アカウンティング
事業活動の定量化
事業活動
資源獲得に必要な資金調達 = B/S の負債と純資産
活動に必要な経営資源 = B/S の資産
価値提供のための活動 = P/L の費用
顧客への提供価値 = P/L の売上
企業は資本を回転させながら成長していく
結果の数値にビジネスの特徴が出る
財務諸表の読み手の関心事
「儲かったのか?」 -> P/L -> 利益
「つぶれる恐れはないか?」-> B/S & C/F -> 支払い能力
事業の定量化のポイント
左右に分けて把握。左側は資金の使途、右側は資金の調達・獲得。
活動を二面的に捉える。
利益を計算するためにボックス図を二つに分ける。
保有しているモノ・債権=資産
今期の収益獲得のための資金使途=費用
株主・債権者から調達した資金や未払金=負債・純資産
今期の事業活動により獲得した売上など=収益
収益と費用の差額が「当期純利益」となり、利益額を利益剰余金として株主から調達した資金と合わせて「純資産」とすることで、貸借対照表(B/S)の左右の合計が一致する。
事業活動の特徴と財務諸表
損益計算書 (P/L)
一年間でどのようにしてどれだけ儲けたか
貸借対照表 (B/S)
事業を行うためにどのようなお金の使い方をしているか
そのための資金をどのように調達したか
キャッシュ・フロー計算書 (C/F)
一年間で現金をどのように増やした(減らした)のか
事業の状況を大枠で捉える際のポイント
大きなものから見る
比較・対比する
P/L: 売上高、営業利益、経常利益、当期純利益
B/S: 総資産、負債、純資産
立場による「良い会社」の定義の違い
企業は資本を回転させながら成長していく
経営者の視点: ROA 重視
傾斜は会社の活動に対し全ての責任を負う立場
総合力・収益性・効率性・安全性・成長性 が適度にバランスしている状態が良い会社の条件
特にROAは資産をどの程度効率的に使って利益を上げているかが分かるので重要指標
会社の規模が小さい場合は、最大の関心事は「資金繰り」で、手元現金や流動資産の確保がポイント
株主の視点:ROE 重視
投資に対する高いリターンを期待するため、配当や将来の成長の原資となる当期利益が株主資本に対してどれぐらいあるかを示す ROE に注目
また、配当や株価のアップの可能性として、収益性と成長性を重視することが多い
従業員の視点:成長性、安全性重視
給与の高さ、成長性、安全性などを気にする
顧客の視点:安全性重視
安定して商品を供給してくれる会社が良い会社
安全性の分析が必要
注文から引き渡しまでに時間がかかる場合、あるいは料金先払いが一 般的な場合は、特に注意
取引先の視点:安全性重視
仕入先や融資先にとっては、売掛金や貸付金が安全に回収できることが最重要
安全性をより重視
現預金や市場性のある有価証券を豊富に持っているか?固定資産は担保にできるか?不良債権はないか?などに 注目する傾向
財務諸表の読み手の関心事は、突き詰めれば「利益」と「支払い能力」
ただし、立場により重み付けが変わる
自分の関心事を知ることも大事
損益計算書 (P/L)
損益計算書 (P/L) の構造
営業利益=本業の収益
経常利益=通常の活動の収益
当期純利益=臨時的な活動も含めた収益
損益計算書 (P/L) の分析のポイント
事業規模はどのように変化しているのか?
売上高は増加しているのか?
事業活動においてどのように利益を出しているのか?
最終的な利益(当期純利益)は出ているのか?
当期純利益をどのように生み出しているのか?
経常利益をどのように生み出しているのか?
数値を比較する
前年比、競合比、など
傾向が大きく変動するところを見る
関連する事業活動の仮説を立て、より小さな項目に分けて検証する
大きく概要を捉えたら「なぜ?-> 分解」を繰り返し、具体的な企業活動がイメージできるレベルまで分解する。
分解は目的に応じて切り口の候補を考えること。分解された数値の傾向がはっきり分かれる切り口があれば、仮説のいいヒントになる。
数字だけでいい仮説にたどり着くとは限らない。数字だけで単純によい・悪いを判断せず、数字以外の情報も踏まえて、「どんな打ち手によって得られた結果なのか」という視点で考える。
損益計算書の計上の適切なタイミング
利益とキャッシュは違う
費用は発生主義
キャッシュ・アウトの原因が発生した(=価値が費消された)時に費用を認識する
収益は実現主義
キャッシュ・インがほぼ確実になった(=実現した)時点で収益を認識する
費用収益対応の原則
収益(売上)を計上する時は、その売上を得るために使った費用を同時に計上する
貸借対照表 (B/S)
貸借対照表 (B/S) の構造
資金の使途(企業活動に必要な経営資源)
流動資産
当座資産
現金及び預金
売上債権
棚卸資産
固定資産
有形固定資産
無形固定資産
投資その他
資金の調達(経営資源の獲得に必要な資金調達)
流動負債
固定負債
純資産
資産の合計と、資産+純資産の合計とが一致する
P/L の収益と費用の差額が「当期純利益」となり、それを B/S の「利益剰余金」として「純資産」に加えることで、B/S の左右の合計が一致する
B/S で流動資産と固定資産を分けている理由は企業の安全性を見たいから。不測の事態にそなえてすぐに現金化できる資産があるかどうか。倒産リスクを測るため。
現金は中小企業では月の売上の3ヶ月くらい、大企業では10~20%が目安
B/S で純資産が多ければ固定資産を大きくできて成長のために大きな投資ができる。
貸借対照表 (B/S) の分析のポイント
企業は資本市場から資金を調達し、その調達した資金を事業活動に投じることでリターンを獲得している
企業はコストをかけて調達した資本を資産に投資しながら事業活動を行っている
資金の使途
① どこに資金をたくさん使っているか?
