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211021【あっさり別れて】

亀有に住んでいた彼女の話の続き。だらだらと思い出して今週も。んで、今週で終わらす。

彼女と交際していて、お互い平日は忙しく、それでも自分は彼女の部屋に泊まりに行くことを諦めなかった。そんな中、亀有駅で降りない、寝過ごしてしまう事象がお互いに起きた。

自分はその日、千代田線から常磐線緩行線直通になる路線で亀有を目指すのだが、0時近くの千代田線は比較的車内は空いていて、いつもなら北千住駅で座れるところ、西日暮里あたりで目の前の席が空いた。自分は全身の体重をかけて席に着く。そして、寝落ちしてしまった。

目が覚めると、電車は松戸駅を発車していた。やっちまったと思い、次の駅、北松戸駅で降り、反対方向、上り電車を待つが、ホームの電光掲示板には、松戸駅止まりの最終電車しか残っていなかった。時刻は25時を過ぎ、とりあえず、松戸まで戻り、ホームに降り、改札を出た。彼女の自宅、亀有までタクシーだと4、5000円かぁ。払えない額じゃないけど、キチィなぁ。とりあえず、彼女の連絡を入れ、日頃の運動不足もあるんだから、歩いて帰ることにした。約2時間のナイトウォーキング、いや、ミッドナイトウォーキング。江戸川を渡り、中川も渡った。彼女の部屋に着いたのは、27時過ぎだったか。彼女を起こさないように部屋に入り、そのままベッドの下で横になった。

一方で彼女。自分は、その日、彼女の部屋でサッカーW杯を観ていた。時刻は24時を過ぎているのに、LINEの返事がない。

「先に部屋に着きました。」

「サッカー観てます。」

「先にシャワー浴びてるよ。」

「あれ、どうした?」

ようやくLINEが返ってきたのは、25時過ぎ。

「ごめん、寝過ごした。今からタクシー。」

まあ、そんな日もあるよねと思い、自分は引き続きサッカーを観て、時間を潰していた。まあ、同じ、松戸くらいまで行ってしまったのだろう、そう思って彼女の帰りを待つが、それにしても遅い。26時過ぎ、ようやく帰ってきた彼女は、「やっちゃった。」呟いた。寝過ごしたの、何処まで?と聞くと、「南栗橋」と返ってきた。おいおいおい、常磐線じゃないじゃないか。直通電車の恐ろしさと、彼女の座席での睡眠力に驚いた。寝過ぎでしょ、その電車の終着駅まで行っているじゃん。そして、タクシーの金額。2万円掛かったとのこと。今、グーグルMAPでちょっと調べたけど、約65kmあるじゃん。疲れていただろうけど、彼女に今後は気をつけよう、と最低限の通達はした。こんな事で2万円の代償はデカイのだ。テレビで流れていたサッカーの試合は覚えていなかった。

その週末、パブリックビューイングに行こうと彼女と予定していた。場所はスポーツバーではなく、辿り着いて東京ドームだった。日曜日の午前中、野球ではなく、地球の裏側で行われているサッカーW杯の観戦をした。そこには友人も誘い、彼女初めて紹介する場も設けた。ちなみに、皆日本代表のレプリカユニフォームを着ているが、サッカーに関しては、皆ミーハーだ。彼女にも2010年の日本代表のものを着せて、観戦することにした。彼女はパブリックビューイングが初だったらしく、隣でワクワクしていた。ただし、その日、試合後半の時間帯にて、自分は渋谷に移動することになっていた。試合終了後の渋谷スクランブル交差点での様子の撮影の仕事が控えていたからだ。なんで、こんなお祭りを楽しむ日なのに、途中で抜けなきゃいけないの?と彼女に言われたが、そこは申し訳ない、ブラック企業なのだし、その瞬間のスクランブル交差点を伝える義務があるのだ。

試合は、前半に日本が1点を取り、後半に入った。会場は盛り上がりを増し、グループリーグ初戦の勝利が見えてきた。そんな中、自分と彼女は水道橋から渋谷を目指した。ちょっともったいない、この雰囲気の中にずうっと居たいのだが、仕事だ。渋谷を目指す、中央線緩行線の車両内、スマホ越しにサッカーの速報を観ている乗客が居て、自分もその一人。さすがにサッカーユニフォーム姿で仕事をするのはどうかと思い、シャツを上に着た。そして、その電車の中で、日本は1失点、そして、代々木駅で山手線に乗り換えする際に再度失点、逆転をされてしまった。渋谷駅に降りた時、日本が負け、コートジボワールが勝ったのに関わらず、スクランブル交差点、行き交うファンはハイタッチを繰り返し、行進をしていた。その様子を、自分はカメラを抱えて撮影していた。それが仕事だからだ。アシスタントには彼女を配置し、撮った動画は、その場で居合わせた代理店に渡した。彼女は面倒くさそうな顔をしていたのは事実だった。有難う、その節は。

