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エアコンと罪悪感

実家に帰って、思い出したことがあった。実家の二階にはみっつの部屋があり、兄弟でそれぞれの部屋を使っていた。で、確か大昔はどの部屋にもエアコンがついていなかったのだが、あるときに二つエアコンをつけることになり、僕の部屋と、姉(上のほう)の部屋につけられることになった。で、姉(下)の部屋はエアコンなし。
 
夏になると暑いので当然エアコンを入れるのだけれど、エアコンを入れると、エアコンのない部屋に住んでいる下の姉が、ムカつく、と(笑)。で、僕の部屋は一応、姉の部屋と引き戸で仕切られていたので、ちょっとだけそこを開けて、扇風機で冷風を送り込んだりしていた。それでもやっぱり暑いから不公平だ、と、散々に文句を言われる。
 
だから、けっこう夏でもギリギリまでエアコンを入れずに頑張っていたと思う。どうしても耐えきれなくなったら入れる、みたいな。何も考えずにエアコンを入れるということはなかった。まあ、子どもは経済力ゼロなわけだし、のべつまくなしにエアコンを使うわけにはいかない、というような心は子どもながら持っていた、というのもあるけれど。

そう考えると、いまは大人になって、自分で働いて稼いだ金を使って自由にエアコンを入れているわけで、贅沢になったなあ、と思う。大人になった特権というか、恩恵を受けているように感じる。別に大人になってえらくなったとはちっとも思わないけれど、大人になることで自分の金で自由にエアコンを入れられるようになったのは大きいな、と。思えば、実家の居間のエアコンを入れるのも、なんか親が「そろそろエアコン入れるか」みたいにならないとつけられない、というルールもあったし。
 
しかし、今思えばある程度とはいえエアコンなしでよくやってたよな。やっぱり今よりは気温は高くなかったのだろうか。昔は昔で暑かったような記憶はあるけれども。
 
東南アジアとかに行くと、「エアコンをガンガンにきかせるのがおもてなし」みたいなところがある。それはもう不必要に、ガンガンに冷房がかかっているので、寒いぐらい。香港の金融系のオフィスに行くと、みんな普通にスーツのジャケットとか着てるもんだから、それにあわせた気温にするために、さらにすごいことになっている(笑)。インドでは、エアコンが強いと空気が綺麗になるという盲信(?)みたいなのもあるらしい。まあ、確かに湿度が低いと空気が綺麗な感じがするような気もするけれども。

今の子は……、エアコンをガンガンに入れるのが悪、みたいな風習ってないかもしれないな。それよりも、熱中症とかのほうがおおごとだし。もちろん、今のほうがいいとは思うよ。けど、そういう時代もあったな、と。

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