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【高校生物基礎】第6講「DNAが遺伝子の本体であることは、どのように証明されたのか?」

 ~プロローグ~
救助犬トラッカーは、2001年9月11日、米国貿易センタービルの瓦礫の現場で、人命の救助に貢献した。トラッカーは、“クローン化に最もふさわしいイヌ”コンテストで賞を受け、トラッカーのDNAを用いて、トラッカーの『クローン』犬が作製された。トラッカーのクローンは、トラッカーと同じ遺伝子をもつ。
遺伝子とは、もともとは、遺伝形質(遺伝する体の特徴)を規定する因子を指す用語であった。人類が遺伝子の本体に気付いたのは、最近の話である(昔は、血が子孫へ伝わると考えている人もいた[無論正しくない。もし血が伝わるなら、A型の母親がB型の子を産めないことになる]。その後、生物種ごとに異なる、多様なタンパク質が発見され、人々はタンパク質こそ遺伝子の本体であると考えた)。遺伝子の本体は、いったい何なのであろうか?その答えは、いくつかの偉大な(そしてシンプルな)実験によって明らかになった。
遺伝子の本体は、一見つまらない構造をもつ、DNAという高分子であった(どの生物のDNAを解析しても、A,T,C,Gの4つの塩基や、デオキシリボースという糖、リン酸が見つかる。一見、多様性のまったく無い物質に見える)。人々はそのような単純な物質に、膨大な生物体の情報が含まれているとは思いもしなかった(実は、A,T,C,Gの並び方に、秘密があったのである)。






★テストに出やすいワード
①形質転換
②肺炎双球菌
③グリフィス
④エイブリー
⑤ハーシーとチェイス



要点:肺炎双球菌のR型菌はS型菌のDNAを取り込み、形質転換する。つまりDNAは形質を支配する。

  

雑談:あなたは「遺伝子の本体はDNAに決まってるでしょ。」と思うかもしれない。しかし、考えてみてほしい。生物の教科書がなかったとしたら、あなたはそれをどのような情報から推察できるだろうか。タンパク質は、20種類のアミノ酸からなり、生物ごとに多様な種類が存在する。立体構造・機能も非常に多様で複雑である。一方、DNAに含まれる塩基はたった4種類である。当時の多くの生物学者が「タンパク質こそ遺伝子の本体であり、DNAは、タンパク質をまとめている物質に過ぎない」と考えていたのも無理はない。

● 1869年、スイスの生理化学者ミーシャーは、膿の細胞核中からヌクレイン(DNAを含む物質)という新物質を発見した。

雑談:ミーシャーは、白血球の残骸である膿から細胞核成分を取り出し、ヌクレインと名付けた。その後、ヌクレインは核酸(核に多く存在する酸性物質という意味)と改名され、アデニン、チミン、シトシン、グアニンという化合物を含んでいることが示された。さらに糖とリン酸が含まれていることがわかった。そして、糖がデオキシリボースであることが明らかになった。そこでこの物質がデオキシリボ核酸(DNA)であることが確定した。

雑談:ミーシャーが発見したヌクレインは、当時それほど注目されなかった。アルトマンは、ヌクレインを核に含まれる酸性物質という意味で核酸と名付けた。コッセルは、核酸が2種類あることを突き止め、核酸に五炭糖が含まれることを見出した。レヴィンは、2種類の核酸は、異なる塩基組成をもつことを発見した。さらに、核酸には、糖としてリボースをもつものと、デオキシリボースをもつものがあることを示した。これ以降、核酸は、「リボ核酸(RNA)」と「デオキシリボ核酸(DNA)」と呼び分けられるようになった。



● 細菌学者グリフィスは、肺炎双球菌(はいえんそうきゅうきん、原核生物)とマウスを使って、形質転換(DNAを取り込み、形質を変化させること)を発見した(1928年)。



● 肺炎双球菌には2つの型がある。S型菌(なめらかsmoothなコロニーを形成する)には病原性がある。もう一方のR型菌(コロニーはざらざらroughしている)には病原性はない(R型菌はS型菌の突然変異によって生じる)。

