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【高校生物】進化②「生物はどのように進化してきたのか?」

~プロローグ~

「おまえは生命あるものの大群をおれの前に展開させ、繁みに空に水に住む兄弟たちをおれに引き合わしてくれた。」ゲーテ『ファウスト』より ファウストの言葉

「おれなどは石炭紀の鱗木のしたの ただいつぴきの蟻でしかない」宮沢賢治『真空溶媒』より
*ちなみに、石炭紀にはまだアリは出現していなかったと考えられている。





★テストに出やすいワード
①27億年前シアノバクテリア出現
②エディアカラ生物群
③カンブリア大爆発
④バージェス動物群
⑤クックソニア



要点:先カンブリア時代に生命が生じた。古生代にオゾン層が形成されたことにより、生物の陸上化が可能になった。


● 地球上に最古の岩石ができてから現在までを地質時代という。

● 地質時代は、大きく
(新しい)新生代・中生代・古生代・先カンブリア時代(古い)
に分けられる。

● 新生代は第四紀・新第三紀・古第三紀に分けられる。

● 中生代は白亜紀・ジュラ紀・三畳紀に分けられる。

● 古生代は、ペルム紀・石炭紀・デボン紀・シルル紀・オルドビス紀・カンブリア紀に分けられる。

*古生代の語呂「古い(古生代)ベッドルーム(ペルム紀)の石炭(石炭紀)で盆に(デボン紀)知る(シルル紀)悪寒(オルドビス紀、カンブリア紀)」

*中生代の語呂「中年(中生代)白髪(白亜紀)ジジイ参上(ジュラ、三畳紀)」

雑談:古生代・中生代・新生代という語に「生」の字が入っているのは、生物に注目しているから。「性」ではないから注意。





★ 先カンブリア時代(46億年前~5.42億年前)



● 生命(おそらく嫌気性細菌:初期の地球に酸素はほぼなかったから)の誕生(40億年前)。

● シアノバクテリア(ラン藻)の出現(27億年前)(非常によく問われる。)。

*シアノバクテリアが酸素発生型の光合成をはじめて行う。

● 単細胞の真核生物出現(20億年前)。

● エディアカラ生物群の出現。

*エディアカラ生物群:先カンブリア時代後期に出現した生物群。様々な多細胞生物(海生無脊椎動物とされることが多いが、そもそも動物かどうかすら怪しい)が含まれる。ほとんどが絶滅し、つながりのある種はほぼ現在には見られない。殻や骨格などの硬い組織を持っていない。カンブリア紀の始まりを境に、化石記録からは消失する。

語呂「先にえーで(先カンブリア時代、エディアカラ生物群)」



雑談:エディアカラ生物群は先カンブリア時代後期(約5.7億年~5.4億年前ごろ)に生存していたと考えられている。明らかに多くの多細胞生物が含まれているが、カンブリア紀以後に爆発的に現れた動物の門とは直接関連がないように見える動物が少なくない(エディアカラ生物群には、進化的な位置づけがよくわからない生物が多い。それが動物であったかさえ疑わしいとする説もある)。

雑談:エディアカラ生物群の化石の多くは、動物の体制の特徴である左右相称性が不確実で、動物ではなく植物(または菌類)に近いのではないかと言う説もある。エディアカラ生物群の化石からは、口器らしい口器や、消化器官らしきものは発見されていない。

雑談:ディキンソニアは、最大1.2mにもなる、エディアカラ生物群の中でも最大級の生物である。化石の厚みは3mm程度。エディアカラ生物群の生物の体には、袋のようなものの繰り返し構造が見られ、全体的にエアマットのような形をしている。その袋の中に何が入っていたのかについては、よくわかっていない。袋の中に体表から取り入れた栄養を入れておいたのかもしれないし(体表からプランクトンをこしとっていたか?)、独立栄養生物を共生させていたのかもしれない。

エディアカラ生物群の中でも最大級の生物。


*下図は国立科学博物館より(ディキンソニア)。

ディキンソニア。




雑談:地球の表面が数百万年にわたりすべて凍り付いてしまう、全球凍結(スノーボールアース)が、過去何度も(おそらく22億年前、8~6億年前)起こったのではないかという説がある。スノーボールアースの形成には、温室効果ガス、銀河宇宙線、地球磁場の変動など、いろいろな要因が関わっていたと考えられている。全球凍結が終息した直後に真核生物(20億年前)、動物(6億年前)が大きく多様化したことがわかっているが、因果関係は不明である。







