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徹夜明け、そしてカレー

夕方、帰り道。

漂う、カレーの匂い。

これほど罪深い空気もあるまい。
ああ、でも、うなぎには負けるか。

それはそれとして、
数年前のことである。

仕事で完徹して、引き継ぎを済ませ、
昼過ぎ、ようやく自宅にたどり着いた。

昨日の夕方から何も食べていない。
口にしたのは数本の缶コーヒーだけ。

で、よせばいいのに、
カレー屋の前を通ってしまった。

漂う、カレーの匂い。
反応する、胃袋。

ああ、なにか食べなきゃな。

食欲が勝つか、睡眠欲が勝つか。
しかしこの時は眠気が勝った。


カレーの夢は見なかった。

が、気分はカレーのままであった。

ゆえに、

食欲を満たす = カレーを食べる

という等式?が成り立った。
徹夜明けの判断力なんてそんなもんだ。

カレーを食べねばならない。

謎の決意とともに
フトンからゆるりと這い出した。


ご飯はある。

のだが。

カレーは‥‥、無いじゃん。

なんということだろう。
レトルトカレーを切らしてる。

ぬぬぬ。

この衝動をどうしたものか。

そういえば‥‥!

数日前に届いたダンボールを開ける。
通販サイトで買った食料品が詰まっている。

お菓子やらお菓子やらお菓子やら、
かき分けると、底にカレーがあった。

素晴らしい‥‥。
もしやこれは神々の企みなのか。

天井をあおいで
思わず呟いてしまう。

徹夜明けなんてそんなもんだ。


鍋に水を張り、火を点ける。

沸騰してからとの指示だが、
水の時点で放り込むことにしている。

沸騰したら火を止め、
しばらく予熱で温めれば大丈夫。

根菜類みたいなものだ。
ちょっと違うか。

時間が読みづらくなるが些事である。
エネルギーの消費を抑えるのだ。

どのくらい変わるかは知らんけどな!

普段ならちらと考えるだけだが、
徹夜明けはこれが口に出る。

そんなもんだ。


だがしかし。

あれ?

時が止まる。
火も止めた。

違和感。

材料の例:にんじん、じゃがいも、豚肉‥‥。
具材を炒め、水を加えて‥‥。

確率は二分の一であった。

表側が上だったらと思うと、
超常の何かの気配を感じてしまう。

徹夜明けならでは、か。


ルーか。

いや、ルゥか。

レトルトである。
中身はカレーである。

しかし、レトルトカレーではない!

難しいな。

よく見ればペーストルゥとある。
固形ではなくペースト状のルゥである。

レトルトカレーじゃないよ。

そんなことが、
わりと大きく書いてある。

なるほど、通販で、小さい画像で、
説明もろくに読まずに、といった流れか。

しかし、あれだ。

警告ありということは、
少なからず同類さんがいるに違いない。

自分だけじゃないぞ!

とは思ったものの、
警告ありだからいるとは限らんか。

全員が素直に警告に従うのなら、
アホ、もとい、被害者はゼロになるのだ。


カレーを、作るか?

具材?
ニンジン1本、ジャガイモ2個。

冷蔵庫の冷気に冷やされ、
その寒々しさに寒くなり。

使えそうな食材は少なかった。
こういう日もある。

梅干しやら昆布の佃煮やらは‥‥、
徹夜明けでもさすがにそんな冒険はしない。

まぁ、ちょっと寂しいけど、
カレーっぽくはなるか。

しかし。

4人分、か。

そして。

辛口、か。

相方は甘口だし、
小学生に辛口は早かろう。


どうしたものか‥‥。

問題はこのカレー欲である。
いまだカレー欲は健在である。

食材を買いに行くか。
いっそカレー屋に行くか。

‥‥。

面倒くさいな。
徹夜明けだしな。

‥‥。

あ。

そうか。
あれがあったか。


というわけで。

カップヌードル。
カレー味。

なんだかんだで、
ここに帰ってくるんだよなー。

徹夜明けなんてそんなもんだ。


蛇足。

カップヌードルは、
外で食べるとおいしい。

無闇矢鱈とおいしい。
世界一美味しいかもしれない。

逆に、室内では、
虚しさや背徳感が漂いがちである。

ゆえに、ベランダに出る。

ベランダで、風を感じながら、
ズルズルずるっと、ね。

まぁ、雨の日にそれをやるほど、
徹夜明けでも、さすがに、ね。

部屋でおとなしく食べましたとさ。


さらに蛇足。

ベランダで食べると
部屋が臭くなりません。

お試しあれ。

いや、試すほどこのことじゃないか。


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