語呂「ドSのS型(S型菌は病原性があり危険である。マウスに生きた肺炎双球菌のS型菌を注入すると、マウスは肺炎を起こして死んでしまう)」

● S型菌は莢膜(きょうまく)という鎧のような構造を持ち、白血球から逃れる。よって、S型菌はマウスに肺炎を起こす。対してR型菌は莢膜を持たず、肺炎を起こす能力はない(マウスの白血球に排除されてしまう)。
下図はイメージ(あくまでもイメージである。当たり前だが、肺炎双球菌は原核生物なので、図のような顔はしていない)。

肺炎双球菌にはR型菌とS型菌がある。





● グリフィスの実験

①生きたR型菌(病原性なし)をマウスに注射→マウスは生存。

②生きたS型菌(病原性あり)をマウスに注射→マウスは死亡。

③加熱殺菌したS型菌(病原性なし)をマウスに注射→マウスは生存。

④(生きたR型菌+加熱殺菌したS型菌)をマウスに注射→マウスは死亡。
④で死んだマウスから生きたS型菌が検出された。


グリフィスの実験のイメージ。形質転換を発見した。




● 生きたR型菌と熱で殺菌したS型菌を混ぜてマウスに注射すると(上記④の実験)、マウスが死んでしまうことをグリフィスは発見した。彼を驚かせたのは、死んだマウスから「生きたS型菌」が検出されたことであった。R型菌がS型菌のDNAを取り込み形質転換していたのである。





雑談:R型菌からS型菌への形質転換は他の研究室でも追試・確認されたが、細菌の間で遺伝情報が伝達するという概念はなかなか受け入れられなかった。

雑談:実際には、以下のような現象が起こっていると考えられている。なお、死んだS型菌から放出されるDNA断片の種類は多く、ほとんどのR型菌は別のDNA断片を受け取るので、特定の遺伝子に関する形質転換効率は通常1%以下である(ただし、グリフィスの行った上記④のような実験では、形質転換できなかったR型菌はマウスの白血球によって排除されている)。

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雑談:グリフィスは、ある日、数匹のマウスにR型菌と加熱殺菌したS型菌の両方を注射した(上記④の実験)。これはコントロール実験(対照実験)であったが、このマウスは急性肺炎を起こした。そして、死んだマウスからS型菌が検出された。グリフィスは非常に驚いた。もしこの結果が正しいなら、殺されたS型菌の持っていた遺伝物質は、熱によって損傷を受けないばかりか、殺された細胞から抜け出し、生きた別の細胞の細胞壁を通って、その細胞の遺伝物質と遺伝的組換えを起こしたことになる。多くの生物学者がこの結果を拒絶した。免疫学者エイブリーも、はじめは、この結果を信じなかった(エイブリーは非常に慎重な性格で、同僚の話によると、ひとつひとつの文章・言葉すら、慎重に考慮していたという)。しかし、やがて彼は、このことが、細菌学、遺伝学のみならず、医学および生物学全体に関わる重大な発見であると考え始めた。





要点:エイブリーは、形質転換を起こさせる物質がDNAであるということを発見した。


● 免疫学者エイブリー(アベリー)は、加熱殺菌したS型菌の抽出物からDNAを単離し、そのDNAを用いてR型菌をS型菌に形質転換させた。

● エイブリーは、形質転換を起こさせる物質は(タンパク質ではなく)DNAであることを示した(S型菌抽出物をタンパク質を分解する酵素で処理してR型菌に与えたところ、形質転換は観察されたが、DNAを分解する酵素で処理してR型菌に与えたところ、形質転換は観察されなかった)。

語呂「エイッと分解エイブリー(エイブリーはDNAやタンパク質を分解する実験を行い、形質転換を起こさせる物質がDNAであることを示した)」


● エイブリーは、実際は、以下のような実験を行った(1944年)。

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エイブリーの実験のイメージ。形質転換を起こす物質はDNAであることがわかった。




● RNA分解酵素(文字通りRNAを分解する酵素)や様々なタンパク質分解酵素を加えても、形質転換活性に影響はなかった([RNAやタンパク質ではなく]DNAが形質転換を起こす原因となる物質なので、当然である)。

