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ファイアーエムブレムは人生の縮図

今年の頭に、職場に新人が入社した。もうそろそろ9ヶ月ほどになるのだが、けっこう教育が大変で、壁にぶちあたっている。ちょうどいまやっている仕事がちょっと炎上気味で、あとちょっとで賠償金が発生するところだった。あぶない。なんとかなったけど。
 
僕のやっている仕事はルーチンワーク的な仕事が少なく、「トラブルを未然に防ぐ」「しかるべきところに連絡をとる」「トラブルを解決する」が仕事の柱になる。もちろんなにも起きなければそれですむのだが、仕事内容的にトラブルが発生しやすいので、何かが起きたときには迅速にそれに対処しなければならない。
 
端的にいうと「判断する」というのが仕事の内容の大部分を占めるので、独り立ちをさせるのがけっこう難しい。要は、先輩の下について「指示を受ける」だけなら精神的な負担も少なく仕事することができるのだが、自分が主導権を握ってやると「判断する」負担がかなりかかってしまうのだ。これは適性もあると思うのだが、向いていない人にこれを教育するのはけっこうしんどいな、と感じている。


「教育」について考える。「教育」を商売にしている人は多い。ちょっとネットでセミナーの検索をしてみると、「社員教育」ができるということを謳っているセミナーがたくさんヒットする。そういうもののいくつかは出たことがあるのだけれど、本当に「教育」ってそういうのでできるのかな、とは思う。少なくとも、そういうセミナーにたくさん出たところで、いままさに僕が「教育」している後輩が育つとは思えない。
 
一番成長を阻害しているのは、火消し(トラブル処理)を先輩がやってしまっている、という点だと思う。トラブルが発生すると、後輩が自分ひとりではそれを抱え切れなくなってしまい、それを沈静化する防ぐために先輩が動く。それで、結果的にはおおごとには至らないのだけれど、「自分で問題を解決した」という経験値が溜まらないので、成長しない。その循環がずっと続いている。ここを乗り越えられるかどうかが一人前になれるかどうかの分水領なので、なかなか厳しい。実際、乗り越えられない人もたくさんいて、そういう人は静かに会社を去っていく。


昔、ゲームのファイアーエムブレムというシリーズをよくやっていた。戦争シミュレーションゲームなのだが、キャラが死ぬと生き返らないというシビアなシステムが売りで(最近は生き返るのもあるみたいだけど)なかなか緊張感がある。このシステムのキモは、キャラの育成が大変だ、ということ。強いキャラは前線に出ているので、戦闘の機会が多く、どんどん強くなっていくのだが、弱いキャラは前線にいるとすぐに死んでしまうので、後方に引っ込んでいる。後方にいると、戦闘の機会がないので、育たない。そのジレンマがある。
 
じゃあどうするのかというと、強いキャラで弱いキャラの戦闘の機会をお膳立てする(笑)。一撃で倒せる状態まで敵を弱らせてから、とどめだけを弱いキャラに刺させるとか。当然、その状況に持っていくのはかなり大変で、たまに強いキャラがその過程で死んだりする。本末転倒(笑)。
 
でも、強いキャラだけで進めていくのも限界があって、やっぱり全体の強さを底上げしなければならない。だから弱いキャラの育成も大事なので、折をみて「教育」する。うーむ、ファイアーエムブレムはまさに人生の縮図……。
 
「教育」に関する悩みはいまにはじまったことではないのだけれど、終わりはないなと思う。しかし、最後は本人の「覚悟」かな、とは思う。

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