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211125【大学祭実行委員会に入部する】

大学の劇団サークルにて、新入生歓迎公演なるものをその日の午後に観て、自分の好きなタイプの子がヒロインで、目の前で演技ながらもディープキスをしていて、それを観て、何か“奪われた”感に襲われた夕方。キャンパス内では、金曜日でもあり新歓コンパの勧誘が繰り広げられていた。

中には、参加費無料、お酒がタダで飲める、その代わりウチのサークルに入ってもらいますよ。みたいな暗黙のルールが敷かれていたと思う。昔の話ではないが、今の時代よりおおらかな時代だった。良くない話かもしれないが。キャンパス内で飲酒なんていつの時代も許せないし、新歓コンパの勧誘において酒を飲んでいる先輩、学生は居なかったが、早く居酒屋に行きたい、可愛い後輩と酒が飲みたい、それが本心だったと思う。その中で、大学生協の食堂で行われる新歓コンパの誘いを受け、自分は飛び込んだ。参加費は無料、お酒の強要もなく、ウマい飯が食えるなら、行ってみよう、ということで会場に入った。そこは、大学祭の実行委員会なるサークル、サークルというか部活動だった。

大学祭、学園祭、文化祭。自分が中高生の時は田舎の公立高校で、派手な演出は無く、芸能人が来ることもなかった。都会の私立大学の大学祭を覗くと、OBOGなる芸能人が出演、トークライブにお笑いライブ、ライブパフォーマンス等魅力的なコンテンツで溢れている。そんな大学祭の実行委員会の新歓コンパは、ほのぼの感があり、平和は時間だった。アルコールの提供はなく、簡単な活動の紹介に、円卓を囲った新入生でグループを組み、クイズに答える、景品は大学のキャラクターグッズ、といた形だ。クイズに対して、回答用紙なるスケッチブックに、ボケたがる学生が何名かいた。そのつまらない回答を見て、自分も血が騒ぎ、回答に参戦した。こういうところでは、弱い者いじめは良くない。ただ、強い者が目立つだけだ。自分の回答がクリティカルヒットしたかどうかは別として、先輩部員やその場で集った新入生にインパクトを与えた形になった。そして、会は後半、「よろしければ~」の常套句を引っさげ、部員勧誘に繋がった。この手の部活動は、有名なOBOGを輩出し、大手企業へのコネクションもあるんじゃないのかとほくそ笑み、「うん、考えておこう。」とブックマークをしてその日を終えた。

その日以降も、あらゆる勧誘がキャンパス内、何も分からない自分の視界に入ってきた。演技には興味があるが、自分、滑舌悪いし、囲碁将棋部に女子を求めても良くないし、まあ、特にやりたいことが見つからないため、大学祭実行委員会の入部案内日に部室に行った。あの時、広告研究会みたいな社会人になっても役に立つサークルに入ればとちょっと後悔している。まあ、別に失敗ではなかったかなと思ったり。

大学の講義、2限と3限の間にある60分の昼休みなる時間、大学祭実行委員会の部室に入った。そこには、先日の新歓コンパとほぼ同じ顔ぶれが揃っていた。飯を食わせて、獲物を獲る姿勢は、新入生も女性も一緒なのか。そこには、繰り返しになるが、活動の紹介から入り、入部届の用紙が配られた。また、一週間のスケジュールや、11月に控えている大学祭当日に向けてのスケジュールが記載された用紙をいただいた。今はどうなっているか分からないが、自分がそれからお世話になった大学祭実行委員会は、企画部、広報部、装飾部、財務部と組織化され、さらにそこから役割が細分化されていた。企画部か広報部か、あの時、広報部を選んでいたら、社会人に出た際に活用できそうなスキルを得られたかもしれないが、なんかステージ企画でも考えられたら面白そうだなぁと思い、企画部を選んだ。その時、企画部の同志と今でもつるんで酒を飲んでいるんだから、人生は面白い。

所属の部を決め、その週の全体会にて、新入生は一同した。場所はキャンパス内の講堂であった。講堂といっても、当大学内では狭い方の部屋。それでも100人以上は入るキャパシティ。そこに、先輩部員が今週の活動報告他を行なう中、新入生も群をなしていた。