● DNA分解酵素(文字通りDNAを分解する酵素)によってDNAを分解すると、形質転換は起きなくなった(DNAが形質転換を起こす原因となる物質なので当然である)。



雑談:DNA分解酵素(デオキシリボヌクレアーゼ)は当時発見されたばかりであった。

雑談:エイブリーは、精製した形質転換因子(この因子こそDNAである)が、冷やしたアルコール溶液の中で、ガラス棒に白っぽい繊維状の物質として絡みつくことを確認している(高校のDNA抽出実験で見ることのできるような白い繊維状の物質を、エイブリーも見たのである)。

雑談:エイブリーの行ったような、「分解によってその物質の機能を調べる」という手法は重要である(お箸の機能がわからなければ、それを折ってみればよい。お弁当が食べられなくなる。そこで「そうか、お箸はお弁当を食べるために必要な物質なんだ!」とわかる。冗談です)。現在の分子生物学者も、遺伝子の機能を調べるために、その遺伝子を壊して影響を見ている

雑談:エイブリーの説明に富んだ論文にもかかわらず、多くの科学者はDNAが遺伝子の本体であることを認めなかった。多くの科学者は「微量に存在するタンパク質が原因となって形質転換を起こしたのである」などと主張した。

雑談:エイブリーにノーベル賞を与えるべきであったという声も多い。彼の実験は非常にスマートである。「エイブリーがDNAが遺伝子の本体であることを証明した」とする本もたくさんある。

雑談:「もしわれわれの結果が正しいとすれば――もちろん、ほんとうにもしも、もしもだけど――R細胞をそうさせた刺激の化学的性質がわかり、生じた物質の化学構造もわかることになるわけです。・・・今の時点でみんなに納得させるには、確かな証拠がたくさん必要で、われわれが今、一生懸命見つけようとしているのはそれなんです。シャボン玉遊びはとても楽しいけど、だれかが突っついて割る前に自分で割らなくちゃつまらないですからね。」1943年5月に書かれたエイブリーから兄弟への手紙(ストライヤーら『ストライヤー生化学第4版』より)




要点:バクテリオファージは自身のDNAを大腸菌に注入し、増殖する。これは遺伝子の本体がDNAであることの証明である。


● 分子生物学者ハーシーとチェイスは、T2ファージを用いて、DNAが遺伝子の本体であることを証明した(1952年)。
*T2ファージ:バクテリオファージ(細菌を宿主とするウイルス)というグループに属するウイルス。大腸菌に感染する。

● 下図はイメージ(もともと大腸菌が持っていたDNAは描いていない)。

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バクテリオファージは大腸菌に感染する。




● バクテリオファージは自身のDNAのみを大腸菌内に注入する。大腸菌内でファージ由来の遺伝子が発現し、大量の子ファージが(大腸菌内の物質を使って)つくられる。

● タンパク質は大腸菌内に注入されない=(タンパク質ではなく)「DNAが遺伝子の本体であること」が示された。

● ハーシーとチェイスにより、遺伝子の本体(細菌の中に送り込まれていた物質)はタンパク質ではなくDNAであることが証明された(子ファージはDNAにある情報をもとにつくられていた)。

語呂「チェイスとハーシー!ティーツーファージ!(実験者と材料の語感が似ている)」







発展:バクテリオファージの感染


バクテリオファージの感染過程の詳細は以下の通り。

①バクテリオファージは大腸菌表面に結合する。


(大腸菌がもともともっているDNAは描いていない)

バクテリオファージは大腸菌表面に結合する。



②バクテリオファージのDNAが大腸菌内に注入される。


*タンパク質でできた殻は注入されない。

バクテリオファージのDNAが大腸菌内に注入される。




*なお、ファージのタンパク質の殻は、ミキサー等で攪拌(かくはん。かきまぜること)することで大腸菌から剥がすことができる。ハーシーとチェイスは、家庭用のミキサーを使って培養液を攪拌し、ファージのタンパク質の殻を大腸菌から分離させた。ハーシーとチェイスの実験の詳細については後述する。

