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殺人ロボット(5)

5
二年ぶりの娑婆世界。
懐かしい想いがしたのだが、
以前の石田太郎はどの様に扱われているのか気になった。

私を見て石田太郎と気づく人は居ないはずだ。
調べてみると、失踪届けが出ていて行方不明になっている。
「私が居なくなっても悲しむ人は一人も居ない」
と、思い知らされた時、俺は忠実に任務を遂行すると決意できた。

最初に与えられたミッションは、ある政治家の秘書を殺すことであった。
秘密裏に殺し自殺に見せかける。
私は、Yと二人で任務を遂行する事になる。

殺し方は首吊り自殺。
その経緯は書くことは出来無いが
任務は問題無く成功させた。
警察も全く気がつく事なく「首吊り自殺」と断定した。
私達殺し屋は、組織からの指示で動くのだが、
個人的な恨みで人を殺す事は許されてはいない。
掟を破る事は私の死を意味する。
また、殺しの現場を人に見られてはいけない。
その時は、「その人間を速やかに殺せ」と教えられている。
私に限ってそんなドジは踏まないつもりであるが、覚悟だけはしておかないといけない。

組織は私達に何人もの殺しのにミッションを命じてきた。
私は拒む事は出来ない。
拒めば体に埋めんであるチップが爆発し、
私に死が訪れるからだ。

いつかしら俺は、人を殺す事に何の抵抗も無い罪悪感さえ持たない、
むしろ殺しを楽しむ人間となっていった。


それは、組織に造られた「殺人ロボット」
人間の感情を一切無くした殺し屋。

「俺は生まれ変わったのさ」
と、薄ら笑いを浮かべる自分が鏡に映っていた。

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