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楽しい気持ちを伝える術はピースサインしか知らない

友人がダンスを習っていると知ったのは割と最近だった。
数少ない友人。優しくておっとりした雰囲気なのでピンとこなかったのだが、今日はじめて彼女の発表会を見に行った。

なんというかこの、文化祭のような熱狂。ステージに誰かが上がる度に応援団が甲高く名前を叫ぶ。ストロボのような照明。四方から放たれる爆音!

今日びライブにも行かないようなヒッキーなので、鑑賞中ずっと鳥肌が立っていた。いや悪い意味じゃなくて、未知の世界で興奮の渦に巻き込まれる高揚感。
キレのあるダンスを披露する彼女たち全員に、ダンスを始めたきっかけがあって、続ける理由があって、このステージにかける思いがある。
んだろうなーと思うと拍手にも熱が入った。

終演後、ロビーで友人の姿を探す。
いつも下ろしている髪をネジネジに結ってパンクな衣装を纏っているから、それらしき人を見つけてもなかなか声をかけられない。
あと当然だが私と違って彼女には友だちが沢山いて、入れ替わり立ち替わり誰かが彼女らしき人に声をかけていた。
ステージ衣装も相まって、遠い世界の人みたい。

でも目があったら彼女はちゃんと私の方に来てくれた。
来てくれてありがとうと言う彼女の瞳は青く透けていた。
私は言葉が拙くて、馬鹿の一つ覚えみたいに「楽しかった、ありがとう」を繰り返す。

ちょっとでも伝わるよう、右手でピースサインをしたまま。


今日の嘘ホント比率は1:9でした。

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