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三つ子の魂百までも(9)


9

「顔は、----。ここに似た人がいるのです。もしかすると、その男かもしれません。」

「その男って。ここには男は一人しか居ませんが?」

「でも、その男に似ているのです。瓜二つみたいに、似ているのです。」

僕は、その言葉を聞いて唖然とした。ストーカーなどしていない。
アリバイだってある。

僕は、どの様な態度をとって良いか分からなかった。
裕美さんは不思議そうに、僕の顔を覗き込んだ。

「でも、顔は似ているのですが、体格が全く違うのです。
あちらの男は、細身ですが、こちらの人はガッチリしてます。
メガネも掛けて無いですし、別人にも見えるのです。」

「別人だと思いますよ。杉田は、午後5時は事務所に居ますし、
此の一ヶ月は仕事で、デパートに行く事は出来ませんでした。」

と、代表は僕のアリバイの証明をしてくれた。

「そうですか?他人の空似ですね。」

「今回の場合は、ストーカーの人も分かっていますし、調査は簡単だと思います。先ずはその男の身元を調べて、あまりしつこければ、警察に相談、または弁護士に相談し法的に処置するかどうかを決めましょう。」

「そうですか、別人なのですね。さっき見た時、びっくりしました。調査は簡単ですか?良かったです。これで解決したら良いのですが、----。お値段はお幾らになるのでしょうか?」

価格の相談があった後、美乃は了解してくれた。

僕は代表に呼ばれ、美乃に紹介された。
「私の名前は杉田公一と言います」と言いながら名刺を差し出した。
美乃は不思議そうに、僕の顔を見ながら言った。
「本当に似てますね。体格は違いますが、顔はそっくりです」

「そういえば、私の大学時代に私と同じ顔の人がいました。もしかすると、その人かもしれません。
私としては、複雑な気持ちですが、--。でも、私では無い事が分かってもらえて嬉しいです。」

「すいませんでした。疑って。宜しくお願いします。」
と言って美乃は手続きを終え帰って行った。

「本当は、コーちゃんじゃ無いの?」
と裕美さんが、からかう様に僕に言ったが、
代表は真顔で

「あのチラシの成果で最近は依頼者も増えたね。
今回はストーカーだし、相手も分かっているので、楽だとは思うけど。油断しない様に、打ち合わせは明日叔父さんが来てからします。これだけ忙しくなったら、私、キャバ嬢を辞めないといけないね」

と嬉しそうに言った。
「そうですね。直美さんは、キャバ嬢よりも探偵の方が似あってますね。」

「じゃ、私は何が似合っているのよ?」
と裕美さんが、少し妬いた様に聞いてきた。

「裕美さんは、---。女優さんです。剛力彩芽に似てるし。」
と言葉に詰まったが、無難に答えておいた。
僕も、大人になったみたいだ。
ということで、今日の日は終わった。






懲りずに掲載。
売れないKindle作家
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