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(新々)三つ子の魂百までも10



「初めまして、僕の名前は橋田邦彦と言います」
と、自己紹介しながらお辞儀をする橋田君に、僕は好感を抱いた。

「橋田君、こちらが探偵の飯島さんと、杉田君だ。
この二人は、あの有名な猟奇的殺人事件を解明したお二人で、
杉田君は『日本のポアロ』とも呼ばれている。
この飯島さんに於いては、優れた霊能者だ。」
と、自慢気に林田さんは私達の事を紹介してくれた。

橋田君は憧れの目を僕たちに向ける。
その表情は、屈託も無く可愛い。

「私は、霊を撮るカメラマン。私の撮った写真で事件を解明した」
と、今度は林田の自慢だ。
誇らしげに語る林田さんは、少し大人気無いがこれ位の自慢気話は許される範囲だろう。
特に僕のことを「日本のポアロ」と言ってくれた事は高く評価したい。

「そうですか!そんな凄い人達がいらっしゃってくれたのですね。
と、感動の声を上げる。

「そんな、凄くは無いですよ」
と、僕は謙遜して応えた。
その時、裕美さんが僕の口元を指で指す。
カレーが付いていたみたいだ。

「橋田君、始めまして、私が先ほど紹介された、飯島裕美です。
今回の事件、相当厄介であり、危険な事件と判断しています」
と、裕美さんは、低く声で真剣に語り、
今までの軽い雰囲気を打ち壊し、真剣オーラが重い雰囲気に変えた。

「そうですか。・・・・」
と、橋田君は残念そうに言い
「でも、事件の解明をしたいのです。・・・仇も討ちたい」
と、少し涙ぐんだ声を出す。

「仇を討ちたいって、友達のですか? 相手は霊なのに?」
と、僕は思わず問いただした。

「霊かも知れないけど、友達とお父さんの仇を取りたい」
と、まるで時代劇の台詞である。

「気持ちは解りますが・・・。霊相手では勝ち目が無い。」
と、僕は悲観的に云う。

「あの〜、このカメラで霊の写真を撮ってもらいたいのですが」
と、橋田君が林田さんのカメラに目線を向ける。

「橋田君、霊を撮る為には、相手となる霊も写りたいと思わないと
写真には写らないんだよ。悪霊が『写りたい』とは思ったりしないと思うよ」
と、林田の応えも、これまた悲観的だ。

「だったら、僕どうしたら良いのですか?」
と、残念そうに言うが、少し怒気を含んだ声だ。

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