周礼20

天官冢宰20
#天官と冢宰と言う役職についての章

酒正:掌酒之政令,以式法授酒材。凡為公酒者,亦如之。
#酒正 (しゅせい):酒の政治的指導を担い、酒の作り方に従って材料を提供する役職です。一般の人が公式の酒を作る場合も同じ手順を踏みます。ここでは、五つの「齊(せい)」と呼ばれる種類の酒を区別し、また三つの種類の酒と四つの飲み物を区別しています。

「齊」と「酒」は、異なる概念を指しています。

「齊(せい)」は、古代中国における酒の種類を指す言葉です。古代中国ではさまざまな種類の酒が存在し、それぞれが特定の製法や特徴を持っていました。例えば、泛齊、醴齊、盎齊、緹齊、沈齊などが五つの齊として挙げられます。これらの齊は、酒の種類や品質、用途に応じて区別されました。

「酒(しゅ)」は、一般的な意味での酒を指します。酒は一般的にアルコール飲料を指し、穀物や果物、蜂蜜などから作られます。酒は人々によって楽しまれる飲み物であり、文化や儀式の一部としても扱われます。古代中国においても、酒は社交や祭り、祭祀の場で使用され、特別な意味を持っていました。

つまり、「齊」は、特定の種類の酒を指し、製法や特徴によって区別される概念です。「酒」は、広く一般的なアルコール飲料全般を指す一般的な用語です。

辨五齊之名,一曰泛齊,二曰醴齊,三曰盎齊,四曰緹齊,五曰沈齊。
#五つの「齊」の名前を明確にします。一つは「泛齊(はんせい)」、二つは「醴齊(れいせい)」、三つは「盎齊(おうせい)」、四つは「緹齊(ていせい)」、五つは「沈齊(ちんせい)」です。

五齊について詳しく説明します。

1,泛齊(はんせい):
 泛齊は、酒の一種であり、その名前は「広がり」という意味を持ちます。泛齊は一般的な酒で、特定の特徴や製法によって分類される他の齊とは異なります。様々な酒材を組み合わせて作られ、広く一般の人々に提供される酒とされています。

2,醴齊(れいせい):
 醴齊は、酒の中でも高級な齊とされています。醴齊は、麦や米を原料として使用し、特別な製法で作られます。醴齊は一般的に色が澄んでおり、香り高く、口当たりが滑らかである特徴があります。王や貴族などの特別な場で提供されることが多かったとされています。

3,盎齊(おうせい):
 盎齊は、酒の一種であり、その名前は「陶器の壺」を意味します。盎齊は特別な陶器の壺に入れられて作られます。この陶器の壺は、酒を保存するための容器として使用されます。盎齊は一般的に古代中国の宴会や祭りなどで使用され、重要な行事や儀式において贈られることが多かったです。

4,緹齊(ていせい):
 緹齊は、酒の一種であり、その名前は「糸のような美しさ」を意味します。緹齊は、特定の製法によって作られ、美しい色と透明感が特徴です。また、緹齊は甘みがあり、口当たりがなめらかな味わいを持っています。緹齊は、贈り物や特別な宴会などで使用されることが一般的でした。

5,沈齊(ちんせい):
 沈齊は、酒の一種であり、その名前は「沈む」という意味を持ちます。沈齊は、古代中国においては最も高級で希少な酒とされていました。沈齊は、特定の製法や技術によって作られ、熟成に長い時間がかかることが特徴です。沈齊は濃厚で芳醇な味わいを持ち、高貴な人々や王族のために作られることが多かったとされています。

 これらの五つの齊は、古代中国における酒文化や社会の階層において重要な役割を果たしていました。それぞれの齊は、異なる製法や特徴を持ち、特定の場や人々に対して提供されることが一般的でした。

辨三酒之物,一曰事酒,二曰昔酒,三曰清酒。
#三つの種類の酒を区別します。一つは「事酒(じしゅ)」、二つは「昔酒(せきしゅ)」、三つは「清酒(せいしゅ)」です。

三つの酒のについて詳しく説明します。

1,事酒(じしゅ):
 事酒は、特別な行事や祭りなどの儀式に使用される酒です。この酒は神聖視され、神々への供物や祭壇での儀式に使用されることがありました。事酒は通常、厳格な製法に従って作られ、特別な材料や手順が用いられます。この酒は、儀式の重要性や尊厳を表現するために使われました。

