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レストラン「sio」の判断基準

代々木上原のミシュラン一つ星レストラン「sio」
驚くことに、コロナの影響が色濃い5月に、昨年より売上を伸ばしています。

甚大なダメージを受けている外食産業にも関わらず。

その取組やオーナーの鳥羽周作シェフの考えが素晴らしく、どんなビジネスにも共通するヒントがありますので、紹介します。

コロナで最初に考えたこと


鳥羽シェフは、what、つまり、


「何のためにレストランをやっているのか?」


と考え直したそうです。
ミシュランで星を獲得するくらいですから、コロナ前でも、深く考えていたと思います。
飲食というくくりではなく「レストランビジネス」
お客様あっての商売で、お客様は何を私達に求めて来店してくれるのか。
レストランはリピーターあっての商売。
今まで出会ったお客様を大切にするために、自粛のコロナ禍で、レストランでの「体験価値」を、どのように提供できるのか。
新しい取り組みをする判断基準は


「幸せになる人が増えるかどうか」


判断基準をものすごくシンプルにして、スタッフ全員と共有し、その基準を満たすなら、すぐにやる。
コロナで焦って、新しいことに手を出してしうまうのではなく、その基準を満たさないならやらない。


Twitterでお店のレシピを無料公開


ステイホームで、料理の機会が増えます。
包丁を持ったこと無い人でも、料理をしなければいけないケースが出てきます。
そこでsioは、お店のレシピを無料公開しました。
ただ公開するのではありません。
まず鳥羽シェフ自身が、自宅の一般的な家庭での調理機器で、料理を作ります。
その後、そのレシピを妻に渡して、再現性の高かったものだけを、つまり、簡単で誰でもレストランクオリティになるレシピだけを、twitterの140文字に詰め込んで公開しました。
もちろん、素材は安価な材料で、誰でも手に入れることができるもので。
https://note.com/sio_co
(こちらの公式noteの方がわかりやすいです)


私も焼きそばとセブンイレブンの卵パンを作ってみましたが、とても美味しかったです。
このレシピ公開で、多くの人がsioを知りました。
私はtwitter経由ではありませんが、twitterで話題になったから、sioを知りました。
話題にならなければ、私は一生知ることがなかったでしょうし、そういう人はたくさんいます。
つまり、sioの提供している価値は、レシピそのものではなく、レシピを通じての体験価値なのです。
おいしい食事が作れたら嬉しい。sioに行ってみたい。
このレシピ公開で、今まで見つけることができなかった、お客様に出会えたことになります。
カラーのビジネスでは、何とどう無料で公開すれば、お客様に、カラーのどんな価値を提供できるのか?
まずは「what」が無いといけませんね。


弁当は、コロナが収まっても続ける


sioも例外なく、このコロナでテイクアウトをはじめました。
1000円のバインミーや1500円くらいの弁当、そして、2人前10000円-20000円の贅沢弁当。
まずお弁当を作りにあたって、徹底的にお弁当について勉強したそうです。
冷めても美味しいことはもちろん、衛生面も気をつけて。
sioのコース料理は、1人1万円からです。
贅沢弁当に込めたのは、美味しさはもちろん、
「店外でレストラン体験ができること」
力を入れたのは、贅沢弁当だけではありません。
1000円のカジュアルなサービス(弁当)も、お店での2万円のコースと同じ熱量で作り込んでいるそうです。
同じ熱量を注ぐから初めて、美味しいを通じたレストラン体験を届けることができる。
無料だから、1000円だからといった値段ではありません。同じお店のサービスだから、同じように情熱を注ぐ。
なかなかできることではないですよね。
ただ、これができないと残れない時代となりました。


1人1万円のコースって、カラー診断ですよね。
sioの考え抜いた1万円のコースと同じ体験価値、届けられていましたか?
1000円のバインミーにも負けていませんか?
誇りを持って、1000円のメニューを作っていますか?
カラーリストの体験価値とは何か、それをどのような形で、どう届けるのか、徹底的に考えて行動できれば、sioのようになれます。
コロナで気がついたことがたくさんあると、鳥羽シェフは語ります。
だから、お弁当は今後も続けるそうです。 お弁当はコロナの一時しのぎでは無くて、お店の幅を広げる、メニューだからです。


コロナでお店の幅が広がった


今まで、コースメニューしか提供していなかったsio。
そこにプライドを賭けてミシュランレストランになるも、レストランの価値を届けられるのは、ほんの一握りの人。
お金持ちや、特別な日にしか利用できませんし、そもそも予約も取れません。
1日22回転が最大とのことなので、1日22名にしか届かない。
1人20,000円で1日440,000円。
無料のレシピ公開で、何十万人にもsioの価値が届きました。
1000円の弁当を200食作れば、1日200名に届く。
200,000円の売上。
10000円の贅沢弁当を30食作れば、1日30名に届く。
300,000円の売上。合わせて500,000円。
上記弁当の数量は適当で、公開はされていませんが、このような形だと、昨対100%超えは可能ですね。


数字上は簡単ですが、実際にお客様を獲得するのが難しいです。
私には小学生の子供がいて、下の子は、七大アレルギーをものすごいレベルで持っているので、このようなレストランでの外食は不可能です。
でも、お弁当なら買えるので、sioを体験することができます


コロナで移動が制限されて、近所の商店街が見直されています。
密になるスーパーより、近所のお店で買う。
ただ、近所にsioがあっても、予約制のコース料理しかなかったら、行かないと思います。


1000円のお弁当があったら、試すことができます。
実際お弁当で、地域との距離が近くなったそうです。
「おいしい」を近所の人に届けることができたからです。
コロナで新しいサービスを生み出すことで、お店のメニューが広がり、お客様の幅も広がった。


怪我の功名だったと、鳥羽シェフは語ります。
10,000円のコースだけだと、近所の方にも出会えない。
これって、カラーの仕事にも当てはまりませんか?
となると、同じだけの熱量を注いだ1,000円のコースを作ることができたなら、とっても有益な無料のコンテンツで知ってもらえることができたなら、sioのようになることができるはずです。
50円のコロッケを食べ歩きする人が、近くのお店で10万円のバッグを買う時代、金額でお客様をカテゴライズできません。
個人的にはコロナで、良いと思ったものにしか、お金使いたくないという気持ちが強まりました。
無料でレストランのレシピを公開したら、コンビニパンのアレンジレシピを公開したら、1000円のお弁当を販売したら、レストランへの足が遠のくのではないか?


答えはYesとNo、両方あります。


sioはNOです。
自分たちがお客様に届ける価値を考え抜いて、明確な判断基準で新しい取り組みを行いつつも、既存のお客様を大切にする。
基本的な小さなことでも、情熱を注いで全力でやるから、sioにはファンが付いていて、これからも増えて、繁盛するでしょう。


ここで質問です。


お客様ではなくて、サロンの「ファン」は何人いますか?

こう問われると、私は困ります。
sioのように、考えていませんでしたので。
これから、カラーのファンを作るために、


「コロナ後の新しいカラー診断」


に取り組んでいます。