漫画等から創作のヒントを得ること

創作にあたっては、さまざまなものがアイデアの素となる。いろいろと種を仕入れなければアイデアは出なくなっていくだろう。
まず種として漫画を挙げてみたが、創作物には抽象的なものもあれば具体的で極めて分かりやすいものもあり、作品としては子供にもわかる簡明なものを作ることは良いことだが、その発想を得るのに同じようなものを読んでいるだけではだめで、活字や映像といったものが影響を与えることは多々ある。
私が漫画に接する態度は、幼少時と比べると可成り変化している。これはつまり、表面的な表現だけではなく、その奥にある作者の思想を見抜くとか、創作の事情を推し量るとか、そういうことによって自分なりに糧としたいと思うようになったということである。表面的なものを見て感銘を受けたとしても、それを猿真似して自分の作品として発表するのは駄目であるし、換骨奪胎という形で、骨組みのところで参考にするのが望ましいといえる。
また、熱心に視聴している作品であれば、内容を記憶し反芻することもできるし、その過程で満足するとか、逆に不満があれば「どうすれば面白くなるか」と考える種になることもある。
さて、昨今の漫画に関して、基本的に不満を抱えているのだが、そんなことを並べても誰も喜ばないので、自分が接した作品について「こうすればよいのに」という私見を述べるのが良いだろう。
さっそく例を挙げていくと、「新世紀エヴァンゲリオン」に於いては、アスカがストーリーの進行とともに、エリートパイロットとしての矜持のもとで、戦いがうまくゆかずつらい思いをし、「精神崩壊」にまで至るという展開であった。キャラクターの取り扱いとしてはひどいものだと思う。といっても初回放映当時と今では世上の価値観も相当変化していると思うが、アスカが頼れる人が誰もいなくなり閉じこもっていくのは残念であり、皆に認められるためには結果を出すしかないと追い詰められる展開が痛ましい。まあ現代の物語として作り直すとしたら、小さな成功体験を積み重ねて自己承認に至るという、地味ではあるが生き生きと生きられる作品世界を希望したい。
次に「上伊那ぼたん」が挙げられる。この作については、なんとなく「ヤマノススメ」(アニメ)と絵が似ており、影響を受けているのではないか、と気づいたのがきっかけで興味を持った。ただ、この漫画の内容は女子大生らが酒を呑んで百合的関係を匂わせる、といったもので、昨今、若者がアルコール飲料を敬遠する傾向が増している現状に鑑みると、「自分は呑みたくないけれど、若い女の子が酔っ払っているのを見るのは楽しい」という身も蓋もない欲求を満たすものである。それに加えて、百合関係を見るというのも一種の麻酔作用があり、画の魅力がそれを加速させている。本作がどう変わればいいだろうかと考えるに、そもそも百合専門の漫画誌がある一方で本作はそういう雑誌の作品ではない。作画は決して緻密ではないけれど、白く空いている部分もまた配置によっては一種の表現となりうることを示していて、参考になる、とも言えるが、やはりもうちょっと密な作画を求めたいという思いもある。
次は「ユーフォニアム3」であるが、キャラクターやストーリーがなかなか私の好みに合わない、特にこのキャラが好きというのがほとんどない、けれども世上の評価は高い(?)というわけで、なぜだろうと考えてみた。結局それは作品を読解する力の差なのだろう。古来、少女漫画を愛読する男性、という層は一定数いるのであり、「ユーフォニアム」はちょっとどう考えても少女漫画的ではないと私は思っていたものの、それは表面的に美少女が多いからそう思えただけで(つまり男性向けに見える)、内実は少女漫画ではないのかという気がしている。少女漫画を好む層と好まない層が、ちょっと議論を戦わしても、うまくゆかないだろうと思う。もちろん、少女漫画であるかどうか以前に、娯楽作品を楽しむ楽しみ方は人それぞれで、理解できるできないも人それぞれであり、度合いだってスペクトラムになっているものだろう。「ユーフォニアム」は初期からちゃんと視聴してきたのだが、キャラクターの感情表現などに自分とずれを感じ、作品として丁寧にできているものの、この作品のどこが好きかと問われるとあまり好きなところがないかなと思ってしまう。本作のような部活ものの作品を自分が一から創作することを想像すると、まあ活字の形態で作れるかもしれない、でも全国金賞とかの分かりやすい目標を掲げて部員が一丸となる、というような単純な話では通用しないだろう。まあキャラクターに親しみを持てなくても、敢えてそういうキャラと向き合うことによって創作の技術が高まることはあるかもしれない。

というわけで3作品を挙げてみたが、私が創作をするならやはり自分のお気に入りの人物を登場させたい。しかし悪役というかライバルというか、邪魔者も必要である。今のところそういう者をしっかり描く気力というか技量は自分にはない。だが、そのままではいかんと思っている。

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