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雨上がりの匂い

今年から社会人となった。会社と家の往復は徒歩である。

今日、会社を出て、雨上がりの道を歩いた。ふと、なにかの匂いがした。

嗅いだことのある匂いというものは、いつまでも覚えているくせに、なんの匂いだったか、どこでそれを嗅いだのかはなかなか思い出せない。それが切ないし寂しい。だが、今日のその匂いは違った。

祖母の家に行った夏休み、雨が上がって少し涼しくなった夕方に、祖母、叔父、叔母、いとこ、父、母、姉、みんなでお墓参りに行ったときの匂いだった。誰かが留守番したりと、フルメンバーでない時もあったが。まさにその匂いだった。

祖母はもういないし、叔父もつい最近死んでしまった。叔父の子どもであるいとこは結婚してしまって、もうあの時のメンバーでお墓参りすることもない。
みんなどんどん参られる側に行ってしまう。そんなに急ぐこともないのに。お花を生ける人もお墓参りの先陣を切る人もいなくなって、誰かが代打に立たなきゃいけない。お供えのお菓子の残りをむさぼる私を諫める人も減ってしまった。

少し悲しくなった。
まだお盆には早い。


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お供え用には、バナナの形の砂糖を固めたお菓子がよく用意されていた。帰り道にそれをバリバリ食べていた私を、姉は何が美味しいの、と冷ややかな目で見つめていた。

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