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(新々)三つ子の魂百までも 30



「修君、写真撮ってくれた?」
と、林田は修の顔を覗き込む様に云う。
「撮りましたが、上手く写っていないかも知れません。」
と、言いながらカメラを林田に差し出した。

嬉しそうに受け取る林田。

裕美さんはタオルで、汗を拭っている。
その表情に疲れの色が見える。
……大丈夫だろうか?
一人だけで辛い想いをして頑張ったんですね。
僕が貴女を癒やしてあげますよ……
との想いで裕美さんを見つめた。

僕の視線を感じたのか、裕美さんは優しい眼差しで僕に微笑んでくれる。

「お疲れ様です。裕美さん。
ご苦労様です。」

「ありがとう😊。でも、そんなに疲れてはいないよ。」
と、僕に言ってくれた。

時刻は午前3時を少し過ぎている。
裕美さんは、立ち上がり炊事場の方へ行き
冷蔵庫の中からペットボトルのお茶を、
一人飲んでいる。

……喉が渇くんだね。可哀想に。……

「この、フィルム、直ぐに現像し、
確認します。」
と、林田は誰に言っているかわからないけど
嬉しいそうに言っている。

お茶を飲み終えて裕美さんが僕の横に座った。
僕の心はときめいた。

「修君、せっかく撮ってくれたけど、霊は写っていないかも知れません。」
と、裕美さんは静かに言った。

「・・・」 修は無言であるが、
林田は不満があるのか、
「それは、何故ですか?『修君では霊が撮れない』と言いたいのですか?」
と、聞いてきた。

そのニュアンスに少し怒りの響きがある。
それは修を貶された怒りでは無く
「林田が記事にすることが出来ない」と、
裕美さんに言われ、それを怒っている様に
僕は感じた。

「現像してみないと解りませんが、霊は来てないのは確かです。
ただ、昔から此処に居る霊が映るかも知れません。」

「ちょっと待ってください。
昔から此処に霊がいるのですか?
このビルは訳あり物件ですか?」
と、僕は驚きの声を上げる。

「訳あり物件かどうかは、知らないけど
霊の一人や二人いてもおかしくはないわ。
心配しないでも良いよ。
その霊達は何も悪い事はしないから、大丈夫よ。」
と、裕美さんは励ましてくれた。

「そうですか。それなら良いですけど・・・
でも、裕美さん瞑想している時に何か言ってましたよ。
何か、怒っていませんでしたか?」

と、僕は疑問に思う事を遠慮なく尋ねた。

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