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ユーザーが作る、LEGO組み換え。余剰の価値化とカラービジネス

昔からLEGOが好きで、今、自分の中で第4次ブームがきています。
再燃する理由が、LEGOの成長戦略とピタっと一致していて、やられたなと思いました。ここ一年だと、プレゼントや何だかんだで7万円ほど使いました。

今やLEGOは世界一の玩具メーカーです。
2021年は売上9370億円、営業利益は2880億円です。同じくらいの利益ですと、2020年パナソニック、売上6兆7000億、利益3000億。LEGOの驚愕的な利益率がわかります。
破産しかけてからのV字回復、コロナで過去最高益。
その理由の詳しくは、本に書いてあり、様々なビジネスのヒントになると感じました。

ここでは、私が今回ハマった理由と、カラーの仕事に活かせそうな点を。

説明書公開で、世界が広がる

LEGOのホームページでは、過去商品の説明書が無料ダウンロードできます。
先の本には「説明書は楽譜のような物」と。

例えばピアノ。最初は楽譜で練習する。上手くなると好きになる。他の楽譜にチャレンジすると、どんどん世界が広がる。そして、作曲という楽譜を作る側になる。
LEGOも最初は、説明書通りに作って完成させ、達成感と共にどんどん好きになります。過去商品の説明書(音楽で言えば過去の名曲)で世界がる。そして、自分で考えて作っていく。

ただ、残念ながら大人は、創造という、頭のエネルギーを使って、遠回りをするという素敵な無駄を嫌う傾向があります。「効率化」とか「コスパ・時間コスト」と追い立てられ、安易な答えを欲しがります。
だから、説明書という答えがあると、嬉しくなります。

各カラーリストのSNSやブログで例えると、「今日の私のコーディネート」「ブルベ夏のメイク」が説明書・レシピでしょうか。

ただ、ここに問題があります。

LEGOブロックの種類が膨大でカラーバリエーションもあるため、たくさんブロックを持っていても、説明書通りに作れることは滅多にありません。
パーツが足りないとか、パーツは同じでも色が違うとか。
作りたい説明書をいくつかダウンロードしたのですが
「やっぱりこれ、工夫しても作れない」
と何度か挫折しました。時間返せと少し思いました。
これでは、説明書には価値がありません。

手持ちのLEGOで作りたい。これ以上、何か買わせないで欲しい。

ファッションもメイクも、そのブランドのその服のその色を持っていないと、SNSにあるそのコーディネートはできません。参考にはなると思いますが、その他大勢の同業者と同じくらいの、「いいね!ポチ」くらいしか、フォロワーに価値を提供できません。
刹那の「なんか良さそう」は雑誌のパラ見と同じで「これは、私のための説明書だ!」という価値がなければ、ネットの世界に埋もれてしまいます。
投稿が資産にならないと、同じような投稿を続けるというSNS疲弊だけが積み重なります。

使っていない、手持ちのLEGO、服やメイクは資産ではなく、部屋を圧迫する負債です。これを資産に変えるしくみが、私のLEGO熱が再燃した理由です。

手持ちのもので作れるという喜び

LEGOはコミュニティ運営に力を入れています。アプリや各種サイトでは、ユーザーが自分で考えて作った作品を公開しています。ユーザーが説明書まで作っていて、無料ダウンロードできます。

作れるものは無限大。しかも、考えなくていい

という、最高の環境です。世界のLEGO好きが使った膨大な時間と労力の成果を、ワンクリックで入手できます。
特に素晴らしいと思ったのは、「組み替え説明書」です。ユーザーが、特定の市販商品だけを使って、違う物を作っています。

組み替えの場合、その商品を持っていれば、作れることが確定します。パーツが足りないとか、パーツは同じでも色が違うとか、煩わしいことが起きないので、安心して飛び込めます。組み替えの物を作りたいがために、その商品を買うこともあります。

私のライブラリ

こちらがダウンロードした、ユーザー投稿の説明書です。上段左三つは、下記商品の組み替えです。

1000円ちょっとで、3種類作れる商品というだけでコスパ凄いのに、ユーザーが投稿した、クジラ・イカ・鳥なども作れて、子供は一日中このセットで楽しんでいました。次の日には、オリジナルを作りだしました。ちなみに、組み替え説明書は10以上あって、子供の創造性が育つと感じました。

