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短編小説 『黎明』 #あとがき

1話

最終話

久々に小説を書いてみた。数年前まではわりと活発に執筆活動をしていて、文学新人賞に応募したりしていた。

社会人になってから書いた長編小説「きみはオフィーリアになれない」は小説現代長編文学賞の一次選考を通過し、次に書いた「黄泉比良坂にて」は野生時代現代文学賞の二次選考を通過した。

しかし、その次に「エデンに堕つ」という作品をすばる新人賞に応募したところ、一次選考にも引っ掛からなかった。なんだかそこでモチベーションが急速に低下してしまった。

一次選考にも引っ掛からなかったことがショックだったのかもしれないが、原因はそれだけではない気がする。正直、文学新人賞というのは何百、ときには何千という応募作があり、その中から選んでいくわけだから、選考担当者がちゃんと読んでいるとはいえ、運の要素が強い、と思っている。ある程度の実力が反映される宝くじみたいなものだと思う。



しかしどちらかというと、モチベーションの低下に直結したのは、一次や二次を通過した作品のほうにあるような気もした。確かにある程度の結果が残せたと言えなくもないが、逆に受賞しないとなんにもならない、ということも知った。

最近だと、受賞作なしとか、受賞したのに出版されない、というケースもあるらしい。なかなか過酷である。

小説がなにがしかの賞を受賞したとしても、問題は「そのあと」である。出版社から依頼がきて、2作目、3作目と書くことになる。もしかしたら受賞作が出版されても、あんまり売れなければ2作目の依頼がこないかもしれない。作家業というのは、先行きが不透明すぎる。

そもそも、自分は普通にフルタイムで働いている会社員なので、出版社の都合でどんどん本を出してくださいとなっても、執筆に充てられる時間は限られている。いまの生活バランスだと、「平日は一日30分」「休日は2〜3時間」ぐらいがせいぜいで、そうなると長編小説を書き上げるのにどんなに頑張っても半年から一年ぐらいはかかる。

もちろん、時期や日によっては執筆に充てられる時間は皆無、ということもあるだろう。



インターネットが登場したことにより、小説を書いていた人々は「これで世界中の人に読んでもらえる!」ときっと思ったことだろう。

しかし、実際は小説なんて面倒なものは誰も読まない。ましてや、パソコンのブラウザでちまちま読む人はいない。

ブラウザだと、スクロールするのが手間だし、どこまで読んだのかわからなくなるからだ。まだ小説は出版社が出すものであり、個人が出しても読まれるものではない、と思っていた。

だが近年になって、Kindleというものが出てきた。これはいわゆる「電子書籍」という媒体で、どれだけ長くても読んだところが記録されるし、付箋を貼ったりもできる。なのでKindleが十分に普及した今こそ、「小説の民主化」というのは実現したように思う。つまり、素人が出版したとしても、その人自身にある程度のフォロワーがついていれば、まあいいんじゃないかと。



ブラウザで人が快適に読める文字量の限界は、だいたい2000字ぐらいとみている。なので、自分がnoteに投稿するときは、だいたい2000字前後でまとまるようにカットして、日々お届けするスタイルをとることにした。
 
本作「黎明」は、自分が新社会人のときに経験した仕事がベースになっている。本作の主人公と同じように、新卒でトラックドライバーとして働くことになった経験は意外と珍しいものなので、いつか書きたいと思っていた。

しかし、仕事内容はあまりに地味で過酷なので、あんまり小説の題材に向かない、とも思っていた。なので、ちょっとしたファンタジー要素を交えつつ、小説として読める読み物に仕上げてみた。しかし、自分もトラックに乗っていたのは一年半ほどで、そのあとは本社勤務となったので、おおまかな流れとしては小説の通りである。事実は小説より奇なり、と言われるが、まさにその通りだな、と。

執筆期間はだいたい一ヶ月半ぐらい。本文は3万字弱なので、一日1000字ちょっと書いたことになるのか。自分としては、まあまあのスピードである。また小説を書く楽しさを思い出せた気がするので、まさしく自分にとっての「黎明」と言える。
 
基本的には商業小説を目指すのではなく、noteとKindleを主体にしてこれからも創作活動を続けていきたいと思った。お付き合い頂けると嬉しいです。また、感想やコメントなど、励みになるので、頂けると嬉しいです!

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