見出し画像

(新々)三つ子の魂百までも 39


「飯島さん、今回のこの霊との交信の事ですが、成功したと、林田さんから聞いたのですが、今その話をお聞きして、納得しました。
問題は、その霊が人間に本当に悪影響を与えているかと云う事です。
それが証明できますか?
二人の方が亡くなった原因はこの霊の仕業でしょうか?」

「私がこの前、霊と交信して感じたのですが、
殺人犯の霊は、あのビルの壁に縛られている
と、確信しています。
いわゆる、地縛霊です。
地縛霊の恨みは強く、霊感のある人なら感応し
霊の声を聞く事ができると想います。
橋田少年も霊感が強く、霊の声が聞こえても
不思議ではないです。」

「では、あの少年が聞いた声は、実際に起こった事ですか?間違いないですか」

と、念を押しながら聞いてくる桜町。

「声を聴かせるくらいは、あの殺人鬼の霊なら出来るでしょう。
でも、本当に人を殺したかどうかは、
疑問です。呪いで人が殺せるのでしょうか?」

「でも、映画では呪い殺しているよ。
貞子もそうだし」
と、僕は思わず口ずさむ。

「前も言ったけど、貞子や映画はフィックションでしょ。実際にそんな事実があるのかな?
そんな事件の報告がありましたか?
桜町さん、ご存知ないですか?」

質問側の桜町が、裕美さんに質問される。

「霊が殺したかどうか解りませんが、不思議な死に方をした事例は海外や日本でも有ると報告はされています。」

「確かにテレビでやってますね。
不思議な死に方をした人が呪われて殺された!
と、報道してますね」
と、またも口を挟む僕。

「・・・・・」
と、無言の裕美さん。
そして、意を決するかの様に云う

「私、あのビルにもう一度行ってみたいの。
あいつに、人を殺せる力があるのか試したいの。
あいつの正体を暴きたいのよ」
と、強く言ってくる。

「やめて下さい。裕美さん。
そんな死んでしまった者に喧嘩を売ってどうするんですか?
裕美さんだって、『あのビルに入ってはいけない』って言っていたでは無いですか?
本当にやめて下さい。」
と、僕は夢の事を思い出しながら裕美さんに言った。

裕美さんは、何も言わない。
「仮に、裕美さんにもしもの事が無かったとして、
どうなるのですか?。
あの地縛霊が人を殺す能力が無いと判ったとしても、
何ら世間の人は関心を持たないでしょ。
もし、裕美さんが死んだら、あのビルに入ってはいけない事が判るだけです。裕美さんは、死に損です。
全くの犬死です」
僕は懸命に訴えた。

その言葉を聞いていた美乃が応援の声をあげる。

「裕美ちゃん。公ちゃんが裕美さんの事が
好きだって言っているよ。
公ちゃんのお願い聞いてあげてよ」

と、美乃は僕を冷やかしているかの様に言ってはいるが
真剣な想いが伝わってくる。

裕美さんは、何も言わない。
くちびるを噛み締め、悔しそうな目をしてる。

「裕美さん、本当にお願いしますよ。
あんな危険な所に行かないで!」
と、僕は更にお願いした。

林田を見ると、不機嫌そうな目つきだ。
そして言った。

「でも、飯島さんには確信があるんでしょ!
あの霊は人を殺す事が出来ないと。
私は真実を知る為に、危険な所と知りながら、取材に行きましたよ。」

言葉に棘の有る言い方だ。

「だったら、貴方一人で行けばいいじゃ無いですか!」
と、僕は突き放す様に言った。

険悪な雰囲気になっていく。

「考えてみるわ」
と、裕美さんがポツリと云う。

「でも、飯島さんが霊視した事は新たな発見でしたね。
記事に書いて無い事が判ったのだから・・・」
と、桜町は険悪な雰囲気を収めようと穏やかに言った

「でも、まだ真実は解明してはいませんよ。」
と、林田が不満顔だ。

「真実の解明って何だよ!
その霊が人を殺せると証明することか?!」
と、僕は怒りをあらわに、思わず言ってしまう。

「その霊の力が本物かどうかですよ。
本当に二人の命を奪ったのか、どうか判らない。」
と、僕に挑戦的な態度を取る林田。

「その為に、裕美さんに危険なところに行かせるのか?
あんたが一人で行って死ぬかどうか試せばいいだけだろう。
一人で行ったらどうなんだ!」

と、僕の言葉は段々と荒くなっている。

「判ったわ、公ちゃんもう、辞めて。
行かないから。もうやめて」
と、裕美さんは僕の腕をとり云う。

このままだと、林田と喧嘩になると判断したのかも知れない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?