★ 古生代(5.42億年前~2.51億年前)


● カンブリア紀(カンブリア紀の大爆発が起こった)

・カンブリア紀における生物の爆発的な多様化をカンブリア大爆発(カンブリア紀の爆発)と呼ぶ。


三葉虫出現 。

・脊椎動物(顎[あご]の無い無顎[むがく]類)出現。

チェンジャン動物群、バージェス動物群(アノマロカリスなど、捕食者が存在していた)。

語呂「缶バッチじゃん!("カン"ブリア紀、"バ"ージェス動物群、"チ"ェン"ジャン"動物群)」


雑談:大型化石(顕微鏡下サイズでない化石)のうち、殻や骨などの骨格構造(硬組織)をもつようになった化石が産出しはじめる時代以降を顕生代(けんせいだい。顕生代[Phanerozoic eon]の語源は「目に見える[phaneros]生物[zoic]」)と呼ぶ。顕生代の最初の紀がカンブリア紀であり、それ以前の地質時代は一括して先カンブリア時代という。顕生代は、古い方から順に、古生代、中生代、新生代に区分される。この区分は、古生代と中生代、中生代と新生代の境界に大規模な(全球規模での)生物の大量絶滅が起こったことに基づく。

雑談:三葉虫という名前は、体が中央・左右の三葉に分かれているように見えることから。下図は国立科学博物館より。

三葉虫。






雑談:バージェス動物群では、エディアカラ生物群とは違い、多様な硬組織が見られる。これは、捕食者の存在を示していると考えられる。アノマロカリス(口器の前の発達した触手が有名。所属不明だが、節足動物に近いとする説もある。最大2mのものも存在し、当時最大の捕食者であった可能性がある)や、オパビニア(頭部から長い突起[ただし口ではない]が伸びている。5つの大きな複眼を持つ。所属不明)など、現在の現在の分類群に属さない動物が有名だが、ピカイアなどの原始的な脊索動物も登場している。

オパビニア。バージェス動物群に含まれる。






雑談:バージェス動物群に含まれるピカイアは、体長3~4cmで、原始的な脊索動物と見なされている。当初は原始的な脊椎動物と見なす意見もあったが、バージェス頁岩化石群よりも古いチェンジャン化石群から脊椎動物に属する化石(最古の無顎類化石ミロクンミンギア)が発見されたため、ピカイアは脊椎動物の直接の祖先ではなく、脊椎動物の祖先である動物の形態を比較的よく維持している動物であると見なされるようになった。

ピカイア。バージェス動物群に含まれる。



*ミロクンミンギアは最も原始的な魚類とされることもある(まだ顎は持っていなかった)。下図はミロクンミンギアのぬいぐるみ。

ミロクンミンギアのぬいぐるみ。





講義動画【カンブリア大爆発・バージェス動物群】



雑談:バージェス動物群は、バージェス頁岩化石群ともいう。バージェス頁岩は、ブリティッシュコロンビア州のロッキー山脈中に発達する、黒色で緻密な頁岩。
*頁岩は「シェールShale」ともいう。泥が水中でつみかさなって固まった岩。漢字としての頁は「よう」とも読み、その場合は書物の頁(ページ)のように使われる。頁岩の「うすくはがれやすい性質」を表すのなら、本来、頁岩は「ようがん」と呼ぶべきであるが、「けつがん」と読む決まりになっている。
バージェス頁岩層からバージェス動物群が発見された(多様な生物が海底の地すべりに巻き込まれ、無酸素の海底に運ばれて埋没し、保存されたと考えられている)。バージェス頁岩は、カンブリア紀当時の生物群を垣間見ることができる「進化の窓」であり、そこから得られた情報が、カンブリア大爆発の根拠となっている。

雑談:チェンジャン動物群には、バージェス頁岩から発見された化石動物群に匹敵する多様な化石が含まれる。澄江(チェンジャン)の帽天山で、最初にバージェス頁岩型の化石が発見された。

