【武器になる哲学】17 ゲマインシャフトとゲゼルシャフトーかつての日本企業は「村落共同体」だった

ゲマインシャフトは地縁や血縁などによって深く結びついた自然発生的なコミュニティのことです。一方、ゲゼルシャフトは利益や機能・役割によって結びついた人為的なコミュニティのことです。

テンニースによれば、人間社会が近代化していく過程で、地縁や血縁、友情でふっかう結びついた自然発生的なゲマインシャフトは、利益や機能を第一に追求するゲゼルシャフトへシフトしていくことになります。

テンニースはさらに、社会組織が「ゲマインシャフト」から「ゲゼルシャフト」へと変遷していく過程で、人間関係そのものは、疎遠になっていくと考えていました。

さて、それは本当なのか。テンニースはヘーゲルの少し後、マルクスとほぼ同時代を生きた人です。そのせいもあるのでしょう、全般に「歴史はどこかの終着点に向かって不可逆的に進展する」ということが、どこかで暗黙の前提にされているようなところがあります。

「企業というコミュニティ」は、テンニースが本来の意味で言ったゲゼルシャフトと言えるのかというと、どうも微妙なんじゃないか、というのが著者の考えです。なぜそう思うのかというと、いわゆる三種の神器、すなわち「終身雇用」「年功序列」「企業内組合」があったからです。なぜ、この三つがあると「高度経済成長期の企業はゲゼルシャフトではなかった」ということになるのでしょうか?

つまり三種の神器というのは

  1. 一生面倒をみます

  2. 年長者を大事にします

  3. 団結して個人を守ります

ということを言っているわけで、要するに村落共同体において暗黙の前提になっていた約束ごとと同じなんですね。まさしく一旦崩壊しかかった村落共同体というゲマインシャフトを、企業という別形態のゲマインシャフトが受け継いでいったと考える方が妥当だろうと著者は思うわけです。

今日では、少なくとも大企業におけるゲマインシャフト的な要素はすでに完全に崩壊しており、やがてはアメリカに象徴的に示されるような完全なゲゼルシャフトに移行すると考えられます。では、戦前には村落共同体が、高度経済成長期からバブル期までは企業が担っていた、社会におけるゲマインシャフト的な要素は、何が担うことになるのか。

鍵になるのが「ソーシャルメディア」と「2枚目の名刺」だろう、というのが著者の考えです。

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