アップル製品はアートか?

 身近な芸術について考えた時、私はアップルのパソコンを想起した。2000年初頭の日本でも革新的なパソコンメーカーとして知られ新製品が販売される度にアップルストアに行列ができる様子がテレビやマスコミで取りあげられ一世を風靡されたアップル社。 中でもジョブズがプレゼンテーションを行った製品は美的テクノロジーと技術が融合したアート作品であると考える。その理由を製品について述べながら論じていきたい。

 アップル社はアメリカ合衆国のパーソナル・コンピューターおよび周辺機器、ソフトウェアの大手メーカー。1976年にスティーブ・ジョブズとスティーブン・G.ウォズニアクがカリフォルニア州クパチーノでアップルコンピュータを設立。1977年,大量生産による個人向けパソコン,アップルII Apple IIを発売。それまでの組み立て式ではなく,パソコン本体・キーボード・ディスプレイ一体型(→デスクトップコンピュータ)を初めて実現して一世を風靡し,愛好家はもとより一般家庭でのパソコンの普及に貢献した。(中略)2001年,小型携帯デジタル音楽プレーヤ iPodを発売し,2003年にはインターネットを通じた音楽配信サービス iTunesミュージックストアを開始した。2007年1月,現社名に変更。同年スマートフォンの iPhoneを発売,携帯電話業界へ進出した。

 まず第一にそれまでビジネス向けに作られていた組み立て式のパソコンを一新した家庭用のパーソナルコンピューター「アップルII 」がウォズニアクによって作られる。当時としては珍しいディスプレイとキーボードが単一にパッケージされ今のデスクトップコンピューターに相当する製品で後世のパソコンの原型にもなった。組み立てをしなくても簡単に扱える家庭用パーソナルコンピューターは商業的に大成功を納めている。しかし、ジョブズは納得していなかったようである。ジョブスは技術者ではなかったが、これは美しいとか、これは必要ないなど自分自身のアイデンティティをはっきりと認識していた。大学では必修科目を取らずにカリグラフィーの授業で文字の歴史やデザインについて学び、他にも宗教や芸術についても造詣が深かったようである。これは、後に感性的に美しい製品を生み出す大きな土台になっていたと考える。彼の頭の中にはすでにこれまでにない美しいデザインとユーザーインターフェイスを搭載したパソコンが存在していたのである。これはプラトンの美のイデアに相当するのではないだろうか。

 そして、アップル社はグラフィックユーザーインターフェイス(GUI)を採用した初代「Macintosh」を販売する、今は当然のように使っているマウスもこの時登場した。文字情報を入力する必要があったパソコンの立ち上げを簡素化し、グラフィックにカーソルを合わせて押すだけで操作ができるメニューやアイコンにより直感的に操作ができるパソコンを発明したのである。  哲学者カントによれば、人類の共通感覚によって普遍打倒な価値を与えていると判断された対象は美的であると判断できる[註3]と述べているが、GUIの搭載は普遍的な価値を体現した革新的なシステムであったと考える。紹介した以外にもimac、iphoneなどその後もアップルは無駄なく洗練されたデザインで使いやすい製品を次々と発表してきた。iphoneに至ってはどこにいても簡単に意思疎通ができるようになり人間の行動に大きな変革をもたらしている。

 ジョブズは美的なものを見極める判断力と強力なコミュニケーション力によってある意味で独裁的にエンジニアと協働することで理想的な製品を発表してきたが、エンジニアをアーティストと呼びマシンの内側にサインをさせたという。技術者を芸術家として考えていた現れでないだろうか。つまり、アップルの製品は芸術作品であると言っても過言ではないのである。


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