ファージのタンパク質の殻は攪拌することで大腸菌から剥がすことができる。





③大腸菌内でバクテリオファージのDNAとタンパク質が合成される。


*ファージのDNAの指令に基づいてファージのタンパク質が合成される。ファージのDNAやタンパク質の合成には大腸菌の細胞内の成分が使われる。

*ファージのタンパク質が組み立てられ、その内部にファージのDNAが詰め込まれる(タンパク質同士の相互作用などにより、自然と組み立っていくと考えられている)。



④大腸菌は破裂して、中から子ファージが大量に放出される。

大腸菌は破裂して、中から子ファージが大量に放出される。




雑談:バクテリオファージは、大腸菌に感染するが、ヒトには感染しないので、昔からよく分子生物学の研究に使われてきた。

雑談:ファージの遺伝子には、宿主のDNAを破壊するタンパク質を産生する指令が含まれている。

雑談:高校では習わないが、ファージには様々な種類が存在する。その中には、宿主のDNAの中に自身のDNAを潜り込ませるものもいる(大腸菌は、自らのDNAの複製と同時にファージのDNAも複製することになる)。まるでそれは時限爆弾のようである。ある種の化学物質や高エネルギーの放射線などの環境要因がきっかけとなって時限爆弾は作動し、新たなファージの産生と大腸菌の破壊が起こる。

雑談:たとえるなら、ウイルスは、そっと偽の命令文を細胞に忍び込ませているようなものである。あなたがレシピを見ながら料理をしている時に、偽のレシピがそっと差し込まれるようなものである。あなたはカレーを作っているつもりで、チャーハンを作ってしまう。大腸菌も、自身の細胞を作り上げているつもりで(言い方は不正確だが)、ウイルスを作ってしまう。「大腸菌って間抜けだなー」と思うだろうか?ヒト細胞に感染するウイルスもたくさんある。ヒト細胞は、ウイルスに「騙されて」、細胞内でウイルスを大量に作ってしまう。







発展:ハーシーとチェイスの実験の詳細


● ハーシーとチェイスは、(放射能をもつ)放射性同位体を用いてDNAとタンパク質の識別を行った。

*P(リン)の放射性同位体である32P、S(硫黄)の放射性同位体である35Sを用いた。

● P(リン)は、DNAにはあってタンパク質にはない。S(硫黄)は、タンパク質にはあってDNAにはない。

タンパク質の構成元素:C,H,O,N,S
DNAの構成:C,H,O,N,P

*ハーシーとチェイスは、放射性同位体である32Pと35Sを、それぞれDNAとタンパク質の標識に用いた。

放射性同位体である32Pと35Sを、それぞれDNAとタンパク質の標識に用いた。






*研究者は、放射性同位体を用いた標識により、物質の位置を特定することができる。たとえば、DNAに32Pをもつバクテリオファージを大腸菌に感染させた後で、どこに放射性のリン(32P)があるかを調べることで、バクテリオファージのDNAの行方を知ることができる。

*知らなくてよいが、たとえば、バクテリオファージのDNAを32Pで標識したいと思ったら、まず、32Pを含む培地で大腸菌を培養する。そして、それらの大腸菌にバクテリオファージを感染させればよい(ファージの体は、大腸菌内の材料を使って作られる)。

● まず放射性の32Pをもつバクテリオファージを大腸菌に感染させた。結果、「大腸菌の内部」に放射性の32Pが検出された(=ファージのDNAが細菌の細胞内に入っていた)。

*大腸菌の外についたタンパク質の殻は、攪拌によって大腸菌から剥がすことができる。ハーシーとチェイスは培養液を家庭用のミキサーで攪拌し、大腸菌の外にくっ付いた物(今ではそれがタンパク質でできた殻だとわかっている。当時は、それがDNAで、DNAが細菌の中に入らないという説が残っていた)を振り落とした。その後、ハーシーとチェイスは、遠心分離(試験管をぐるぐる高速で回す)を行うことにより、大腸菌を試験管の底に落とした。結果、試験管の底から放射性の32Pが検出された→大腸菌の中にバクテリオファージのDNAが注入されていたとわかった。


