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プロなら、色名は自分で

【前提】

1.色覚異常と判定されていない人でも、つまり全ての人は、一人ひとり、色の見え方が違う
2.「ケーキが切れない非行少年たち」で広く知られるようになったように、一人ひとり、形の見え方も違う

人はそれぞれ、目の細胞も違えば、脳も違います。
視覚からの外部刺激をどう脳が変換して、どう自分の内部に世界を作るかは、一人ひとり違って当然です。
同じ人でも、体調や心境、新しく得た知識等で、いくらでも変化します。

「みんな、同じように見えているはず」という共同幻想が、人の最大の特徴であり、悩みを生み出している根源に思えます。

例えば私は、キャリアも実績もある有名な先生、何名にも診断してもらい、4シーズンすべての結果が出ました。

それは、おかしいことでもなんでもなく、一人ひとり、色の見え方も形の捉え方も違うのですから、当然だとも言えます。

カラーリストにできることは、

それぞれが見えている世界で、自分が感じることを、自信と情熱を持って伝えることです


私は、全シーズン言われましたが、各先生の自信のある言葉で、全て納得できました。そして、3番目に言われたウインターを採用しています。

言葉に魂があり、お客様を本気で良くしようという気持ちが伝われば、どんなシーズンであろうと、お客様を笑顔にすることができます。


「ブレンドシーズンに迷う・・・」
「もっと経験を積んで、自信がついてから、活動しよう・・・」

という悩みが多いのですが、前提を考えれば、これらの悩みより、違うことにフォーカスできると思います。

教わっている先生と、あなたが見ている色や形は違います。
先生の言っていることは、その先生が「正解だと信じていること」なので、先生が「この人はウインターです」と言ったときに、あなたが「???」となっても、おかしなことではありません。
そこで、自分を疑いすぎてもいけませんが、完全に無視してもいけません。

私達ホモ・サピエンスは、「同じだと信じる」「フィクションを信じる」という、脳内幻想を操ることで、今や地上の覇者のように振る舞っています。

「パーソナルカラーのウインターはこういうもの」とういのも幻想で、先生の頭の中の「ウインター」と、あなたが「ウインター」と認知しているものは、絶対に同じではありません。
ただ、その違いを証明することはできません。

「ウインターって、こういうものだよね」

と、みんな、同じように見えていると、分かった気になって、それで世界が回っているように感じられている状況でが、誰も何もわかっていないと思います。

それは、
「お金があれば、何でも買えるよね。交換できるよね」
というものと、本質的には同じだと思います。
1万円はただの紙切れですが、価値があるとみんな思い込んでいるから、資本主義社会が回っています。

人は、それと、それ以外とを、恣意的に、言語で分けることで、世の中を理解しています。それは、人や文化によって異なります。

例えば、日本では「蝶」と「蛾」は、別々の言葉で分けて、違うものとしていますが、フランスではどちらも「パピヨン」と呼ばれ、分けてはいません。

フランス人が蛾を見つけて、あたかもアゲハ蝶を見つけたように喜んでいる状況を見て、
「なんであの人は、あんなふうに思うのかな?」
と理解できないことは、
「なんであの先生は、あの人を診断して、ウインターって言うのだろう?」
と、非難したくなるのと同じ状況です。

認知が、見ている世界が同じではないのです。
一人ひとりの正解があって、全員にとっての正解はありませんが、

自分が思っていることが正しい

と頑なになると、否定から争いが生まれたりします。

「あの人の言っていることは、違う。気に入らない」
「なんであのスクールでは、あんな教え方するのだろう。なんで、こんなことも教えてくれないのだろう」
「これは、私が考えたことで正解はこうなのに、あの人達は間違った理解をしている」

こんな話を聞く度に、残念な気持ちになります。

みんな違うけど、それぞれが正しいと思うことを、精一杯伝えようとしているだけだと思うのです。

文化によって、虹の色数が違うように、あなたが新しい言葉を獲得したり、違う文化に触れたりすると、脳での認識が変わり、見えてくる、脳が作り出す世界も違ってきます。

先生が「ポピーレッド」と言っているのは、先生がそう見えているからで、あなたは違うように見えて、そう感じているのならば、「スカーレット」など、自由に違う名前をつけて、分類し、分けて良いのです。

そして、3年後、やっぱりこの色は「猩々緋」だなと感じれば、それに変更すれば良いだけです。正解なんてないので、自分が心地よいようにすると、生きやすいです。

色はとても感覚的で、人によって見え方が違いますので、色のプロなら

「このドレープの色名を教えてください」

という質問は、出ないと思うのです。


私がこの質問を受けたとしても

「自由につけてください」

としか、答えようがありません。

私が見えている色と、その方が見えている色は違います。
ここで、このドレープは「スカーレットです」と断言して、何らかの安心を生み出すというのは、違うと思うのです。

むしろ、色名をつけるというのは、カラーの仕事の醍醐味であり、その人の個性や世界観を発揮する場だと思うので、そこを思考停止にして、誰かの何かを無条件に受け入れるのは、もったいないです。

ぜひぜひ、自分が思う色名をつけてください!