全体の部員は70人くらいだった。そこに20数名の新入部員が集った。
20数名、という表記に留めるのは、その後、早々に幽霊部員になったり、「あいつ、どうしている?」「部費、納めてないらしいぞ。」他いろんな部員が居たからだ。20数名、いや、4月時点では30名以上居たかもしれない。とりあえず、男女比率は7:3くらいだったと思う。周りを見る。「お前は、大学祭を作る側じゃないだろ。」と思ったチャラついた学生がいた。新歓コンパから見て、結構真面目な部活動だぞ、ここと。人を見た目で判断してはいけないが、大学デビューなのか、オラオラしている新入部員が何名かいた。その、オラオラしている部員とは仲良くなれなかったし、案の定、いつの間にか消えていた。

全体会にて、新入部員はお決まりのような自己紹介をさせられた。なるべく、印象に残らないよう、無難な言葉でまとめるが、どうも新歓コンパの際にクイズでエッジに効いた回答を繰り出したせいか、「あいつ、企画部希望か。」と無駄な噂が回っていたようだ。

全体会なる会議の後、新入部員の男性陣はまとまってメシを食いに街へ出た。大学1年生の男子が10数名で中華料理屋に押しかけた、とりあえず同じ部活に入ったこと以外、何も育ってきた環境、ベクトルが違う中、ひょんなご縁でここにいる。意外と話が盛り上がり、皆が「女にモテない」という共通項もあり、「まあ、頑張ろうか。」と肩を組んだ。ただ、何故せっかく大学生になったにも関わらず大学祭の裏方を任されるんだ、という疑問も付き纏い、離れていく者、羽ばたいていった者を自分は見ていた。なんせ自分はチキンで空を飛べない、なるべく微温湯で漂っていたいのだ。そんな身分に、丁度良いのだと気づいた4月の終わり頃、企画部の中で自分は担当をいただいた。

「矢口、お前今年、芸能人担当な。」

芸能人担当、大学祭によって差はあるかと思うが、自分の大学祭では、大学祭当日、出演する芸能人について、マネージャーのように振る舞い、朝から夜までサポートをする、そんな感じだったと思う。今となっては、思い出して書き出すしかないが、良い経験だったと思う。ステージ企画の台本起こしから進行管理までやらされるより、楽だった。毎年一人だけ、唯一の担当だし。

4月の終わりに、「芸能人担当」を言い渡され、その肩書だけをもとに、入部後の企画部の歓迎コンパが行われた。何度、飲み会をしても飽きないのが大学生であり、大学生活の4年間、何度横浜駅の西口で飲んだことだろうか、これは追ってゆっくり書きたいし、アホなエピソードが蘇ってくる。「大学祭を創る」とはいっても、一大学生に過ぎず、今だったら動画配信、起業する、なんてザラかもしれないが、それなりの尺度で楽しんでいた大学時代。特殊な担当を持った自分は気分良く歓迎コンパに参加した。新入生を挟むように先輩部員が席に座る中、自分はひとつ上の先輩の隣に挟まれ、座った。

3年生の部長による挨拶の後、宴は始まった。なるべく新入生である一年生に会話の中心が来るよう、丁寧なセンタリングが上がる謂わば飲み会。自分は、隣に座った一個上の女性の先輩と最低限の会話から、酒が進むとともに盛り上がりだした。この頃から、その素質はあったのかもしれない。
自分の隣に座った酔っ払い出した女の先輩は、自分の耳に息を吹きかけてきた。自分は、ヤラれたままでは、というか、これは飲み会の定義ですよね、と言い聞かせ、彼女の耳にも息を吹き替えた。

「ふぅ~。」

すると、既に赤い顔をした先輩は「へたくそぉ。」と呂律が回らない中、言こっちを向いて叩いてきた。そんなプレイは自分と彼女だけの飲み会で、またしも目立ってしまった中、部長である先輩は、焼酎をロックで一気飲みしていた。自分は当時、どういう状態だったのか、まったく分からなかった。この部活動での、楽しいような悲しいような、ちっぽけでアホくさい大学生活の中心が動き出した瞬間だった。

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