タイトルに「!」をつけるなんて、なかなか強気なビジネス書だなー、なんて思ってたのが最初の印象だったのですが、各所から良書だと聞いて手に取ってみたところ、とても示唆深く勉強になる本でした。
原題の"Better, Simpler Strategy: A Value-Based Guide to Exceptional Performance"の方がわかりやすくて好きかも。
ハーバード・ビジネス・スクール教授のフェリックス・オーバーホルツァージー氏が提唱する「バリューベース戦略」について、いろんな優良企業の成功事例とともに解説されています。
「バリューベース戦略」については、ハーバード・ビジネス・スクール公式ブログにもあった以下の図解がわかりやすいです。これをValue Stickと呼ぶそうです。
本書では、企業が成功するには、より大きな価値の創造にフォーカスすべきで、価値創造には
・WTP(Willingness-to-pay)を上げる
・WTS(Willingness-to-sell)を下げる
の2つの方法しかない、と説明しています。
自分にとっては新しい言葉だったものの、馴染みある企業や日本の会社(トヨタやラクスル社)の事例を交えながら紹介されているので、スッと入ってきやすかったです。自分の仕事におても、今後プロダクト戦略や事業戦略を考えるうえで参考にできそうと感じました。
以下、本書から印象に残った点を抜粋・コメントしておきます。
"価値"とはWTPとWTSの差。
WTPを高める手法3つ。
価値は以下3つに分割できる:
1. Customer Delight(顧客歓喜)= WTPと価格の差
2. Firm Margin(利益)= 価格とコストの差
3. Supplier Surplus(サプライヤー余剰利益/従業員満足) = WTSとコストの差
再掲:
わかりやすい。
WTPを上げる手段の1つ、"より魅力的な製品"の事例としてAmazonのKindle開発秘話がおもしろかった。電子書籍リーダーとして先行してたソニーのは"製品そのもの"の質(読書体験)を上げることにフォーカスした一方、Kindleは3Gインターネット接続機能をつけてWTPを上げることに集中。"より魅力的な製品"にするには、製品そのものではなくWTP(この場合だと読書の前後に付随するJobを含めた総合的な体験)にフォーカスしないといけない。
他にも、トヨタのカローラがダサかったけど大ヒットした話、中国でタオバオとアリペイが新規ECユーザーの市場を開拓し当時シェア最大だったebayを中国撤退まで追い込んだ話、などの事例が紹介されていて勉強になりました。
かの有名な「ミシュランガイド」は、主力製品の"タイヤ"や修理サービスのWTPを上げるために始まった補完製品。
補完製品と代替製品の区別は難しい。多くの場合、人は新しいテクノロジーを代替製品だと勘違いしてしまう。(現代だとAIやChatGPTにも通ずる話)
なるほど。
ラクスルのサプライヤーWTSを下げた事例はめっちゃ勉強になりました。
御意。
トレードオフの意思決定が真のエクセレンス。
良い戦略 = 価値創造 = WTP上昇/WTS低減によりバリュースティックの高さを拡大すること。かつ、現場レベルで理解できるシンプルなもの。複数のバリュードライバー(価値を作る取り組み)の中から絞り込んだトレードオフのうえに成り立つもの。
さいごに、マイベストCSO岸本さんの図解がわかりやすすぎたので勝手ながらメモとして引用させていただきます。