2,昔酒(せきしゅ):
 昔酒は、古代の伝統的な酒で、歴史的な価値や文化的な意味を持っています。この酒は古代の製法に基づいて作られ、古典的な酒の味わいや特徴を再現することを目指しています。昔酒は、古代の伝統や風習を守り、後世に伝えるために重視されました。

3,清酒(せいしゅ):
 清酒は、透明でクリアな色合いを持つ酒であり、現代日本の清酒にも通じる概念です。清酒は、米を主原料とし、特定の製法に従って作られます。酒造りの過程で麹菌を使い、米のでんぷんを糖に変え、酵母によってアルコール発酵させます。
 
 これらの三つの酒は、古代中国において異なる文化的・宗教的な目的に応じて使用されていました。事酒は神聖な儀式に関連し、昔酒は伝統や歴史に重きを置き、清酒は日常の食事や娯楽に使用されました。それぞれの酒は、特定の特徴や製法によって区別され、古代中国の酒文化の重要な要素でした。

辨四飲之物,一曰清,二曰醫,三曰漿,四曰酏。
#また、四つの飲み物を区別します。一つは「清(せい)」、二つは「醫(い)」、三つは「漿(しょう)」、四つは「酏(い)」です。

四つの飲み物について詳しく説明します。

1,清(せい):
 清は、清涼な飲み物を指します。これは通常、水を基にした飲み物であり、清潔で爽やかな味わいが特徴です。清は、喉の渇きを癒すために頻繁に飲まれ、体をリフレッシュさせるために使用されました。一般的には、水や清らかな湧き水を指すことが多いです。

2,醫(い):
 醫は、薬用の飲み物を指します。これは古代中国の伝統的な医学に基づいて作られた飲み物で、特定の薬草や成分を使用して健康や治癒に効果をもたらすことを目指しています。醫は、体調不良や病気の治療の一環として使用され、特定の症状や病態に応じて処方されました。

3,漿(しょう):
 漿は、稠密な飲み物を指します。これは一般的に、穀物や豆類を煮たり砕いたりして作られます。漿は栄養豊富で、飢えを満たし、エネルギー源となります。また、食事の一部としても摂取されました。種類によっては、甘味があり、香り高い漿も存在しました。

4,酏(い):
 酏は、特殊な目的で使用される飲み物を指します。一般的には、儀式や祭り、特別な祝い事などで提供されました。酏は、特定の材料や製法によって作られ、その特徴的な風味や香りが重視されました。酏は、特別な機会や神聖な儀式に関連付けられることが多かったです。

 これらの四つの飲み物は、古代中国において特定の目的や文化的な文脈に応じて使用されました。清は喉の渇きを癒すために、醫は健康や治療のために、漿は栄養やエネルギー源として、酏は特別な行事や祭りに関連して使用されました。各飲み物は異なる特徴と用途を持ち、古代中国の飲み物文化において重要な役割を果たしていました。

掌其厚薄之齊,以共王之四飲、三酒之饌,及後、世子之飲與其酒。凡祭祀,以法共五齊、三酒,以實八尊。大祭三貳,中祭再貳,小祭壹貳,皆有酌數。唯齊酒不貳,皆有器量。共賓客之禮酒,共後之致飲于賓客之禮;醫酏糟,皆使其士奉之。
#酒の濃さに応じて「齊」を区別し、王や王妃、世子(王の子)が飲む四つの飲み物と三つの種類の酒を調整します。祭祀の際には、五つの「齊」や三つの種類の酒を遵守し、八つの容器を満たします。大祭りでは三度、中規模の祭りでは二度、小さな祭りでは一度酌を行い、規定の量を注ぎます。ただし、「齊」の酒は二度酌を行わず、容器の量に従います。客人に出す酒の礼儀は共同で行い、後継者が客人に酒を振る舞います。薬用の酒や糟(かす)は、担当者によって運ばれます。

凡王之燕飲酒,共其計,酒正奉之。凡饗士庶子,饗耆老、孤子,皆共其酒,無酌數。掌酒之賜頒,皆有法以行之。凡有秩酒者,以書契授之。
#王の宴会や飲み会では、計画に基づいて酒が提供されます。酒正がそれを取り仕切ります。王が士や一般の人に酒を振る舞う場合、酒は共有され、特定の量を注ぐ必要はありません。酒を贈る際には、規則に従って行います。階級に応じた酒は契約書で授与されます。

