに、うちの子は、のちのディズニー映画には、どれもそれほどハマることなく、いっしょに住む大人の私をほっとさせました。


「バンビ」で、私に一番印象深い場面は、まったく切なくないものです。うさぎの子どもが、初めて会ったバンビに、悪口めいたことを口にしてしまいます。聞きとがめた親うさぎが、たしなめます。

「いいことが言えないんだったら、何にも言わずに黙っときなさい。」

これは、賢母の言葉だと思いました。私も、バンビについては、書いたりしない方がよかったのかもしれません。

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