将来のキャッシュを生み出す資産の構成
流動資産と固定資産の比率
② 事業の伸びと比較してどのような増減となっているか?
売上の増減と各資産の増減
きちんと売上につながっているか?
③ 不測の事態に対応するための手元現金は十分か?
事業規模(売上高)に見合った現金残高
資金の調達
④ 借金が多すぎないか?
負債と純資産のバランス
返済義務のない調達方法により賄われている資金の割合
⑤ 資金回収と支払いのタイミングが崩れていないか?
資金の調達手段
B/S 左右の短期と長期のバランス
会計処理方法の選択
実態は同じでも会計処理方針の違いによって利益や資産の額が変化
固定資産の減価償却方法
減価償却とは固定資産の取得に要した支出を使用期間全体で費用負担するために各年度に費用配分すること
取得原価:その資産を取得した時に支出した金額
耐用年数:固定資産の使用期間
残存価額:使用期間終了時の処分見込価額
定額法:毎年一定額を費用配分
定率法:毎年一定比率で費用配分
棚卸資産の評価方法
購入した商品や製造した製品の期末の価値を計算するということは、B/S 上の棚卸資産の金額を決めるだけでなく、売上原価の金額を決めることでもある
期首棚卸資産 + 当期仕入額 = 当期売上原価 + 期末棚卸資産
先入先出法
総平均法
キャッシュ・フロー計算書 (C/S)
キャッシュ・フローの重要性
利益とキャッシュは別
キャッシュが枯渇したら企業活動はストップ = 倒産
営業活動や投資活動などの事業活動からどれだけのキャッシュを生み出したか、それがどのような財務活動で支えているかを、明確にみるための資料がキャッシュ・フロー計算書
キャッシュの側面から会社の経営の実態を分析
キャッシュ・フロー計算書
営業活動によるキャッシュ・フロー (CFO)
本業に関わる活動
プラスであれば営業活動(本業)がうまくいっていることを示す
投資活動によるキャッシュ・フロー (CFI)
固定資産の取得あるいは売却損益、及び貸付金
マイナスであれば積極的に投資していることを示す
財務活動によるキャッシュ・フロー (CFF)
銀行借入、社債や株主発行による資金調達や返済、配当支払いなど
プラスであれば積極的に資金調達していることを示す
キャッシュ・フロー計算書の作成方法
直接法
個々の会計処理(仕訳)をもとにして作成
かなりの手間を要する
間接法
損益計算書や貸借対照表などをもとにして作成
より簡単に作成できる
間接法によるキャッシュ・フロー計算書の作成方法
当期純利益
+ 減価償却費
- P/L 有価証券・固定資産の売却益
- B/S 流動資産(現金預金・有価証券・短期貸付金以外)の増加額
+ B/S 流動負債(短期借入金以外)の増加額
- B/S 固定資産(減価償却累計額控除前)の増加額
- B/S 有価証券・短期貸付金の増加額
+ P/L 有価証券・固定資産の売却益
+ B/S 借入金・固定負債の増加額
+ B/S 資本金・資本剰余金(利益剰余金は含まない)の増加額
- 配当金の支払額
減価償却費はキャッシュ・アウトを伴わない費用のため足し戻す
B/S 流動資産と流動負債で運転資本を調整する
運転資本: ワーキング・キャピタル (WC)
利益とキャッシュのずれが運転資本
運転資本 = 売掛金 + 在庫 - 買掛金
運転資本は手当しなければならないキャッシュ
売掛金が増えれば運転資本は増加
在庫が増えれば運転資本は増加
買掛金が増えれば運転資本は減少
利益は同じでも物の流れと現金の流れに問題があると多額のキャッシュが必要になり、資金繰りが苦しくなる
キャッシュ・フロー計算書の分析のポイント
BCG-PPM ポートフォリオ・マトリックス
市場成長性が高く相対マーケットシェアが高い:スター (Star)
営業 CF: +
投資 CF: -
市場成長性が高く相対マーケットシェアが低い:問題児 (Question Mark)
営業 CF: -
投資 CF: -
