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いまさら好きだと言われても

いまでは考えられないことだが、スタジオジブリの映画「天空の城ラピュタ」は公開時は不入りで、「失敗作」だったらしい。「トトロ」については、明確に赤字だったとか。「魔女の宅急便」でやっと人気に拍車がかかってきて、その後の躍進はご承知のとおり。
 
で、最近の宮崎駿のインタビューで言っていたことがある。「ラピュタがいちばん好きです」みたいなことを言われても、正直、「いまさら好きだと言われても」というような気持ちになるらしい。そのときの、お客さんが入っていなかった状況を経験しているから、「今かよ」みたいな気持ちになる、というのは正直なところだろう。
 
ここらへんはプロデューサーである鈴木敏夫も苦い経験らしく、「もののけ姫」以降は宣伝に次ぐ宣伝で、プロデューサーとしての手腕も神がかってきたこともあり、爆発的なヒットを産むようになる。でも、宮崎駿の中には、不入りだった頃の記憶が残っている、と。

人気が欲しいとか、ちやほやされたいとか、お金が欲しい、ということではないのだと思う。要するに、映画をつくるのにはお金がかかるので、人気がないと「作る」ことがそもそもできない。いくら人気はいらないとはいっても、支持されていないことには、持続することができないのだ。
 
僕自身の活動を振り返ってみると、僕はいまのところアマチュアで活動しているので、別に創作で生活費を得ているわけではない。制作費も、基本的には自宅のパソコンで作業しているからタダみたいなものだし、とくに必要経費でかかっているものはない。
 
そんな活動でも、たとえば作曲活動においては10年ぐらいネットでやっているので、だんだん知り合いが増え、できることも増えてきた。ここ最近は、仲の良い人からの依頼で、個展のBGMを担当させてもらえたり、新しいコラボの許可をいただいたりして、活動の幅が広がってきた感がある。あと、何年か前になるけれど、プロのアーティストに楽曲提供もさせてもらえたし。
 
たしかに「人気はいらない」んだけど、活動をある程度持続して、支持されることによって、「作れる幅」が広がるのがなんか楽しいな、と。基本的には「次に何をつくるか」ということを常に考えているので、過去につくったものがどう評価されてもあまり関心がない。関心の対象が次に向かっているからだ。

これからもどんどんものをつくって、どんどん送り出していくので、それをキャッチした人と何か一緒にものがつくれるようになると楽しいな、と思う。そうでなくても、それを受け取った人がどういう感想をもったのか、話すのも楽しいと思う。
 
10年前につくったものをほめてもらっても、嬉しいことは嬉しいのだが、いまさら好きだと言われても、と感じることもなくはない。重要なのは、いまつくっているもので、これからつくるものだ。それを10年間やってきたから、いまがあるんだとも思う。
 
これからもよろしくお願いします。(執筆時間11分38秒)

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