● 次に、放射性の35Sをもつバクテリオファージを大腸菌に感染させた。そして上と同様の手順で実験した結果、「大腸菌の外」の、ウイルスの殻があるであろう場所(試験管の上澄み)から放射性の35Sが検出された。よってファージのタンパク質は大腸菌の中に入っていないことが分かった。


*32PはDNAに、35Sはタンパク質に含まれている。


*下図はバクテリオファージのDNAを放射性同位体(32P)を用いて標識し、大腸菌に感染させた実験のイメージ。
32Pが大腸菌とともに沈殿したことから、バクテリオファージのDNAが大腸菌内に注入されていたことがわかる。
→子ファージは大腸菌の中に作られる(ファージの遺伝情報をもとに作られる)のだから、DNAこそ遺伝子の本体であったことになる。

32Pは大腸菌とともに沈殿した。




*下図はバクテリオファージのタンパク質を放射性同位体(35S)を用いて標識し、大腸菌に感染させた実験のイメージ(ファージのDNAは大腸菌に注入されているが、描いていない)。
35Sが試験管の上澄みから検出されたことから、バクテリオファージのタンパク質は大腸菌の中に注入されていなかったことがわかる。

35Sは試験管の上澄みから検出された。




雑談:ハーシーとチェイスは家庭用のミキサーを使って大腸菌とファージのタンパク質の殻を剥がした。なのでこの実験はブレンダー(ミキサーのこと)実験と呼ばれる。

雑談:ハーシーとチェイスはノーベル賞を受賞した。

雑談:「バクテリオファージT2が細菌細胞に付着すると、大部分のファージDNAは細胞内に入り、硫黄を含むファージタンパク質の少なくとも80%は細胞表面に残る。…われわれは、硫黄を含むタンパク質はファージ増殖になんらの機能も持たず、DNAが何らかの機能を持っていると推論している。」ハーシーとチェイスの論文より




● まとめ

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講義動画【遺伝子の本体がDNAであることを示した実験】





Q&A


Q.肺炎双球菌(はいえんそうきゅうきん)って何?…細菌(原核生物)の一種。炎症の原因になる。S型菌は体表面に莢膜(きょうまく)をもつ。R型菌はもたない。

Q.ファージって何?…バクテリオファージ(「細菌を食う」が語源)とも呼ばれ、細菌を宿主とするウイルスである(したがって生物ではない)。DNAとタンパク質のみから成るので、「DNAとタンパク質、どちらが遺伝子の本体なのか?」という議論に終止符を打つのに役に立った(遺伝子の本体はDNAであった)。ハーシーとチェイスは、T2ファージ(バクテリオファージの一種)を材料として選んだ時点で、成功が約束されていたと言われる。

Q.形質転換って何?…細菌に、他の系統の細菌のDNAを加え、その遺伝形質を変化させることを形質転換という。簡単に言うと、むき出しのDNAが、ある細菌から他の細菌へ移行することである。原理についてはわかっていないことも多い。現在では、様々な生物において、人工的に形質転換を起こすことができる。

Q.いろいろ実験が書いてあるけれど、一体何が言いたいの?…今では当たり前になっている「遺伝子の本体がDNAである」ということを示すまでの歴史的な実験について書いてある。昔は、タンパク質が遺伝子の本体であると誤って理解されていた。DNAは、遺伝子であるタンパク質をまとめる紐のようなものと思われていた。

Q.遺伝子=DNAでいい?…あまりよくない。遺伝子は、DNA上の、ある長さをもった特定の領域である。教科書の表現通りに、「遺伝子の本体はDNAである」と捉えたほうがよい。高校範囲を超えて細かいことを言えば、塩基配列の外の情報(塩基やタンパク質の修飾[飾りつけみたいなもの])が、細胞分裂を経ても引き継がれることがわかっている。つまり、遺伝情報は、DNAだけにあるわけではないという見方もできる(塩基配列以外の遺伝情報をエピジェネティクスという)。



雑談:ウイルスについて