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3日が○○日になったお話

昔話ではあるが。

入社希望者が現れた。
小さな会社であった。

いきなり社長が対応した。
そういう人であった。

なにやら1時間くらい話し込んだそうだ。


ちょっといいか。

ある開発者へ声をかける。

いま作ってるそれの、
仕様書を見せてやってくれ。

社長の指示である。
従わざるを得ない。

ざーっと眺めて、
なるほど、だいたい分かりました、と。

ほう。じゃあ、それ、
どのくらいでできるかね?、と。

3日くらいでしょうか。
採用!


問題点は幾つかある。

「できる」の範囲が分からない。あとから聞いた話からすると、
2人とも「プログラムを書く時間」という認識だったようだ。

声をかけられた開発者へも質問があった。

実際の見積工数はどのくらい?
ざっと1ヶ月くらいですね。

ほら、9割引だぞ!

話がずれている。その開発者は恐らくテストやその他諸々までを含めた時間を答えたにちがいない。それと恐らくその1ヶ月は20日くらいの意味合いだっただろう。1人月ってやつだ。週休2日なのである。

まぁ、20人日と答えていればその場で軌道修正できたのかもしれないが、社長の認識のズレのほうがよほ問題であった。

翌日から出社してきた彼にさっそく仕事が与えられた。同じくらいの規模の作業を渡したようで、話としても都合が良い。あるいは先の開発者のちょっとした意趣返しが含まれていたのかもしれない。

結果。

たしかに彼は3日でプログラムを書き上げた。社長は大喜びだ。凄いのを見つけた!、我ながら人を見る目があるね!、などなど、とにかく上機嫌だったそうだ。

で、コードレビュー。第三者によるプログラムの確認。指摘多数。指摘のレベルも低く、ボロボロ。そもそも、これ、動かしたの? いや、その前に、コンパイルした?

具体的な日数は聞きそこねたが、修正に随分と時間を使ったらしい。最初から書き直したほうがマシだったんだけどね。でも、社員教育でもあるしさ、と、後日、その人はさびしく笑った。

結局、諸々ひっくるめて3倍くらいの工数を使ったらしい。数字以上のダメージも大きかったそうだ。概算ではあるけれど、さ。そんな前置きとともに呟かれたのは、まぁ、いないほうが、ね‥‥。数字は黒から赤へ。


そんな報告を受けた社長が吠えたそうだ。

社員の経験と成長!
それを加味すればプラスだろう?

違うか?!

そんなことを言われてしまっては引き下がらざるを得ない。

もっとも、その彼はほどなくして会社に来なくなり、いつの間にやら自然消滅したそうだ。そしてある日、しれっと机がきれいになっていたらしい。社長の投資は残念な結果となったわけだ。

まぁ、社長の会社なんだから、好きにすれば良い。それに尽きる。責任を負うのも社長の仕事なんだから‥‥。

そして。

そういうのが繰り返されて、
みんなどっか行っちゃっいましたとさ。


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