雑談:アノマロカリスは、はじめ触手だけが見つかった。エビに似ていたことから、「奇妙なエビ」を意味するアノマロカリスの名が付いた。

雑談:カンブリア紀にはHox遺伝子が誕生していたと考えられている(Hox遺伝子は前後軸のパターン形成に関与する遺伝子である。知られている限りすべての動物に存在する)。



 


● オルドビス紀



・顎(あご)のある魚類の出現をオルドビス紀とすることもある。

・陸上植物出現(シャジクモ藻という藻類から進化した)。

語呂「あごの有る魚類もおるど(あごを持つ魚類出現、オルドビス紀)」

(このころまでには、オゾン層が形成された)

語呂「オルドビス紀のオはオゾン層のオ」※ただし、オゾン層がいつ形成されたかについては諸説あり、もっとずっと前から形成されていたとする説もある。




 

● シルル紀


・顎のある魚類の出現。

・昆虫類出現。

・シダ植物出現。

・クックソニア(維管束はない。胞子で増えていたと考えられている)の化石(最古の陸上植物の化石)。

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最古の陸上植物の化石として有名なクックソニア。



雑談:クックソニアは、華奢で葉がない。先端に生える胞子嚢は、球状から腎臓形である。高さ5cm~7cm、直径1mm以下~約2mmであった。

語呂「シクシク(シでシダ植物とシルル紀、クでクックソニアを覚える)

*下図は国立科学博物館より。

クックソニアの復元模型。





● デボン紀(魚類の時代。その中から両生類が出現した。)


・両生類出現。

・魚類繁栄。
*下図は国立科学博物館より(デボン紀に生息していたダンクルオステウス。巨大な頭部を骨性装甲が覆っていた)。

ダンクルオステウス。



・裸子植物出現。

語呂「カエル飛び込む池の音、でぼーん(カエルで両生類出現、でぼーんでデボン紀をイメージする)」

雑談:1904年、OliverとScottは、シダ植物と思われていた多くの化石が、種子をつくる植物であったことを発見した。そのようなシダ植物と種子植物の特徴をあわせもつ植物をシダ種子植物と呼ぶ(ただしシダ種子植物の定義には揺れがある)。デボン紀後期に出現した最初の裸子植物をシダ種子植物に含めることが多い。かつて、シダ種子植物が提唱される以前に、ソテツ状の特徴を持つシダ類としてソテツシダ類(1899年Potoniéが提唱した化石植物群)が提唱されたこともあったが、ソテツシダ類は種子植物であったことがわかった。ソテツシダ類という用語は現代ではほぼ用いられないが、研究史上の意味は大きい。

雑談:デボン紀に見られる生物
(1)リニア、アグラオフィトン:維管束植物(とされることが多い)。古生マツバラン類とよばれる。葉や根が分化していない。乾燥に適応するためのクチクラ層(水分蒸発を防ぐ)や、気孔(ガス交換・水分調節)、維管束(重力に耐える機械的強度をもつ)がみられる(ここでは高校教科書の解釈に合わせて記述したが、たとえばアグラオフィトンなどは、通道組織の研究から、維管束植物のような維管束を持っていなかったということがわかっている。これらの植物の進化・系統的な位置づけに関しては、まだわかっていないことが多い。とにかく、シルル紀後期~デボン紀にかけて、様々な植物の"進化的な実験"が行われたことは間違いなさそうである)。


*下図は国立科学博物館より。

アグラオフィトンの復元模型。




(2)ユーステノプテロン(エウステノプテロン):硬骨魚類、総鰭類(そうき)類。(シーラカンスと同じように)ひれに肢のような骨格を持つ(植物の密生した水深の浅い淡水中を、頑丈なひれを動かすことで移動したのではないかと考えられている)。両生類へつながる特徴を示す。全長約1m(現在では、ユーステノプテロンより古い地層から両生類の残したものと思われる足跡が見つかっており、ユーステノプテロンが両生類の直接の祖先である可能性は低くなっている)。

(3)イクチオステガ:最古の両生類と言われる。シーラカンス(や肺魚)の祖先から進化したと考えられている(全長約1m程度。後ろ足には7本の指があった。前足については化石が見つかっていない。かつては最も古く原始的な四肢動物と考えられていたが、最近は、アカンソステガ[同時代に同地域に生息していた。やはり四肢を持つ]の方がより原始的だとも言われている)。