画像下段の黄色い車は、上記FIAT500の組み替えです。大人が3時間以上楽しめます。手を動かして何かを作る事は、最高の癒しになります。

「これを作るのに、どれだけの時間をかけたんだろう」と、作者の情熱がこもった作品の説明書は、有料で販売していたりします。
ライブラリ下段右から二番目のトラックは、6ドルくらいで説明書を買いました。
ユーザーが稼げる仕組みもあるので、よりコミュニティが活性化します。

企画中の化粧品と、組み換え説明書

「KATEのこの品番のチークは、イエベ春にピッタリ」という投稿。これがKATEの組み換え説明書(アレンジレシピ)です。
そこでKATEをアフィリエイト等で売るという形が、よくあるインフルエンサーの物販です。
カラーリスト用商材の、パーソナルカラー化粧品はいくつかあります。

現在当社で企画中の化粧品は、「説明書(レシピ)」でカラーリスト一人ひとりが価値を生み出して、稼ぐことができるというコンセプトです。
リップの使い方・配合例というレシピをSNSで発信して「これは私にピッタリかも」と思ってもらい、安心して買ってもらう。
買ったユーザーが、SNS投稿したくなるようなコミュニケーション設計にして、その輪が広がり、カラーリストが仕事しやすい環境を作りたいです。

正直、各カラーリストがLEGOのようなコミュニティは作れないと思いますが、自分が化粧品を販売したお客様だけのコミュニティは作れます。
お客様が発信しやすいコミュニティを作れれば、一番の新規顧客候補である、お客様の親族・友人に、効果的に伝わります。

「その商品を使ったアレンジレシピ例(組み換え説明書)」を入手しやすい環境があれば、損をする心配が減りますし、自分でレシピをクリエィティブするのは大変と思う人でも、試しやすいです。

余剰を資産に

狩猟採集時代。魚捕りが得意な人が、余剰分の魚を肉と交換する。
お金が余っている人が、時間を手にするために、他の人の時間とお金を交換する(雇う・外注する)

脈絡と続く、余剰と余剰の交換。

カラーの仕事で言えば、ワードロープ診断・クローゼット診断等は、余剰を資産化するサービスです。
お客様が今持っている服やコスメのアレンジレシピ(説明書)を作って、資産化する。不用品を売ったり、捨ててスペースができ身軽になり、嬉しい。

飽きて遊ばなくなったLEGOが、組み換え説明書によって新たな価値が生まれ、今楽しんでいます。

近い将来、手持ちのLEGOをカメラで撮影すると、何をどのくらい持っているかがすぐにデータ化され、これとこれを作れますと、説明書をレコメンドしてくる。このパーツを買えば、これを作れますよと、ブロック単品を売りつけようとしてくる。そんなパーソナライズ化がされると思います。

クローゼットをカメラで撮影すると、パーソナルカラーやTPOに合わせたコーディネートを提案したり、おすすめ商品をレコメンドしてくれるようにもなるでしょう(もう、そのようなサービスはあるかもしれませんが)

個人的には、余剰に価値が生まれると、何か買うより嬉しいです。
例えば、スーパーに行ったときに「おすすめレシピ」が目に入り、豚バラだけ買えば、冷蔵庫に余っている野菜で作れるとなったら、「得した!なんかラッキー!」と大喜びして、豚バラを買って家に帰り、食卓で話してしまいます。

もう、物はあまり買いたくないです。
それでも、この世の中は、常に何かを買わそうと、脳をハックしてきます。

ビジネスSDGsが定着した今、サステナビリティという言葉は、買うための良い言い訳です。
「無駄を減らして、あるものを大切に使いましょう」
の言い換えで、その価値観は昔からあります。

カラーこそ、余剰を再利用して、新たな価値を生み出せるツールです。
サステナビリティという言葉の表現であったり、ビジュアルでの見せ方であったり、小手先のマーケティングテクニックはたくさんありますが、本質をユーザーにしっかり伝えて、ユーザーが発信したくなるコミュニティを作ることが大切です。

それができれば、何十年も販売していて、特許も切れ、他社も同じようなものを簡単に作れる「プラスチックブロック」であっても、9370億円もの価値を生み出し、多くの人が幸せな時間を過ごせます。

クローゼット診断であっても、カラー診断であっても、メイクレッスンであっても、カラーリストごとの違いなんて、お客様にはわかりません。
だからこそ、ユーザーが自発的に何かしたくなるような、ソフト面・コミュニティ面での取り組みが、重要だと感じます。

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