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羅刹の紅(小説投稿)第七十五話

その後、司祭館での戦闘はすさまじいものであった。ただでさえ狭いこの場所であるためそこに展示されている年代物の杯や石像などは結果的に散々なものになってしまった。しかも、凶悪犯の集団であるためか、中には凶暴な男もおり、戦況は混沌の一途をたどった。
「おりゃ!!」
 優雷は持っている自身の持っているやり、「蜻蛉切」を強く振った。それとともに先端に集中している電気が攻撃を受けた相手に追い打ちをかける。さすがにどんな凶悪な罪人でも人が電気に勝てるわけはない。一方、雪愛の方は容赦がない。人の急所という急所を確実にナイフで処理していた。顔、こめかみ、乳様突起(耳の後ろの部分)、みぞおち・・・逆になんでこんなに人の急所を知っているのか怖くなるぐらいだ。彼女の場合、人を殺めるのに心の迷いはないようだ。こういう場面ではありがたいが、そんな人間が数時間前まで同じ学校で授業を受けていたと思うとゾッとしなくもない。最後に肝心の偉炎だが、もちろん誰も撃ちたくないというのが本望だが、そういうわけにもいかない。なので、基本的には優雷や雪愛に隠れながら戦い、本当に命の危険を感じた時だけ拳銃を撃つことにした。もちろん敵は飛び道具など持ち合わせておらず最も恐れられる存在になっていた。
「なんだこいつら!」
 敵の内の一人がついに本音を漏らした。三対数十人の戦闘ならすぐに勝敗がつきそうだが、今回はそううまくいかない、というより押され気味になっていた。
「普通の高校生じゃない。」
 他の一人も偉炎たちを恐れた。それに対して、偉炎は怒った。
「僕は普通の高校生だ!!」
 そして、偉炎は自身を普通ではないと言った敵に容赦なく弾を撃ちこんだ。何度も言っているが再々度確認する。偉炎は自分が普通ではないと言われることを心の底から嫌がっている。
「・・・あんたもたいがいね。」
 雪愛はため息交じりに偉炎の思考に呆れていた。
「・・・僕は単に平穏な毎日を過ごしたいだけだ。」
「それにしてはかなり派手だと思うけど。」
「普通になるために一旦普通でなくなっているだけ。それよりもこれ以上、この司祭館にいるのは危険だ。大聖堂まで移動しよう。」
 偉炎は次の行動を指示した。
「了解だぜ!!部長!!」
 それに対して優雷は目の前に敵を倒しながら了承した。
 
  あれ?



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