デボン紀の生物たち。





 

● 石炭紀


・は虫類出現…羊膜をもつ(羊水中で発生)・角質化した鱗(うろこ)をもつ・窒素排出物が尿酸→乾燥に適応している。

*は虫類などが排出する尿酸は、不溶性で毒性が低いため、強く濃縮して排出することで、水を節約することができる。また、浸透圧を上げずに卵の中(卵殻内の尿のう)で濃縮できるので、安全に発生できる。

・木生シダ類が大森林形成(これらの木生シダが石炭になった):高さ数十mにもなるシダ植物(ロボク、リンボク、フウインボク)が森林を形成していった。


*高校教科書に合わせて「木生」シダと書いたが、たとえばリンボクは、木質の部分をほとんど持たず、木と言うより巨大な草であった。


雑談:巨大なシダ植物の樹木は、貧弱な維管束組織しか持たなかった。幹の大きさと比べて木部の少なさが目立ち、強度が小さかった。幹の大きさと補強組織の不釣り合いが、これらの植物の倒壊の原因となり、石炭紀末における消失を招いた可能性もある。

雑談:石炭紀における大規模な石炭層の形成には、樹皮のリグニンの進化が関係していると考えられている。リグニンは非常に分解されにくい。当時は、リグニンを分解できるような生物がいなかったという説もある。

雑談:爬虫類( reptilia )の語源はラテン語の「這う repere」である。爬虫類の「虫」の字は、動物の一般的総称として用いられている字である。

雑談:リンボク目のリンボク(鱗木)は、古生代の代表樹種の一つ(世界の良質石炭のもとになった主要な植物)で、幹についていた葉柄(葉の柄の部分)のとれた跡が魚の「鱗」のように見えることからその名が付いた。大きな個体では高さ30m、茎の直径は2mに達した。フウインボク(封印木)もリンボク目で、葉の脱落したあと(痕)が六角形またはひし形を示し(これが封印に似ている。封印とは、封じ目におしてある印のこと)、縦に整然と並ぶのが特徴である。
*下図はリンボクの幹の模様(国立科学博物館より)。

リンボク。



雑談:ロボク(蘆木 Calamites)は、ギリシャ語の葦に由来するラテン語(calamus)が由来。ロボク類は、トクサを大形にした形を示し、茎は中空である。高さ10mに達する高木となる。






● ペルム紀



・シダ植物衰退。

・裸子植物発展。

・ペルム紀末に、最大規模の大量絶滅が起きる(三葉虫類絶滅)。




雑談:ペルム紀末の大量絶滅は、生命誕生、カンブリア大爆発と並ぶ、地球生命環境史上の3大事変の一つといってよい。

雑談:ペルム紀末に、地球史上最大レベルの大量絶滅が起こった(種の絶滅率は約95%とも言われている)。その原因は明らかでないが、地球温暖化が原因の一つではないかと考えられている。考えられている地球温暖化のストーリーは以下の通り。①火山活動が活発化した(この火山活動の活発化には超大陸パンゲアの形成が関わっているとする説があるが、よくわかっていない)。②火山活動により大気中にCO2が放出された(また、火山性ガスには有毒ガスが含まれているので中毒も発生する)。③CO2の温室効果により気温が上昇した。④気温の上昇により、永久凍土などに閉じ込められていたメタンが大気中に放出された。⑤メタンはCO2をはるかに超える温室効果をもつため、さらに地球温暖化が進行した(④、⑤における正のフィードバックによって、気温はどんどん上昇を続け、極端な地球温暖化が起きた)。
この大量絶滅後の三畳紀前期においても、不安定な環境は続いた。結局、生態系が復活したのは、三畳紀中期あたりからであると考えられている(復活というより、ほとんど別世界に変わったといってよい。裸子植物や恐竜が主役の時代が始まっていった)。

雑談:超大陸パンゲアの形成に伴い、海洋プレートがパンゲアの下に蓄積し、それらの低温で重い海洋プレートが核まで落下を始める(コールド・プルーム)。すると、それらを補うように、マントル(地殻と核の間の地球部分)底層から高温で軽いマントルの塊が上昇してくる。この巨大なプルーム(マントル内の上昇流)をスーパープルームと呼び、スーパープルームがペルム紀末の火山活動の活性化に関わっていたとする説がある。下図はイメージ(あまり正確な図ではないので、地学基礎を入試で使う人は必ず地学基礎の教科書を確認すること)。

