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羅刹の紅(小説投稿)第七十九話Part2

〇あらすじ

普通を愛する高校生「最上偉炎」は登校中に拳銃を拾ってしまう。パニックになった彼を謎の女「切風叶」が助けるが、町で悪行を繰り返す組織「赤虎組」に命を狙われることになってしまった。それに対抗するため偉炎は親友である「北条優雷」と切風の三人で校内に「一般部」を結成。災厄の日常へと突き進む。
六月、偉炎と優雷は部活を作るには少なくとも三人の生徒が必要であることを突き付けられる。(切風は顧問)そのため偉炎たちは新たな部員として、不登校であるが同級生の「今川雪愛」を勧誘することにした。死ぬ気の説得もあり学校に来た雪愛は一般部に入る代わりに依頼を出した。それは町の教会にある今川家の財宝を探すことであった。そこで偉炎、優雷、雪愛は町にある教会に向かう。ただ、その財宝は赤虎組も狙っていたのだ。同じ場所にいたそれぞれは当然、戦闘状態になってしまう。長時間の末、連携がうまくいった偉炎たちは勝利を収めることができたが偉炎は気絶してしまう・・・そして今川家の財宝は手に入れることができなかった。

〇本編

「・・・ん?」
 偉炎は目を覚ました。彼が目ぼけていなければ視界には学校の保健室の天井が見えていた。そして、起きる前まで教会にいたこともしっかりと覚えていた。
「なんで僕はこんなところに・・・」
 偉炎は独り言をつぶやいた。外ではスズメが平和を告げるようにチュンチュンと鳴いている。
「お?起きたかな?とりあえずおはよう。」
 部屋の外窓が開いていたため風が室内に入ってくる。その風を髪に受けて爽やかに偉炎の安否を確認する切風の姿があった。
「・・・僕はまた気絶していたのか。」
「そうね。教会で倒れた後、私が後始末を頼んだ人たちにここまで送ってもらった。もちろん、優雷や雪愛は無事だ。そして、教会で怪我していた人たちも我々の方で病院まで送った。おそらく問題はないだろうな。」
 いつもの切風ではない。いつもならここで「よっしゃー!今からパーティーだ!ウシャシャシャシャシャ!」とは言い始めておかしくない。それを察することができない偉炎ではない。
「・・・ねぇ、切風。何かあったの?」
「お?ここに来て呼び捨てか・・・まぁ、君とは長い付き合いだからな。これからも呼び捨てでいいよ。」
「どうした?いつもと比べて元気はないけど。」
「いやぁ、そりゃバレるよね。」
 切風はわざとらしく自分の頭を撫でた。
「とりあえず、今の状況を話しておくね。君は一晩ここで寝ていて時刻は午前八時。親御さんには優雷の家に泊まるって雪愛が伝えてくれた。女の子からの連絡だったから君の母はかなり動揺していたらしいけどな。」
「優雷に連絡させなかったのか?」
「彼が人に噓をつける正確でないことは知っているだろ?」
「確かに・・・」
 偉炎はすっと納得してしまった。それにしても彼の中ではどうしても気になっていたことがあった。あの日、確かに赤虎組との戦いに勝利はした。しかし、偉炎たちはまだ今川家の財宝を手にしていないのだ。その結果、雪愛は一般部に入らず任務は失敗したりでもしたらいつ切風が彼の普通を奪うか分からない。現実で目を覚ました彼はそれを思い出すとともに急激に背筋が凍った。
(まずいまずい!もしこのまま任務を達成することができなかったら警軍に捕まってしまうのか・・・!)
 外からは広星高校に登校する生徒たちのにぎやかな会話が聞こえた。その声がさらに偉炎を焦らせる。もし、あの日偉炎が拳銃を手にしていなければ外の声の中に彼も含まれていたからだ。しかし、今彼は学校の保健室で命を削る戦闘を終え身体を休めている。それがどれほど悔しい事だろうか。
「それで今回の件だけど・・・」
 切風は保健室にある冷蔵庫を開きながら淡々と話し始めようとした。しかし、偉炎は緊張のあまり先に口を出してしまった。
「いや!僕も一生懸命がんばった!本当に命を賭けて・・・おかげで赤虎組を教会から排除することもできた・・・今川家の財宝はまだ見つかっていないけど・・・必ず!」
「・・・何を言っているのかな?」
 切風は顔だけを偉炎の方に向けた。それも首を横にひねるのではなく頭のてっぺんが下に来るように動かしているため逆さまの状態で見つめている、純粋に怖い。
「君は結果を出した。それはいい意味でも悪い意味でもない。何かを実行した際には結果が必ず生じる。そしてそれには評価がつきものだ。」
「!!」
 偉炎は血の気が引いた。顔がみるみる青くなっていく。この口調は明らかに怒っている。彼は任務を達成していないという結果を出した。それに対する切風の評価は必ずつきものである。
 校庭では生徒たちが友人や恋路と一緒に次々に登校してくる。それと対照的に保健室には嫌な雰囲気が漂う。
「君は北条優雷と今川雪愛とともに教会に行き今川家の財宝を探している最中、赤虎組と思われる集団に遭遇、教会の関係者に少なからずの被害はあるものの、これを撃破・・・その結果・・・」
 偉炎は息をのむ。

 君は今川雪愛を仲間に入れることに成功した


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