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2021年10月に読んだ本

人の値段 考え方と計算

★★★☆☆ 「人の値段」とあるものの、人件費の話ではなく、科学的に大きな貢献をした研究者がどのぐらいの報酬をもらうべきなのか? について論理的な記述したもの。青色発光ダイオードを開発した中村修二に対し、裁判で200億円支払うように会社に命じたことなどについて詳細に記述されている。研究者などがメインの考察対象であるように思われるので、人件費などについて考えるのには、あまり向いていないかも。


さよなら、バンドアパート

★★★★☆ 著者自身がバンドマンであり、音楽業界に生きる者のリアルな姿を描き出しています。


死にがいを求めて生きているの

★★★☆☆ 朝井リョウによる群像劇。この人は群像劇が得意なのだろう、と思います。ラストと対比する最初のシーンだけれど、最後まで読むと最初の意味もわかる仕掛けになっていてなかなか面白い。全体的に面白く読めたものの、舞台装置として「山族」「海族」というオカルト雑誌みたいな要素が入ってきて、それが作品の印象を悪くしている気がします。


すばらしき特殊特許の世界

★★★☆☆ 特許申請されているもののうち、特にユニークなものをピックアップした本。著者が申請したわけではなく、また、実際に特許を取得したものではなく、申請したもののうちからのピックアップなので、却下されたものも含まれます。著名人などの特許も取り上げられていて、面白く読めたものの、インタビューを断られているケースも多く、読んでためになったかというとさほどでもありません。


ビジネスモデルの教科書: 経営戦略を見る目と考える力を養う

★★★☆☆ 実際にビジネスをやろうとするとき、当然ながら収益の構造、つまりビジネスモデルが必要になるわけだが、他社がやっていることをそのまま模倣するだけではビジネスにならないので、自分で考え出す必要がある。そういう意味では、本書は成功している企業のモデルを羅列してあるだけなので、参考になるとは言い難い。しかし、既存のモデルの穴を見つけて(仮説を立て)、こことは違うモデルで出発する、と言う点では参考になるかもしれない。


ポスト西洋世界はどこに向かうのか: 「多様な近代」への大転換

★★★☆☆ 歴史の記述はやや退屈ではあったが、このタイトルでもある「ポスト西洋世界」がどうなるか、というのは確かに気になるテーマではある。ところで、「西洋世界」と形容するものの中に、アメリカを中心とする世界は含まれているのだろうか? 西洋がベースとなって規定した世界が、アメリカを中心とする世界であることに異論はないけれど、常に世界は主要プレイヤーが入れ替わり、変容しているのかなと。


頭脳勝負―将棋の世界

★★★★☆ 棋士の渡辺明による初心者向けの将棋本。エッセイ調のものが半分で、後半は初心者向けの指南本なのだけれど、このような配分の本は珍しく、また、将棋をはじめてみようかという気になってくる。


タイタン

★★★☆☆ 不思議な小説。SFっぽいが、よく読んで行くとSFではない。この手の話にありがちな「AIによって社会が混乱する」系の話ではあるけれど、なぜセキュリティが破られたのか、納得のいく説明がないので、ファンタジーという感じ。面白いか面白くないかでいうと面白くないが、読ませる力はあるように感じた。


発達障害サバイバルガイド――「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47

★★★★☆ 「発達障害」をいつも前面に押し出す借金玉氏のライフハック本。もちろん発達障害じゃなくても参考にできる部分は多くあります。概ね、自分にも適用できる話が多くて楽しく読めましたが、「料理」のパートはユニークでした。知らない話が多く、かなり読み応えあります。


日銀日記 ──五年間のデフレとの闘い

★★☆☆☆ 元日銀副総裁の、就任時の日記。他者のレビューで「多少は経済学の知識がないと十分に楽しめない」とあったが、まさに知識が十分に足りていなかったのか、部分的にしか楽しめなかったように思う。日記で書かれているものであり、公式な記録としてつけられたものではないから仕方がない部分はあるが、経済解説はもとよりグラフや表が一切出てこない点もちょっと不満ではあった。


絶望の林業

★★★☆☆ 「絶望の林業」というタイトルで、林業がメディアなどで喧伝されているように希望に満ち溢れたものではない、という主張のように読めるが、本当に林業が絶望的なのか、この本を読んだだけではわからなかった。国産の木材を使うというのが流れになっていないのなら、どのようにそう仕向けていくかを考えることが必要なのでは、と思う。


目の見えない人は世界をどう見ているのか

★★★☆☆ タイトルの通りではあるものの、全盲者に対するインタビューなどは一握りで、半分ぐらいは著者の主観によるエッセイのように感じました。「見えないこと」に対する考察としては面白く読めました。

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