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学校に行きたくない

友達のいなかった自分は、学校に行くのが嫌いだった。

しかし自分が子供の頃は今と違って、教師も親も、学校に来ない子供には厳しかった。特に自分はよりによって父親が教師という家庭環境だったので、理由もなしに学校を休むことは許されていなかった。

その上、よりによって母親が看護師という家庭環境であったため、一番簡単に学校を休む《仮病》という方法が使えなかった。
体温計を擦って発熱を工作しても「熱があるようには見えない」と額に手を当てられて一発でばれてしまい、その失敗を踏まえて次は体温計だけでなく額を思い切りタオルで擦ってみたが、やりすぎて額の真ん中を摩擦火傷し、また一発でばれた。

だから自分は一生懸命、病気以外で学校を休むための理由を考えた。
ただ、昔から少し頭がおかしかったので、どれもあまり一般的な理由ではなかった。
「靴を履こうとしたら金縛りになったので学校を休みたい」とか、「学校に行く途中に自分のドッペルゲンガーを見たから学校を休みたい」などと独創的な理由で学校を休もうとしては、親をうんざりさせていた。
ちなみに、これらの理由を考えたのは小学校低学年などではなく、中学生の時のことだ。自分が親ならカウンセリングを受けさせていただろう。

そんなある日、自分は学校の視力検査で急激に視力が落ちていることが分かり、眼科で診てもらうことになった。学校には遅刻して行くはずだったが、その眼科で検査のために、瞳孔を開く目薬を塗られた。
薬を塗られると目が光を調節出来なくなり、その日は天気の良い日だったので、病院の外に出ると辺りが白く輝いて何も見えなかった。

これでは道を歩くのは危険だと考え、家に電話して「お母さん、太陽が眩しいから今日は学校休みたいんだけど」と珍しく本当のことを訴えた。

母は一瞬絶句したものの、すぐに状況を理解したらしく車で迎えに来てくれて、そのまま学校に連行された。
学校に着く頃には薬の効果は切れ、結局その日も学校を休むことはできなかった。

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