酒正之出,日入其成,月入其要,小宰聽之。歲終則會,唯王及後之飲酒不會,以酒式誅賞。
#酒正の職務は日々行われ、成果は一日のうちに結果が出し、月単位で要約されます。ただし、年末には全てを振り返る会議が開かれます。ただし、王と後継者の酒の飲み方については会議は行われず、酒のスタイルに基づいて処罰や報酬が与えられます。

酒人:掌為五齊三酒,祭祀則共奉之,以役世婦。共賓客之禮酒、飲酒而奉之。凡事,共酒而入于酒府。凡祭祀,共酒以往。賓客之陳酒亦如之。
#酒人 :五齊と三酒の管理を担当し、祭祀の際にはそれらを共に奉仕し、世婦(せいふ)たちに奉仕させました。また、賓客への礼酒や飲み物の提供も行いました。あらゆる行事において、酒府(しゅふ)に酒を共有して提供しました。祭祀の際には共同で酒を持参し、賓客が持ち寄った酒に対しても同様の取り扱いをしました。

 「世婦(せいふ)」は、古代中国における女性の身分や地位を指す言葉です。具体的には、貴族階級や王室に仕える女性たちを指します。

 世婦は、貴族の家庭や王室で、妻や娘、側室、女官などとして仕える女性たちを指します。彼女たちは、家族や王室の日常の運営や行事、儀式において重要な役割を果たしました。彼女たちは、家族や王室の酒の準備や奉仕、酒人などと協力して祭祀や宴会での酒の提供を行い、また、賓客に対しても酒や飲み物の配膳を行いました。

 世婦の地位は、社会的な階層や家族の地位によって異なりますが、一般的には貴族階級や王室に仕える女性たちであることが特徴です。彼女たちは、家族や王室の儀式や行事において酒の準備や提供、または飲み物の管理や奉仕などを担当し、その役割を果たしました。

漿人:掌共王之六飲水、漿、醴、涼、醫、酏,入于酒府。共賓客之稍禮。共夫人致飲于賓客之禮清醴醫酏糟而奉之。凡飲,共之。
#漿人 (しょうじん):漿人は、共王の六つの飲み物である水、漿、醴、涼、醫、酏を管理する役職であり、これらを酒府に納めました。また、賓客への少量の礼を共に行いました。また、夫人が賓客に対して提供する飲み物である清、醴、醫、酏、糟(かす)も漿人が管理し、提供しました。すべての飲み物は共有されました。

 酒正の四飲と被る部分もありますが、6つの飲み物に関して解説します。

「水」は、一般的な意味での水を指します。

「漿」は、穀物や豆を煮たり砕いたりして作られる稠密な飲み物を指します。具体的には、穀物漿(おかゆのようなもの)や豆漿(豆乳)などが含まれます。

「醴」は、特定の製法によって作られる高級な酒を指します。麦や米を主原料とし、特別な製法で醸造されます。醴は透明で色鮮やかな酒で、香り高く滑らかな口当たりが特徴です。

「涼」は、涼しい飲み物を指します。通常、水や冷たい茶、果汁などが含まれます。暑い季節や温度の上昇に対して涼を感じるために飲まれる飲み物です。

「醫」は、薬用の飲み物を指します。特定の薬草や成分を使用して作られ、健康や治癒の効果をもたらすことを目的とします。古代中国の伝統的な医学に基づいて作られた飲み物です。

「酏」は、特別な目的で使用される飲み物を指します。一般的には儀式や祭り、特別な祝い事などで提供されました。酏は、特定の材料や製法によって作られ、その特徴的な風味や香りが重視されます。

 これらの飲み物は、古代中国において異なる目的や文化的な文脈に応じて使用されました。水は一般的な飲み物として、漿は穀物や豆を使った稠密な飲み物として、醴は高級な酒として、涼は涼しさを感じるための飲み物として、醫は薬用の飲み物として、酏は特別な行事や祭りに使用される飲み物として使用されました。それぞれの飲み物は、古代中国の飲み物文化において重要な役割を果たしていました。

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