【ショート•エッセイ】 ふとした思い出 天ぷら鍋
まだ学校に上がる前、天ぷらをあげるしたくをする母を見ていた。油を火にかけて、母は野菜を切りだす。そばで鍋に見入っている私に母が言う。
「熱いから、手を入れたらいけんよ。」
5歳の私はうなずく。すぐにぎゃーっとさけび声。私は小指を鍋にちょっとつっこんでみたのだ。
小学校2年生の時、初めて銭湯に行った。蛇口が2つずつあるのが珍しかった。母は、両方から洗面器に湯をためながら、
「気をつけんとやけどするよ。」と私に言う。
わかった、とこたえる。でも、すぐに、蛇口から出る湯の下に、手