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殺人ロボット(14)

14
その、日曜日が来る前に俺は仕事をさせられた。
…もう辞めたい。殺しなんて嫌だ!…
と、心で叫んでも虚しだけ。

俺は加山祐二。石田太郎では無い。
仕事は完璧にこなした。
多額の報酬が振り込まれていた。

待望の日曜日。
私は「紅茶の美味しい喫茶店」に向かい
先に愛子さんを待つ。

…今日は愛子さんと二人っきりだ!…
と、想っていたら、あの化粧の濃い女も付いて来た。

どうやら、愛子さんは加山祐二を警戒しているみたいだ。
愛子さんのその慎重な性格も好きなところでもある。

初対面では無いので簡単な挨拶を済ませて
椅子に腰を下ろす。

この喫茶店は、「紅茶が美味しい」と評判であり
お客さんも常連の人達だ。
以前、私も何回か来た事がある。

広さはこじんまりとしてはいるが、
テーブルは四人掛け席が3席
カウンターに四人ぐらい座れる。
木材を多く使いコンクリートは見えないように設計されているみたいだ。

古びて見えるが、その様な演出は素朴な感じで好感が持たれている。

私達は、テーブル席で話をした。

前回会った時は厚化粧の女は、俺を警戒してか
愛想が無かったが、今回は違った。
俺を見つめる目に色気を感じさせる。

……誘惑する気か?!
残念だな! 誘惑なんてされないぜ!
俺は、愛子一人だからな!……

話は石田太郎の事から始まった。
(愛子は石田の事を本当に愛していたのだ。)
と、私は感じた。


愛子の話お聞きながら、「私が石田太郎です。」
と、名乗り出たかったがそれは当然出来ない。

私は愛子に伝えた。
石田太郎自身になって。
「太郎君は今は海外で暮らしています。
残念ですが、
日本には帰る事はないです。
私は、太郎君から貴女に渡す様に頼まれたものが有ります。」
と、小さ目のアタッシュケース愛子に差し出した。
此処には1000万円入っている。

「太郎君は愛子さんのお父さんが借金を抱えていると聞いて心を痛めていました。
このお金で足りればいいのですが、
先ずはこれだけ渡して欲しいという事でした。」

「何でしょうか?これは!」
と、愛子さんは躊躇いと、不審感を持つ目で
私を見た。
目を輝かしているのは、隣の厚化粧の女。

「これは、太郎君からの気持ちです。『貴女の苦しみを少しでも緩和させたい』と言う彼の想いからのお金です。どうぞ使ってやってください。
太郎君の気持ちを叶えてやってください」
と、熱の籠った言い方は、いつもの冷酷な加山とは違う。
まさに今の自分は石田太郎だ。

「でも、わたし・・・。そんな、困ります・・」
と。内心は解らないが愛子は拒んでみせた。

「愛ちゃん。好意に甘えてみてわ?
今悩んでいるんでしょ。あいつの事で。」

「でも、・・・。・・・。」
愛子は言いかけて辞めた。

「でも、何!?」
と、厚化粧は聞く。

「・・・私、婚約してしまったの。」

…婚約!誰と?……







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