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World War Zは凄い小説である

World War Z、ZとはZombieつまりゾンビだ。ゾンビものの映画なりゲームなりを一度でも楽しんだことのある人間ならば、もし街中が生きる死者どもで埋め尽くされるような事態になったら、生き延びるためにはどう行動するべきか?などと必ず考えたことがあるだろう。あるいはもしこんなことが起こったら世の中はいったいどうなる?とかだ。

理由はよくわからないが人類には「ゾンビアウトブレイクが起こったらどうなるかをシュミレーションしたい欲求」というのが備わっているらしくなので飽きることなくこれから先もゾンビものは作られ続けるだろう。

この作品は恐るべきリアリティでもってゾンビと人類の戦いを描いた作品だ。

まず注目すべきは、この話は「人類がゾンビとの戦いに勝利した世界」の話であるという点だ。つまり戦いにはケリがついたということだ。

ゾンビと人類の戦いの行く末については放り投げて主人公たちの迎える運命だけを描く、そういう作品も多い。これはこれで面白い作品もたくさんある。

一方でやはりだ、我々は「こんなん人類滅んでおしまいやん・・・」という結末以外の話も求めているのだ。そしてそれは満たされた!人類は勝利したのだ!

アウトブレイク、被害の拡大から戦局の反転にいたる流れが大変に面白い。特に人類がゾンビに対処する術を見出すところが胸熱だ。

というかアウトブレイクの下りがヤバい。noteに部分的に伏せる機能があったら思いっきり書きたい・・・

とりあえず書けそうな範囲で書く

本作品はゾンビ戦争当時を振り返るインタビュー集という形で構成されていて何人もの語り手がそれぞれまったく別の角度から一つの事態を描くというやり方が非常に巧妙だ。いろんな事件が一つに繋がるところとかゾクゾクしましたよ。

それぞれの事件も、語り手の微妙な心理とかがきっちり描かれていて凄いですよ。視線、仕草、表情、沈黙、誇張とか記憶の誤りとか、そういうところまで盛り込んでくるのが大変によくできていて感心した。





あんまり書けそうにないので以下ネタバレ




まずですよ。「発生源中国から輸出された臓器を移植された患者を通じて感染拡大」とか思いつきますか?あなた?

当の中国政府が隠蔽工作のために台湾海峡危機を起こしてCIAがまんまと騙されたとか、世界中の情報を集めてイスラエルが世界最速で対処法を確立するとか、いや分かるけれどもそんな話つくれますかってなりますやん?

インチキ薬を売るロクでもない輩とかそれに乗っかる腰抜けの政治家とかゾンビ相手に役に立たない最新兵器とかゾッとしますやんその怠惰、無能、傲慢、自己正当化。

人類を危機から救う戦略が、軍は撤退して体制を立て直し民間人は見殺しにしろ、っての、正論とかじゃなくて実際にそれがうまくいくのめっちゃリアルじゃないですか。「応援は来るから希望を捨てずに持ちこたえろ」から難民にまとめて毒ガスぶち込んでそれで最大の危機を克服していく下り、ホント胸熱ですよこれ。

犯罪者が孤立地域を支配して手に負えなくなるとかシャベルこそ最強の兵器であるとかゾンビの真似する狂人がヤバいとか

インドの将軍は真の男だしアメリカ大統領も真の男だった・・・

あといっぱい人物いっぱい出てきたけどみんなちゃんと生きた人間してて凄いです。感情移入度が凄いです。

すごかった。まだ上巻しかよんでないけど。


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