ペルム紀末の大量絶滅の原因は火山活動の活発かもしれない。



雑談:ペルム紀から三畳紀あたりにかけて、グロッソプリテスという植物の化石が産出する(グロッソプリテスの語源は「舌状の葉」を意味するラテン語)。グロッソプリテスは原始的な裸子植物であるシダ種子植物と考えられている。被子植物の起源をグロッソプリテスに求めている学者もいる。




古生代はここまで。続きは次回の講義で。

講義動画【生物の変遷】




雑談:「○○出現」の時期などは文献によってずれがある。あまり細かく気にしなくてよい。教科書に解釈を合わせる。たとえば、魚類の出現はオルドビス紀とも、カンブリア紀ともすることもある(カンブリア紀初期の化石であるミロクンミンギアとハイコウイクチスを、初期の魚類とすることがある)。

<Q.クックソニアって全然陸上植物と似てないんだけど?…どのような進化が起きたかは明らかになっていないが、陸上植物は、以下のように体が変化していったという説がある。覚えなくてよい。コケ植物とシダ植物との関係についてもわかっていないことが多い。クックソニアを原始的なシダ植物として、コケ植物はシダ植物から退行進化したものであるとする主張もある。(Schuster, Inoue )>

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<Q.羊膜って何?…胚膜という胚を包む膜のひとつ。中に羊水が満たされているので、胚を乾燥から守ることができる=陸上での発生が可能となる。>

<Q.「石炭紀:は虫類出現…羊膜をもつ・角質化した鱗をもつ・窒素排出物が尿酸→乾燥へ適応」について、羊膜と鱗は乾燥に適応してるってなんとなくわかるけど、最後の窒素排出物って何?…生物は代謝で生じたN(窒素)を含む老廃物(窒素排出物)を捨てる必要がある(たとえばヒトは尿素を水に溶かして尿として排泄している)。尿酸は不溶性で毒性が低いため、強く濃縮して排出することができ、捨てる時の水を節約することができる。また、浸透圧を上げずに卵の中(卵殻内の尿のう)で強く濃縮できるので、安全に発生できる。尿酸は、鳥類・爬虫類・昆虫類の主要な窒素排出物である。また、空を飛ぶ鳥類や昆虫類にとっては、溶かすための水が不要なので、軽くて済む。ちなみに、軟骨魚類や両生類の成体、哺乳類は毒性の少ない尿素(水に溶ける)が窒素排出物である。哺乳類は胎生なので、尿酸よりも、水に溶ける尿素の方が胎盤を通して母体に移行させるのに都合がよい。魚類(や両生類の幼生)はアンモニアが窒素排出物である。>

雑談:哺乳類も尿酸を排出するが、それは主に核酸の分解産物である。あえて尿素を尿酸に変換しているわけではない。

*以下は様々な生物の窒素排出物。








要点:最初の脊椎動物は顎(あご)やうきぶくろを持っていなかった。

● 最初の脊椎動物は、カンブリア紀に現れた顎の無い無顎類(むがくるい)であった(ただし、どこまでを脊椎動物のグループに入れるかについては様々な議論がある)。この生き物は、顎(あご)が無いため、何かをかみ砕くといったことはできず、プランクトンをこしとって餌にしていた(口から泥を吸い、鰓孔から排出してこしとって食べていた)と考えられている。

● やがて顎(あご)やうきぶくろをもつ魚類が現れた。そして、魚類はデボン紀に爆発的に多様化した。

雑談:うきぶくろは、多くの硬骨魚類の、消化管の背側、消化管と腎臓の間にある、気体を満たした袋状の器官である。個体の比重の調節に用いられる。祖先的硬骨魚類が獲得した肺に由来すると考えられている。
 
雑談:条鰭(じょうき)類(コイ、メダカなど。いわゆる"魚")、総鰭(そうき)類(シーラカンス類)、肺魚類に加え、四肢動物まで硬骨魚類というグループに入れることもある(ここが、分類の難しさでもある。「ヒトは魚類の仲間」と聞いて、違和感を覚えない人はいないだろう。ある分類群の名前は、そこに含まれる生物すべての特徴を示しているわけではない)。