市場成長性が低く相対マーケットシェアが低い:負け犬 (Dog)
営業 CF: -
投資 CF: +
BcG-PPM の縦軸(市場成長性):事業のライフサイクル
導入期:積極投資
成長期:積極投資
成熟期:適正投資
衰退期:投資最小化
3つのキャッシュ・フローのバランス
プラスとマイナスを分析することで事業活動の特徴の仮説を導ける
営業 CF +, 投資 CF +, 財務 CF + : 本業好調、投資を計画
営業 CF +, 投資 CF -, 財務 CF - :本業好調、積極投資、債務返済
営業 CF +, 投資 CF +, 財務 CF - : 本業好調、固定資産売却で債務返済
営業 CF +, 投資 CF -, 財務 CF + :積極投資、資金調達、成長企業
営業 CF -, 投資 CF +, 財務 CF + :営業不振、資産売却、本業苦戦
営業 CF -, 投資 CF -, 財務 CF + :本業不振
営業活動でキャッシュを生み出しているか?
営業利益との差分である運転資本のインパクトを確認
減価償却費などキャッシュアウトを伴わない費用は純利益に差し戻す
将来への投資をしているか?
市場成長性の高い事業には積極的にキャッシュを使う
財務活動で事業活動(営業活動+投資活動=FCF)を支えているか?
事業活動のキャッシュがマイナスになったら調達が必要になる
事業活動のキャッシュがプラスになったら返済が可能となる
CF 計算書の増減額は、B/S の期首と期末の現預金残高の差と一致する
財務三表のつながり
全ては B/S を起点につながっている
B/S 流動資産の売掛金・棚卸資産・貸倒引当金の増減は営業 C/F
B/S 流動負債の買掛金と純資産の利益剰余金の増減は営業 C/F
B/S 固定資産の建物・土地・投資有価証券の増減は投資 C/F
B/S 流動負債の短期借入金、固定負債の社債・長期借入金、純資産の資本金の増減は財務 C/F
利益剰余金の変動の明細が P/L
P/L の当期純利益が B/S の利益剰余金
現預金の変動の明細が C/F
営業 C/F
投資 C/F
財務 C/F
現金の増減額
黒字倒産の流れ
市況の悪化
過剰在庫によって慢性的な運転資本不足
銀行借入でなんとか資金繰りをして問題先送り
有利子負債が膨らむ
有利子負債を将来のキャッシュ・フローで返済していく見込みがなくなる
新たに運転資本を調達できる見込みがなくなる
P/L, B/S, C/F のつながりを理解するメリット
事業活動の意思決定を定量化できる
将来の機会とリスクを定性的かつ定量的にマネジメントできる
指標分析
分析全体の流れ
事業構造を概観する
顧客、提供価値、提供価値のための活動、活動に必要な経営資源、のつながりを考える
財務数値を確認する
財務諸表や指標の数値を大きく捉えて、数値上の特徴をつかむ
比較し、評価する
競合、業界平均、時系列などの数値をものさしにして、「良い/悪い」を確認する
問いを立てる、分解して絞る
なぜそのような数字になっているのか?と問いを立てる
大きく捉えた数値から具体的な企業活動がイメージできそうなレベルまで分解する
仮説を立てる、検証する
正解にこだわらず答えを想像してみる
本当か?と疑ってみる
分析のアウトプットをまとめる
人に伝えやすい言葉でシンプルに表現する
分析 -> 評価 -> 意思決定
定性的分析<戦略> 外部環境・内部環境
定量的分析<財務> 財務諸表・財務指標
評価<業績> 過去 - 現在 - 未来
意思決定 So what?、要は何が言えるか
事業構造を概観する
顧客
顧客はだれか?どんな人か?
顧客群としての特性は?
提供価値
どんな価値を提供するのか?
顧客から自社を選んでいただく鍵は何か?
提供価値のための活動
価値を提供するために、どのような活動をしていくか?
経営資源
活動を適切に運営していくために必要な経営資源を、どれくらい、どうやって獲得するか?
事業活動や経営資源の獲得に必要な資金をどのように調達しているか?