そんな、サッカーW杯が終わる頃、彼女に言われた一言が思い出に残る。

「ねぇ、ウチの会社、継ぐ気はある?」

そうそう、彼女の親は会社を経営していて、地方で教育商材、わかりやすく言えば小学校に教科書を納品している会社だった。ということは、彼女は社長令嬢にあたっていた。

「今は考えてないかな、東京で働きたい。」

そう答えたのだけど、これは、別れの原因の一つだったのかもしれない。いや、自分が彼女に対してどう思っているか、天秤にかける一種の罠だったのかも。

それが別れるきっかけの一つなのか分からないけど、彼女は面食いだったし、彼女の友達に紹介される度、「へえ、以外な人と付き合っているんだね。」と言われた。

失礼な、まあ、一理あるし、自分はどうも顔にコンプレックスがあって、カッコよくないし、オシャレでもない。そんな自分を半年間でも受けて入れてくれた彼女。寝る前に「私たち、相性、良いよね。」って言ってくれた彼女。

その別れは、いきなり訪れた。

7月の終わりの週末金曜日、いつもの感じでLINEをする中、仕事終わり、上野で落ち合い、昭和通りに面した居酒屋に行った。そこで、乾杯をして早々、彼女から別れの話を切り出された。

別れの原因は、はっきりしてないのだけど、彼女側が、自分と分かれたい気持ちが強く、自分はビールを進ませながら、「分かりました。」と答えた。ただ、その夜、自分は自宅に帰らず、彼女の部屋で一泊することにした。
ただし、彼女のベッドには入らず、ベッド下で、小さくなって夜を越した。

朝になった。別れの朝だった。彼女の部屋にある自分の最低限の下着や着替えを回収し、ビジネスバッグに詰めた。彼女を部屋を出る際、最後に彼女に合鍵を渡した。彼女からは、自分の部屋の合鍵を受け取った。

「アナタの部屋にある服は、捨てておいて。今までありがとう、じゃあ、元気で。」

もちろん、二人のスキンシップも何もなく、玄関が閉められた。

土曜日の朝、自分は亀有の街で何か、開放された。なにか、未練があるのかと思い、涙の一つでも流そうかとしたが、涙が出てこない。単純な、軽い恋で終わったのだろう。あの時、「跡継ぎ、オレがするよ。」と言ったところで、人生が変わるわけもないし、別の男ができたのだろうと思ったり。色んなことを思いながら、ビジネスバッグには入らず、ノベルティらしきトートバッグに詰め込んだ着替えで帰路は重かった。そうそう、朝ごはんを食べていなかった、昨夜の件もあり、何か腹にたまるモノを食っていなかった。立ち食いそばでも牛丼でも何でも良い、たぶん、味はしないのだろうけど。亀有、味なんてもちろん覚えていないけど、牛丼、もしくは立ち食い蕎麦で腹を満たして東京の東側から東京の西側、世田谷を目指す、いつもより千代田線が長く感じた。

自宅に返って、ジャケットを脱いで、スラックスを脱いで、Yシャツを脱いで、横になった。そう、それから、彼女から指示された収納ケースに入っていた彼女の下着の処分、そのままだった。

「あれ、最近、彼女は?」

友人から、嫌な質問が飛んでくる。ああ、そうか、大学最寄りの月イチのイベントにも、彼女と顔を出して、紹介したこと、あったっけ。別れたよと、ピアニッシモメンソールくらい軽いカミングアウトをした後、Facebookで彼女の名前を検索してみる。そうそう、付き合っていた時は友達だったのに、別れてから、友達を解除された。その彼女のタイムラインには、新しい男と、代々木公園で撮っている写真がアップされていた。おそらく、ダンスで知り合ったのだろう。絶対言える、自分、彼より上手いダンスは踊れないけど、お前より面白いって。ただ、自分と付き合っていた時は、一枚も写真載せなかったのに、今度の彼氏はイケメンか、すぐ載せやがって。

ここまで、書いて、ようやく元カノの下着を捨てれそうだ。

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