雑談:魚類の鰭(ひれ)を支える、角質・骨質の線状構造を鰭条(きじょう)という。

雑談:肺がまず出現し、それが硬骨魚類の鰾(うきぶくろ)に進化したらしいことがわかっている(淡水で肺を獲得した淡水魚が海に戻り、不要になった肺が鰾に進化していった)。

雑談:軟骨魚類には、鰾(うきぶくろ)ないし肺類似の器官がない。

雑談:総鰭類(シーラカンス類)、肺魚類、四肢動物を合わせて肉鰭(にくき)類と呼ぶことがある。

雑談:下図は脊椎動物周辺の系統樹のイメージ(ただし、諸説ある)。

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脊椎動物周辺の系統樹。






発展:顎の形成


● 初期の魚類の無顎類(むがくるい)には、えらを支える骨格である鰓弓(さいきゅう)が多くあり、そのうち、前方のものが変形して顎の骨格が形成されたと考えられている(脊椎動物はもともと顎をもたなかったが、えらを支える骨を変形させて顎を獲得した。無顎類はふつう魚類に含めないが、含めることもある)。

● 現生の顎のない無顎類(むがくるい)には、ヌタウナギ(脊椎なし)やヤツメウナギ(脊椎がある)がいる(ヌタウナギはメクラウナギとも言われていたが、差別用語なので今はヌタウナギと呼ぶ)。

雑談:ヤツメウナギ(鰻[ウナギ目ウナギ科]とは全く異なる生物である)は、両側に左右それぞれ7個の鰓孔が目のように見えることから、本当の目と合わせて「ヤツメ(八つ目)ウナギ」と呼ばれる。

雑談:無顎類のうち、現生のヤツメウナギ目、ヌタウナギ目のみを指して、円口類(えんこうるい)と呼ぶ(古くは、無顎類と円口類を同義とすることもあった)。

*顎を形成した骨よりも前方にあった骨は、消失したか、頭蓋や顎に組み込まれた。下図はイメージ。
 

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無顎類には、えらを支える骨格である鰓弓が多くあり、そのうち、前方のものが変形して顎の骨格が形成されたと考えられている。


雑談:魚類が陸を目指した理由については、確定した説はない(オウムガイによる捕食から逃げたという説がある)。

雑談:淡水は、海水よりカルシウムイオン(細胞接着や情報伝達に不可欠である)の濃度が低い。淡水域を目指した魚類は、カルシウムイオンの貯蔵庫として骨を発達させた可能性がある。

 




まだわかっていないこと

● エディアカラ生物群はどのような生物であったか。

● カンブリア大爆発の原因は何か。

● それぞれの地質時代に、どのような地殻変動があったのか。また、気温や大気の組成はどうであったのか。それらは生物の進化や絶滅にどのように影響したのか。

● どうして、そしてどのように、微生物や菌類は陸上に進出したのか。

● どうして、そしてどのように、植物は陸上に進出したのか。

● 植物の陸上化と菌根菌の進化にはどのような関係があるのか。

● どうして動物は陸上に進出したのか。餌を捜すためか(浅瀬で落ち葉をかき分けながらカタツムリ、ヤスデなどの餌を捜したか)?日光浴をして消化を早くするためか?安全な産卵場所としての水たまりに移動するためか?また、遺伝子にはどのような変化があったのだろうか。

● 現在我々が化石燃料として使用している大量の石炭は、なぜ生じたのか。また、石炭紀に石炭が形成されたことは、生物にどのような影響を及ぼしたか(有機物が分解される過程で酸素が消費される。石炭埋没によって、酸素の消費量が減り、大気中の酸素は増加したであろう。これによって開放血管系の昆虫が巨大化したのかもしれない。また、酸素の増加によって、野火も増加したであろう)。

● ペルム紀/三畳紀境界(P/T境界という)における顕生代(5億4200万年前以降の地質時代)で最大の大量絶滅の原因は何か(気候変化、海洋無酸素、火山噴火、海水濃度変化、伝染病、巨大隕石衝突など、様々な要因が指摘されている)。