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殺人ロボット(17)

17
このホテルに今回のターゲットが泊まる
時刻は午後3時を過ぎた頃である。

ターゲットの部屋は毎回同じ部屋で、スイートルームだそうだ。
此処で会議をするとの事だが、何の会議は聞いてはいない。

俺には、全く関係がない。
此処にくるターゲットを仕留めるだけだ。
ターゲットの名前はまだ聞いて無いが、
おそらく権力者か金持ちであろう。

俺はスイートルームの隣の部屋に入る。
組織から予約された部屋である。

組織は、この部屋を改造していた。
天井の壁をくり抜き、
天井裏から隣のスイートルーム入る事が出来る様にしたのである。
さらに組織はスイートルームには隠しカメラを設置したのだ。

映像を見れば、誰が居るのが解る。
そして、一見しただけでは隠しカメラの存在も、
天井の壁のくり抜きも気がつく事が出来ない。
それほど精妙に造作されていた。

天井裏を伝い隣の部屋に侵入するのだが、
本当に要領の良い組織である。
裏を返せば、それ程の力を持った組織ということになる。

俺は組織の一員だが、組織の事は何も知らない。
何も知らせてはくれない。
私は単なる、「殺人ロボット」
忠実なロボット。

感情の消えた俺には、「殺人ロボット」が俺に似合った最良の仕事だ。

ターゲットの名前は知らないが、
いつもの様に顔写真のみ見せられる。

今回も、iPadで顔を確認する。

…何処かで見た顔だ!…
だが、そんなことはどうでも良い。
顔さえ覚えておけば充分事が足りる。

いつ、決行するかだ。
隣の天井裏に入り、スイートルームの天井裏に進出する。

汚い! 蜘蛛の巣が散乱している。
天井の高さは低いが広さは充分に広い。
歩伏前進でやっとの思いで
くり抜かれた天井の場所に着く。

iPadで盗撮画像を確認したが、まだ誰も居ない。
誰も来てはいない。
早く来すぎた。だが戻るのはおっくうだ。
「此処で待とう。」と結論付けた。

どうしたことか、睡魔が俺を襲う。

俺は天井裏に息を潜めたいたのだが、
気がつくと時刻は午後の九時を過ぎていた。
……しまった!寝てしまったか!……

よほど、疲れが溜まっているのだろうか?と反省したが、
寝ていたおかげで、ターゲットが映像に映っていた。
映像にはターゲット以外誰も映し出されてはいない。

絶好のチャンスだ。速やかに仕事に掛かろう。
殺し方は簡単。
突然死に見せかける毒を注射するだけ。

いかに騒がれずに殺すか?だけを注意すればいい。
私は静かに、天井の壁を外し下に降りていく。
男は、ベッドに横たわっている。
寝ているみたいだ。

静かに、俺は男に近づき顔を確認する。
間違いないターゲットだ。
男は瞼を閉じている。

息を殺しそっと近づく、俺。

「遅いじゃないか!待ちくたびれたよ。」と、
言いながら
男は俺の首に腕を絡ます。
…待て、俺はそんな男じゃない…
と、思わず言いかけて言葉を呑む。

異変に気づいたのか、男は目を開ける。

「な、なんだ、お前は。・・・何処から入ってきた」
と、俺を突き放すが、俺はしっかりと男を捕まえていた。

…騒がれると不味い…
速やかに用意の注射を男に射つ。

これで終わり。男はまもなく死ぬ。

だが、男は俺に襲いかかってくる、
殴り合いになるが、私の方が断然強い。
殴られ倒れる男。
歯ぐきから血が滲んでいる。
顎には殴られた傷痕が残っている。
男はまだ死んではいない。

予想外の出来事。
…しまった、これでは病死に見せることが出来ない。…

思案している時に後ろから物音がした。







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