総合力
ROA 総資産利益率 = 当期純利益÷総資産
企業が所有している資産を使ってどれだけの利益を上げているか
ROE 自己資本利益率 = 当期純利益÷自己資本
自己資本がどれだけの利益を上げているか
ROE の分解
売上高当期純利益率 = 当期純利益÷売上高
総資産回転率 = 売上高÷資産合計
財務リバレッジ = 資産合計÷自己資本
収益性
売上に対して、各活動でどのような利益が生まれているか?
売上高総利益率
売上高営業利益率
売上高経常利益率
売上高当期純利益率
効率性
どれだけ少ない資金で多くの売上を獲得できているか?
総資産回転期間
売上債権回転期間
棚卸資産回転期間
仕入債務回転期間
有形固定資産回転期間
運転資本:ワーキングキャピタル (WC)
安全性
自己資本比率:返済義務のない資金の割合は高いか?
財務リバレッジ:どれくらい負債を活用して資金調達しているか?
成長性
どれだけビジネスを成長させることができているか?
売上高成長率
平均売上高成長率
管理会計
管理会計の概要
財務会計は社外に対する事業活動の報告が目的(結果を示す)
管理会計は社内の意思決定と実行の管理が目的(将来を描く)
管理会計は社内で利用し、実態に応じてカスタマイズできる
戦略実行の結果を定量的に予測
正確で迅速な意思決定につなげる
PDCA を通じての経営管理に活用する
戦略を的確に実行するための仕組み
企業戦略から KPI を設定し、KPI をモニタリングして企業戦略を進める
費用の分解
変動費と固定費の違いは、売上高の変動に比例して増減するかどうか
売上の増減に伴う費用の増減パターンが分かれば、将来予測がたてやすい
企業・事業によってリソースの使い方が異なる
企業・事業によって変動費・固定費の区分の仕方は異なる
損益分岐点と費用構造
利益の要素は、売上高、変動費、固定費の3つ
売上高は操業度に比例して増減
変動費は操業度に比例して増減
固定費は操業度に関係なく発生
操業度に比例して増減する利益が限界利益
損益分岐点売上高 = 変動費 + 固定費
限界利益 = 損益分岐点売上高 - 変動費 = 固定費
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率
固定費の割合が大きい事業は、事業活動に費やす資源を機動的にコントロールできない一方で、新規参入の障壁が高いため、自社の競争優位を確保
変動費の割合が大きい事業は、事業活動に費やす資源を能動的にコントロールできる一方で、新規参入の障壁が低いため、競合が多くなる
限界利益を固定費で回収していく
テクノロジーの活用は、費用構造に変化をもたらし、売上・費用にも影響を与える
損益分岐点分析により数値目標が導き出され、目標達成への打ち手につなげることができる
予測財務諸表
チェックポイント
売上高に比例する項目は?
経費項目のうち、変動費に該当しそうなものは何か?
資産・負債で売上に比例しそうなものは何か?(在庫など)
単純に比例しそうか?環境変化や戦略を加味すると?
売上高をどう予測するか?
これまでのトレンド(成長率)は?
予測に影響を与える因子は?
いくつかの想定を置いているか?
売上に連動しない項目は?
各固定費の特徴は?(毎月一定か、変化するか)
固定費や資産・負債が増減する計画はあるか?(採用計画、設備投資計画、資金調達計画など)
B/S をどう調整するか?
余剰の現預金はあるか?
短期借入金はどれぐらいの水準になるか?
留意点
売価の変化は単に売上高が変わるだけではなく、原価率など費用や資産などの売上比も変化することに注意
予測には幅を持たせる。上振れ・下振れした時に業績や資金繰りがどうなるのか、幅を持って予測を行う。Excel で作成する時は、仮定を入力するセルは予測財務諸表とは別にしておくと便利。
変数を増やしすぎない。予測に幅を持たせることは重要だが、変数が多くなると引く複雑になり、意思決定の判断に困ることもある。
コントロールシステム
事業構造を理解する(変動費・固定費、損益分岐点分析)
組織を設計する(分業のデザイン)
組織全体の目標設定(予測財務諸表、予算)
各組織単位の目標設定
組織の構成メンバーの権限と責任の範囲の決定
個人単位の目標設定と評価方法の設計
各構成単位の実行結果の測定
組織全体の実行結果の測定・修正行動の策定
管理会計の実践で重要なこと
ロジックのある計画を立てること
意思決定や計画はロジカルに立てられているか
計画を実行する各組織、部門で必要な情報が共有されているか
PDCA のサイクルを回すこと
計画の実行と確認が必要
計画どおりにできないことも多い。その場合は計画修正。
外部環境の変化に合わせて高速で回す
メンバーのモチベーションをあげること
計画を実行するのはメンバー、メンバーを動かさなければ目標は達成できない
そのためには目標設定、評価、報酬(インセンティブ)が必要
そのためには合理的な計画が必要
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